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『ONE CUT OF THE DEAD』の感想

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[注意]『カメラを止めるな!』のネタバレ有り

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゾンビ・チャンネル」という最近出来た有料チャンネルで生放送していたドラマ『ONE CUT OF THE DEAD』を見たら完全に放送事故だったので感想を書きます。

 

何故興味を持ったのか?

ゾンビ 米国劇場公開版(字幕版)

何故自分が「ゾンビ・チャンネル」なんていう今にも潰れそうなチャンネルの番組を見たかというと、1日暇だったのでネットニュースを眺めていると自分は余り知らない役者だったのですが事故に巻き込まれて撮影に行けなくなったみたいなニュースを読んだんですよ。で、その番組は生放送でドラマをやる企画だったみたいで彼が来れないとなると放送は中止するのかなと思ったら予定通り放送するらしくて… 一体どんな放送になるのか興味が少し出てきたんですね。

しかもこの役者が不幸なのは「事故に遭う」「生放送のドラマに出られない」だけでも十分不幸なのに、一緒にいたカメラマンとの熱愛もバレて三重苦の状況で流石に自分も同情しましてね… こんなの成田凌戸田恵梨香がドライブデートしてら時に衝突事故起こして不運だと思ったら、相手は『Friday』だった時並みですよ。知名度は格段に違いますが… まぁ、とにかく偶々見かけたネットニュースで本作の存在を知って興味を持ったという流れです。

 

 

本作の概要

三谷幸喜「大空港2013」

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(字幕版)

本作の概要について一応説明しておくと、ゾンビをテーマにしたドラマを37分間ワンカット長回しの生放送するドラマです。生放送でドラマといえば過去にSMAPが『古畑任三郎vsSMAP』の続編をやった時にも確かやってて試みとしては面白いなと思ったし(しかも確かほぼワンカットだった記憶)、同じく三谷幸喜WOWOWで『大空港2013』というドラマやった時は本当に空港を貸し切ってワンカットで撮影してて純粋に面白かったし、『バードマン』という映画でもCG技術を駆使してワンカット風の映像を作ってて面白かったので今回の「割と長い時間本当にワンカットで生放送でドラマをする」という企画は純粋に興味が出て「暇つぶしになればいいなー」くらいの感覚で鑑賞しました。

 

 

完全な放送事故に…

暇つぶしくらいの感覚で見始めたドラマでしたが、途中からは悪い意味で目が離せなくなって… 内容はゾンビ映画を撮っていたらほんとうにゾンビが襲ってきて、その映画の監督は撮影を続けようと狂気に駆られているみたいな内容で悪くなかったし、8ミリビデオで撮った風の映像も嫌いではなかったのですが… 個人的にキツかったポイントやツッコミどころをまとめてきます。

 

  • おばさんの護身術シーンがキツい!

最初にゾンビが登場するまでのおばさんキャラクターの護身術講座みたいのが結構見ててノリがキツくて… 「ポン!」と大きな声を出して相手から離れるみたいな「ポン!」の言い方の「面白いでしょ?」みたいな向こう側のドヤ顔が透けて見える感じが個人的には受け付けなくて…しかも後にその護身術を使ってゾンビが逃れるシーンがあるんですが、そこで「ポン!」とドヤ顔で護身術を使っているであろうシーンにカメラが追いついてない…もう少しカメラマンとの打ち合わせが合った方が良かったように思いました。

 

  • 緊迫したシーンで座ってるだけの録音役 

最初に登場人物の前にゾンビが登場して襲いかかられて戦う緊迫したシーンがあるんですが、そこで録音役の人がズッーと殆ど微動打にせず椅子に座っているんですよ。緊迫したシーンでこういう間抜けなショットが映り込むのは個人的に凄くマイナスポイントで「演出が行き届いてないな…」と感じずにはいられませんでした。「どうした?お腹痛いのか?」と心配になってしまうレベルですよ。そしたらその後騒ぎ出してどっか行っちゃうし… 個人的には「本当にトイレに行きたくて騒ぎ始めたんじゃないの?」なんて勝手に妄想して笑っちゃいました。

 

  • レンズに付いた血を吐くタオルが映る…

これは完全にスタッフサイドのミスなんですが、本作ではゾンビを殺した時に『300』風にカメラのレンズに血が付くシーンがあるんですね。個人的にその演出自体は嫌いじゃないし、CGじゃなくて血糊を使ってやってるのも好感度が高いんですよ。ただカメラの移動中にその血を拭き取るシーンが映り込んでしまって… これはスタッフサイドのミスとしか考えられなくて、一気にドラマの世界から現実の世界に戻されてガッカリでしたね。先日のビートたけしの報道番組でスマホで中継していたら受け取り先のスマホのLINEの着信が生放送で流れてしまった並みにアホらしい映像でした。

 

  • カメラが地面に落ちる…

更にカメラマンさんに苦言を呈すと女優とぶつかった時にカメラを落としてしまった様に感じるんですよ。もちろんコレは演出なのかもしれませんが、落ちた後もしばらく地面に置きっ放しで拾う気配がなく少しの間背景しか映ってない時間があって気になりました。またカメラが再び動き出すと急に短いスパンでズームしたりし始めて「壊れてないのか確認してるのかな?」なんてスタッフ側の心配のハラハラでドラマに集中出来ませんでした…

 

