今回紹介する漫画は『ドラゴン桜2』です。
『ドラゴン桜』の続編!
『ドラゴン桜』は三田紀房先生が2003年から2007年まで講談社の『モーニング』で連載され、テレビドラマ化もされた大ヒット漫画だ。
物語は経営破綻寸前の底辺高校を清算しようとした主人公の弁護士・桜木が「このまま破綻させるより、経営を回復させた方が自分の実績になる!」と考え、毎年東大合格者100人が出る進学校にして経営を回復させようと企む。そして「まずは今年東大合格者を1人出す!」という目標の為特別進学クラスを設置し、そのクラスに入った人生を諦めかけていた水野と矢島が東大という1つの目標に対し努力する事で自分の人生を切り開いていくという内容で受験以外でも人生に役立つ教訓が多く描かれていると人気を博した作品だ。そして本作『ドラゴン桜2』はその続編にあたる作品になる。
『ドラゴン桜2』のあらすじ
龍山高校から東大合格者が出てから桜木のお陰で遂に東大合格者10人を突破する事で有名進学校への仲間入りを果たそうていた。しかし桜木が学校を離れてから5年、東大合格者数は右肩下がりになりついに全滅してしまう。偏差値30の底辺校を東大合格者を送り出す事で学校再生をしたという実績から全国の私立高校から経営指導の依頼を数多く受け「学校法人に強い桜木健二事務所」としてブランドを確立していた桜木にとって龍山高校の進学実績がこれ以上落ちたらマズイと感じ、桜木は再び龍山高校へ元教え子の水野と再建を図りに乗り込んでいく…
続編の意義
近年は過去のヒット作品の続編が乱発されており、その類のタイトルを見ると「売れなくなった漫画家が過去の栄光に縋り付いた」と無意識的に思ってしまう人も少なくはないだろう。ただし本作『ドラゴン桜2』は続編を今描くべきシッカリとした理由が存在する。
その最大の理由は「2020年の教育改革」で、大学入試制度が根底からから変わり前作『ドラゴン桜』のアップデート版が必要になった事。更に時代の移り変わりにより起きた価値観の変化によって古くなった部分を更新していくという意味でこの続編が描かれた意義は必ずある。その一方で10年前から変わらない部分を考えるのも面白い。
「2020年の教育改革」は現時点で不透明な部分が多い。しかしこれから少しずつ明らかになっていく情報を連載漫画としてリアルタイムで反映させていく事で今だからこそ楽しめるマンガに仕上がっているように感じる。
前作との相違点
ここからは前作との相違点を解説。
- 廃校寸前の底辺校が進学校に!
前作の舞台は廃校寸前の底辺校だった龍山高校だったが、東大合格者数の実績から生徒のレベルが上がり進学校に生まれ変わっていた。
その為「東大100人」を目標とする桜木の演説も表面上は黙って聴く大人しさを見せ、話が終わるとコソコソと悪口を言い始める。これは前作の桜木が壇上で喋り始めても静かになる事はなく、バスケットボールが飛んでくる環境とは大きく異なる事が分かる。
- 生徒は既に日東駒専合格ライン
東大専科に来た生徒のレベルも上がっている。もちろん前作の矢島は高学歴の家系ではあったが、水野の方は恐らく東大以外の大学はロクに知らないレベルで、当初は大学に進学せずフリーターになる予定だった。
一方で今回の生徒達は大学受験をする事は大前提であり、自身の志望大学や大学のランクなどもある程度把握している状況にありスタートラインが大きく異なる。
※日東駒専とは関東の中堅私立大学の中から偏差値や知名度・学生数などの観点から選ばれたトップ4校である日本大学・東洋大学・駒澤大学・専修大学の頭文字を取った受験用語。偏差値は55前後と全受験生の上位10〜20%のゾーンに属する。
※男子生徒が日大の工学部を志望しているが、後に理工学部に変更された。日大は多くの学部を所有する為偏差値に格差があり、理工学部(偏差値:47.5〜57.5)に対して工学部(偏差値:35.0〜45.0)と日大としては低い。その為学部が修正されたと考えられる。
※偏差値は過去の入試結果に基づく河合塾のデータです。
- 授業は「スタディサプリ」を採用
前作では東大への合格者を多数輩出した経験を持つ有名講師を龍山高校に呼び、ライブ授業を展開した。
