スポンサーリンク

【原作との変更点は…】スケール感溢れる映像が堪能出来る山崎賢人主演・佐藤信介監督の実写映画『キングダム』ネタバレ感想

キングダム(映画)

今回は佐藤信介監督が人気コミックを実写映画化した『キングダム』の感想。

 

まぁ、基本的な感想は事前にTwitterでツイートしていて他にも「本郷奏多本郷奏多なのに山崎賢人だけアレな感じがするのは何故なんだ!?」とか「切り替えシーンが『スター・ウォーズ』みたいな編集になってるけど意識してるのかな?」「同じアジア人だと日本人が外国人を演じても殆ど叩かれないな」みたいな事をツイートした。

 

最初に自分の『キングダム』への思い入れを書くと全く無い。何故ならば絵のタッチが苦手これまでは敬遠していたからだ。ただ今回の実写映画版公開を機に読んでいみると、想像以上に面白く「やっぱり読まず嫌いは良くないな…」と反省した。このエントリーは取り敢えず実写化された5巻の途中までを読んだ状況で書いている。

 

 

純粋に1本の映画としては…

まず純粋に「1本の映画としてどうだったのか?」という視点の感想だ。

 

  • 冒頭から中国ロケフル活用の説得力のある画

本作のメガホンを取ったのは上述した通り佐藤信介監督。『GANTZ』『アイアムアヒーロー』など数々の人気コミックの実写映画化をヒットさせてきた監督で、昨年も『いぬやしき』と『BLEACH』の2作品を公開しているヒットメーカーだ。佐藤監督作品は今まで叩かれがちな人気コミックの実写映画作品の中では常に一定の評価を納めてきたイメージのある監督だ。そしてその監督作品か共通項はどの作品も基本的に現在日本を舞台にしているという点だ。

一方で本作の舞台は現在日本ではなく春秋戦国時代だ。今までの現在日本が舞台の作品と違って本作では映画開始1秒から「この映画は春秋戦国時代が舞台なんだ」と観客を信じさせる画を作らなくてはならず、冒頭から「この映画なんかショボいな…」と思われたらその時点で失敗作の烙印を押されてしまう。

その点本作は冒頭に大平原の騎馬隊の大迫力のシーンを持ってくる事で世界観を観客に信じさせる事に成功している。更にこのシーンは中国ロケをフル活用しているのもポイントだ。本作のパンフレットによると日本の撮影では馬を10頭程度しか用意が出来ないらしい。一方で本作は中国ロケをした事で本物の馬を100頭用意する事が出来て、この大迫力のシーンを撮影出来たという。このシーンは予告編やCMでも使われているが、この画を観て「もしかしたらイケるかも…」と思った人も多いはずだ。この冒頭のシーンからも本作が如何に本気で作っているかという製作側の熱意が伝わってくる気がする。

 

  • スケール感のある美術の数々

本作の製作費はプロデューサーのインタビューによると10億円以上が費やされており、日本映画の中ではトップクラスの水準に達している。それだけお金をかけた事もあり、VFXで表現された画にもスケール感に溢れていてショボさを殆ど感じさせない。

これは衣装やセットにも同じ事がいえ、日本映画にありがちな「コスプレ感溢れる衣装」にも「外面のCGの頑張りとは比較にならない程ショボい美術」みたいなパターンにも陥っていない。とにかく製作側の頑張りが伝わってくる要素の多い作品だ。

 

  • アクションシーンは…

一方で本作で評価する意見を多く見るアクションシーンは個人的にイマイチな部分も多かった。アクションシーンに関しては原作漫画との比較をする際にも触れる為、ここでは少し割愛するが見せ方が全体像を捉えきれておらず「もう少し引いた画で見せてくれればな…」とか「もう少し長回しで見せてくれたらな…」みたいなシーンも多かった。『るろうに剣心』や『銀魂2』はアクションが見やすかったけど、本作は「アクションが見難いな…」と思ってしまったのが個人的な感想である。

また中盤の馬のアクションシーンはCGで合成した事が丸わかりでかなりショボかった。しかもこの合成方法が『翔んで埼玉』で二階堂ふみGACKTが東京から脱出する際にギャグとしてワザとショボいCGを使って笑いを誘う演出と全く同じだったのも「なんだかな…」と思ってしまったポイントだ。

www.youtube.com

 一方でCMでもやってる長澤まさみのアクションシーンは彼女になら殺されてもいいと勘違いしちゃうレベルでカッコ良かった。

 

1本の映画として観ると日本映画の限られた製作費の中で頑張っている事は伝わってきて応援したい。ただアクションシーンはスケール感がある一方で、物足りなさも感じてしまった。