  • イケメン男優の叫び…

本作にはイケメン男優が出ていて自分は知らない人だったのですが、若い女の子の間ではかなり人気の俳優らしいんですね。それで、その人は確かにカッコいいし、演技も上手いんですよ。ただ上にも書いた護身術おばさんに手を掴まれた時に「痛い痛い痛い!折れる折れる!カメラ止めて!」と叫んじゃうんですね。で、このシーンで凄くガチっぽくて「本当に痛すぎてウッカリ本音で話して助けを求めちゃったのかな?」と自分の中の勘繰りが始まってしまいました。

 

  • 女の悲鳴が長い…

本作に出てる女優は、どうやら結構人気のアイドルらしいんですね。で、アイドルと言えば事務所のコネでドラマとかに出るけど「演技は下手」というパブリックイメージがあるじゃないですか。もちろん彼女も一部棒読みみたいな所はあったりしたんですが、恐怖する様子は泣き叫ぶ様子はリアルでこの手のジャンルはやはりゾンビそのものの怖さより怖がる役者の技術が大切だと改めて実感しました。

ただ後半の叫ぶシーンでやたら彼女の顔をズームイン、ズームアウトばかりするシーンがあって、彼女もズッーと叫んでるんですよ。いくら叫ぶのが上手いからといってあんなに長い時間叫ばされたら演技っぽさも出ちゃうし、緊迫感も著しく削がれてしまうので勿体無いなと感じました。

 

  • 何の意味のないゾンビの足

彼女が1人になるシーンで、彼女の目の前にゾンビが来るシーンがあるんですね。そのシーンも彼女の恐怖演技は素晴らしくてコッチもかなり身構えたんですよ。ただそのゾンビは何の意味もなくて、その後一向に出てこなかったんですね。アレは何なんですかね?脚本にはあったけど、生放送の時間に収まらないからカットしたという事なんですかね?意味不明でした。

 

  • 2本ある斧…

本作はゾンビ映画を撮影する為に監督のこだわりで本物の斧が用意されていたという設定だったんですね。その設定自体は本物のゾンビが現れた時に立ち向かう武器として使う事が出来る為いい設定だと思うんですが、パニックになって正気を失った護身術おばさんを殺す時に斧が頭に刺さって使えなくなってしまいます。

ココから本作がスマートでは無いのは何故かその後に物凄く不自然な感じで斧がもう1本出て来るんですね。しかもその時の女優の棒読みと説明ゼリフなのも萎えて… 脚本にも難があるように感じました。

 

  • 死んだのに立ち上がる護身術おばさん…

その後屋上で生き残った2人が対面するシーンがあるんですが、この2人はカップルなんですね。つまり女の方は感染した男を殺さないといけない切ないシーンになるんですよ。ただ何故かこのシーンで死んだはずの護身術おばさんが斧を頭に刺したまま立ち上がって画面に映り込んでしまったんですね。流石にこのシーンばかりは言い逃れ出来ないレベルの放送事故シーンに感じましたね。

 

  • 陳腐な演出からの女の切り替えの早さ

ラスト感染した男に向かって女が「お願い目を覚まして!」というと男の動きが一時的に止まる陳腐な演出がなされるんですね。しかもそれを何回か繰り返して凄くダサい…

しかも長い時間溜めた割には女は「愛してる…」といって割とアッサリ男の首を切り落としちゃうんですね。多分生放送の時間の関係からスタッフから「回して、回して」の合図があったと思うんですが、雑な展開すぎて女のキャラが情緒不安定にしか見えません。それとも本当に精神的におかしい子なのかな?

 

  • カメラがグラグラ揺れるラスト

ラストシーンはカメラがグラグラ揺れてて低予算感が伝わってきて悲しくなりましたよ… 「棒にカメラくっ付けて撮影してるのかよ!」とツッコミたくなりましたね。ラストくらいシッカリしろよ!

 

(C)『ONE CUT OF THE DEAD』/ゾンビ・チャンネル

 

 

最後に…

先日の『Mステ』の10時間スペシャルの時渋谷のデパートの中をきゃりーがワンカットで回りながら踊るという演出があったんですな、その時だけ「LIVE」の文字が消えてたんですね。多分あのシーンは撮影が難しいシーンだから生放送ではなく収録にしたんだと思うんですよ。テレビ朝日の技術を駆使しても難しい事を最近出来たばかりの有料チャンネルがトライしたという心意気は買いたいですし、出演者のトラブルもあったので同情の余地もあります有料でこのクオリティを放送するのはやはり問題があるように思いますしハッキリ言って失敗作だったように思います。SNSの反応を見ても役者やアイドルの写真をアイコンに使うファンっぽい子が残念そうなツイートをしてて何故か無関係の自分が「期待を裏切ってゴメンね」と心が痛みましたよ…

正直このチャンネルが生き残る気はしないのですが、もし将来人気チャンネルになったら「初期の頃はこんな失敗も…」もみたいなヤンキーから更生武勇伝みたいな形で紹介される事もあるかもしれませんが、恐らく黒歴史として今後放送される事はまず間違いなく有り得ないと思います。なので、もしこの放送を録画してる人はBlu-rayに保存しておくといいと思います。将来あの若手の男優やアイドルの黒歴史映像として値打ちが出るかもしれません。放送事故過ぎるのである意味ではオススメです!多分もう見る機会は無いと思いますけど!