しかし本作ではテレビのCMで「TOEIC最重要単語のavailable」というフレーズでお馴染みのリクルートが運営する「スタディサプリ」という月額980円でスマホで有名講師の授業が見放題のシステムを採用する。
また「スタディサプリ」の採用の意図には現代社会でITが一般化する中で、時代の変化に適応していく考え方が大切だという大学受験だけに終わらない人生の生き方を前作同様提示している。
- 勉強習慣があるから「頑張る」を禁止
個人的にイマイチ納得出来ないのは桜木が生徒達に「頑張る」という言葉を使う事を禁止した事。前作では敢えて「頑張る」という口に出す事で大学受験へのモチベーションを高めていった。その為前作の教え子である水野もこの意見には反対する。
しかし桜木は前作の勉強を全くして来なかった生徒とは違い、進学校である程度勉強して来た生徒は学習習慣がある為無意味に勉強量だけを求めて頑張り過ぎてしまう懸念があると解説し、「目的に対して手段を講じる」という正しい頑張り方を教える為に「頑張る」という言葉を禁止したという。その為前作のような勉強合宿を行い短期間で詰め込むような事もしないという教育方針を提示するが、個人的にはコレは少し物足りない。ただ舞台が進学校に変わった事とパワハラ問題や働き方改革などが進行する今の世の中では前作のやり方は時代錯誤の部分が現れ始めたのかもしれない。
ただやはりこの問題は「〇〇する為に〇〇して頑張る」みたいに正しい頑張り方を教えて実践させればいいのではと感じずにはいられない。特に前作の「頑張る」を口に出す事に感銘を受けた身としては… どうにも印象の強い展開を求める余り極端な方向へ走ってしまっているように感じた相違点でした。
- SNSを使って英語を勉強
少し批判めいた文章になってしまったが、「スタディサプリ」同様にITの進化を受験勉強に取り入れる方向は気に入っている。そのもう1つの例が英語の勉強法だ。
前作では「The Beatles」の音楽を使って勉強をしていたが、本作ではSNSの発展を生かしTwitterとYouTubeを使い誰でも気軽に実践できる英語の勉強法を提示している。またこの方法は受験生に限らず英語を勉強したい大学生や社会人にも適した方法であり多くの人が真剣に実践すれば日本人の英語能力も飛躍的に進歩するのではないかと感じる。ただ殆どの人はやらないし、やり始めても直ぐに飽きてやめてしまうんだろうけどな… 前作で「要は、やる人間はやるが、やらない人間はやらない・・・ということです」というセリフがあったが、コレが真理なのだろう。
- 背任行為を繰り返す理事長代行の真意
前作でも桜木の教育方針に異議を唱える先生は存在したが、飽くまでも「龍山高校を良くしたい」という前提は共有していた。しかし本作で龍山高校の理事長代行の立場の女性キャラクターは東大専科を無くしたりするなど龍山高校への背任行為が目立つ。そしてソレは彼女が頭が悪いからではなく、頭がキレる人間の意図的な行為だと見て取れる。果たして彼女の真の狙いは?
- 桜木の敵対心に燃える学年トップ
本作では更に生徒からも桜木に敵対心を燃やすキャラクターが登場する。果たして彼は今後どのような受験生活を送り、どのような受験結果が待っているのか?そして何故桜木に対して敵対心を持つのかなど今後の展開に注目だ。
- 「いつやるの?今でしょ!」
「いつやるの?今でしょ!」のCMでお馴染みの林修先生も登場!いつ読むの?今でしょ!
最後に…
受験生や受験を控えている高校生で本作を買おうか悩んでいる人は「そんな風にグダグタ悩んでいるからお前はダメなんだよ!今この瞬間が人生のターニングポイントだ。コレで買わなきゃただのバカだ。自分から行動が起こさない奴が人の後ろに隠れて人生ヌクヌク生きていけると思ったら大間違いだからな!」と桜木なら言うでしょう。こう並べると凄いブラック上司感が半端ないですね。ただ本作は感情論ではなくシッカリとロジックのある漫画なのでブラックとはまた違います。(ブラックな経営者が言いそうな言葉)前作を読んでない人は勿論前作もオススメですが、本作から読んでも全然楽しめると思うので「前作を読んでないから…」と躊躇ってる人にもオススメです!
※下リンクの講談社の公式ホームページから本作の1巻が試し読み出来ます!興味のある人は是非!