 

 

※以下軽いネタバレあり

 

原作漫画と比較して…

次は原作漫画と比較しての感想。

 

  • 信と王騎のオリジナル設定

本作の脚本製作には原作者が積極的に加わる事でブラッシュアップを重ねたというが、一番肝となったのは王騎のシーンを「全カット」するか「主要な話と絡ませる」の二択だったという。結果として王騎をカットする訳にはいかないので後者を選び、原作にはないオリジナルの信が王騎を見て憧れるという冒頭シーンを撮影したが正直迫力のある冒頭シーンが撮れたという以外のストーリー的な意味があったのかは不明だ。

 

  • グロシーンが大幅にカット

大作実写邦画は多くの客を入れたい為に、レーティングに引っかからないような演出をする。本作もその例外ではなく個人的には原作の持ち味とも感じる大仰なまでのグロシーンは殆どカットされてマイルドな仕上がりとなっている。これは昨年の『いぬやしき』の時も感じたが、テレビ局が製作につくと地上波放送を前提に製作する為演出に限界があるのだろう。一方で同じ日本テレビ製作でも山崎貴監督の『寄生獣』のようにレーティングの限界まで戦ったケースもあるので見習って欲しいと感じたのが正直なところだ。

 

  • ムタとの戦いの意味

ムタと戦いは原作も映画と信がビビるのをやめて前に出る事で相手を倒す事に成功するという部分は同じだけど、原作では信は実戦経験がないから相手の殺意を跳ね返す精神力がなかったからこの戦いで身についたという部分まで描いてるけど映画ではそこまでは描いていない。そこまで描くと尺の都合や説明台詞が多くなるから避けたのかもしれないけど、重要な部分だと思うからシッカリと描いて欲しかった。

 

  • 昌文君の謝罪

原作では昌文君が信に漂を替え玉に使った挙句死なせてしまった事を謝罪してるが映画ではしてない。原作と展開が異なってるので原作と同じタイミングでの謝罪は出来ないが、戦いの直前とか謝罪シーンを入れる事は出来たはずだ。何だかんだ信と昌文君には蟠りがあるままなのではないかとか余計な心配をしてしまうからこのシーンは入れて欲しかった。

 

  • 楊端和の願いも…

原作の楊端和は「世界を広げたい」という願いを持っているエピソードがあるから主人公たちの味方になったという理由があるが、映画だとそのエピソードがなく何だか主人公が面白い奴だから味方になったくらいの話になってる。いや、長澤まさみの迫力で全然いいんだけどさ… 

 

  • 山の民が野蛮で強いという設定が…

山の民の過去のエピソードについては大幅カット。ここら辺は上映時間の関係上やむなしという感じだ。一方で「山の民が強い」という部分はもう少し事前に演出があっても良かったのではないかとも思う。何だか「よく分からないけど山の民は生きてました」感が半端なかったよ。

 

  • 成蟜の過去エピソードもカット

本作では成蟜から王座を取り戻す事を映画の軸としてるけど、彼の血統による差別主義がより強固になった過去のエピソードもカットされている。この過去エピソードは悪役の人間性にも深みをもたらす効果があったからカットはしない方が良かったような…

 

  • 穆公のエピソードもカット

穆公のエピソードもカットしてるから山の民や王騎の過去も薄味に…

 

  • 夢を映画の軸に…

本作は夢を軸に置く事で映画用の脚本を製作している。その為ランカイと左慈の登場場面が入れ替わり、左慈には元将軍という設定が追加されている。一応ラストは映画オリジナルの修行シーンを生かした勝ち方をしたのは良かったけど、全体的にどうして信が勝ったかがイマイチ分かり難い…ただ原作と同じにすると説明セリフばかりでテンポが悪いし、色々難しいなと感じた。

 

原作漫画と比較すると実写映画版では描かれていない部分も多い。一方で上映時間という制約を考えれば原作序盤の「王都奪還編」を「信たちのロードムービー」として上手くまとめていたのではないかとも思う。

 

(C)原泰久集英社 

(C)2019映画「キングダム」製作委員会

 

 

最後に…

個人的には昨年グダグダ文句ばかり書いた『BLEACH』の方がアクションも良かったし、上がるシーンも多かった。ただ東宝曰く本作は興行収入40億円を狙うヒットスタートみたいだし、続編も作られる事が予見される。折角お金をかけた大作実写邦画が久々にヒットしたのだから、是非1作目を超える続編を作って楽しませて欲しい。

 

 

mjwr9620.hatenablog.jp

mjwr9620.hatenablog.jp

mjwr9620.hatenablog.jp