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前作から大幅にパワーアップした『銀魂2 掟は破るためにこそある』/原作からの改変ポイントの功罪

銀魂 2 掟は破るためにこそある

今回は銀魂2 掟は破るためにこそあるの感想です。

 

観る前の期待度

銀魂

昨年の夏に公開され興行収入38.4億円を記録し昨年度実写邦画No. 1ヒットを記録した前作の続編ですが、個人的な期待度は低めでした。理由として前作は『銀魂』の原作が好きな人間として、『勇者ヨシヒコ』の福田雄一監督が手掛けるならかなり面白い作品が出来るのではないかと期待して鑑賞したら後述する理由から全然楽しめずかなりキツイ作品に感じてしまったんですね。

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<出典:「週刊少年ジャンプ」/集英社>

その上『週刊少年ジャンプ』のコメント欄で空知英秋先生がdTVのドラマに触れて「あの尺、あの適当さが一番銀魂に合う」とコメントしていて「第1作目の時も極力内容に触れず「佐藤二朗を見てください」とか「福田監督の銀魂として楽しんでください」みたいな表現が多かったから「思う所もあるのかな?」と邪推し始めて更に期待度は下がっていってしまったんですよ。ただ折角の祭りだし2作目が面白くなる可能性もあるし「ダメならダメでこのブログのネタにもなるし良いかな」と開き直った気持ちで観に行きました。

 

 

観た後のネタバレ感想

自分で驚いているんですがとても面白かったです。前作とは見違えるクオリティでビックリしました。

 

  • 前作の欠点を大幅にカバーした続編

映画評論家や映画ファンの中には『銀魂』を映画として認められないという人もいるらしいですが、自分は世代的に『踊る大捜査線』のようなテレビドラマの劇場版が当たり前の世代なので多くの人が言う「映画としてどうか?」みたいなのは結構どうでも良いんですよ。

ただ『銀魂』を福田監督が語るように「笑って泣いてアツくなる」映画として成立させるには、小栗旬さんが『変態仮面』に脚本協力として参加した時に福田監督に説いたように「フザけるシーンは思いっきりフザけるけど、カッコいいシーンは心底カッコいい映画」にしなくてはいけないと思ったんですね。

しかし前作『銀魂』のアクションシーンは全然カッコよくなかった。例えばクライマックスの紅桜と戦うシーンは人の顔のアップのシーンをスロモーションで撮りながらカットを細かく割って戦闘の解説をナレーションで付けるという『ボラギノール』のCMみたいなコントのようなシーンになってしまっていた。その上意図的にショボくしたCGやセット感溢れる美術を真上から撮ったりするから凄くダサくて間抜けな画面になっていた。100歩譲ってギャグのシーンならセットっぽさとかCGっぽさが全面に出てもアリなのかもしれませんが、シリアスなシーンでコレだとやっぱり熱くなるどころか冷めてしまう。なので個人としては世評とは裏腹に実写版『銀魂』は失敗作とまでは思わないが上手くいってないなと思ってたんです。

ただ今回の実写版第2弾は前作で自分が欠点だと考えてた部分を殆どカバーしてきたんですね。例えばCGのクオリティは前作のワザとアニメを意識したと福田監督が語るショボいクオリティからリアル路線に変更してクオリティがアップしているんですね。だからクライマックスの銀時が戦う『トゥモローランド』と『スター・トレック BEYOND』の都市を参考にした様な江戸城の裏の天人の住む都市という舞台設定がショボさを感じさせなくて良かったです。やっぱりクライマックスのバトルシーンの舞台設定は物凄く重要ですしね。またCGの面で言えば本作ではCGっぽさ全開だった定春や『勇者ヨシヒコ』路線の被り物感溢れる天人達も全くと言っていいほど登場してなくて、もしかしたら意図的にショボく見える物は今回は省いて大作路線に走ったのではないのかなと推測しています。電車から三浦春馬が落ちそうになるシーンは真上から撮ってたので少しセット感は出てしまってましたが、気になったのはそれくらいでした。

 

  • アクションシーンもパワーアップ!

前述した通り前作のアクションシーンのクライマックスの使い方は本当に最悪だったと思います。しかし本作のスローモーションを使うシーンは全体像を捉える画角でカットを割らず長回しでアクションを見やすくするという(本来なら普通の)効果的な使われ方をしていました。万斉が弦を放つキャラだったのもスロモーションを活かせるポイントだった様に思います。また前作の様に説明的にならず音楽で場面を盛り上げていって映像でアクションを見せているのも良かったですね。

またソードアクションも前作は全然が力入ってない感じで『るろうに剣心』には程遠かったんですが、今回はその点も改善されアクションシーン単体で取り出しても十分楽しめるくらいには迫力がありました。電車の中や江戸城内部など狭い場所を生かしたアクションの作り方も上手く、特に後者は万斉の弦の設定が生かせる舞台設定だったなと感じました。ただ折角生身の役者が殺陣を頑張っているので光のエフェクトとか派手に吹っ飛び過ぎるシーンとかはもう少し抑えて欲しかったです。そういうシーンにコントっぽさは要らないです。

ソードアクションとの対比になるように広い場所でのCGだけに頼らないマッドマックス 怒りのデス・ロード』を意識したような(製作人は否定)カーアクションもあってその点も前作からパワーアップしたなと感じた点でした。中盤の土方を乗せてパトカーを暴走させるシーンも原作の勢いそのままで好感度アップです。

 

  • ギャグは原作で鉄板の将軍ネタを再現

本作はギャグシーンも大幅にパワーアップしたように感じます。というのも前作は『紅桜編』というシリアスな長編に福田監督のオリジナルのギャグを挟み込んでいくというスタイルでしたが、そのせいでテンポが悪くなっていました。またそのテンポを悪くするギャグは福田監督のイズムが炸裂していて、『勇者ヨシヒコ』の時には殆ど感じなかった福田監督が羽生結弦選手に感じたような恥ずかしさみたいのを感じちゃったんですね。さらに個人的な事も付け足すと上述したダサいアクションシーンも加わって段々自分の好きな『銀魂』が福田監督に汚されていくような好きな女の子を獲られた様な複雑な気持ちになってしまったんですね。

その点本作は原作の真選組動乱篇』というシリアスな長編に原作の鉄板ネタ『将軍接待篇』をハイブリッドさせた形で福田監督のオリジナルのギャグはスパイス程度に抑えられていてとても楽しめました。特に福田監督がパンフレットの中で「キャバクラのシーンは自分流にアレンジする余地がなかった」みたいな事を言ってたんですが、あの勢いのあるギャグの流れに佐藤二朗のオリジナルキャラが加勢してきてテンポを壊さなくて本当に良かったと思いました。

また床屋の方も将軍の顔が引き攣るシーンは前作の様な下手なCGを使っての再現ではなく高クオリティな上に引っ張ると目から涙が出てくる人形を使って『めちゃイケ』や『スマスマ』みたいなコントのノリで勢い任せの大胆な手法で演出してそのシュールさも含めて笑いに昇華させたのは、やはり福田監督が長年バラエティのコント演出で培った実力を発揮した爆笑シーンだと思いました。ただ2つのエピソードともオチがカットされていて投げっ放しみたいな形になってしまったのは少し残念でした。ただそれをやると更に上映時間が増えてしまうし映画としてのバランスを保つ脚本を書くのが難しかったのかもしれないですけど…

 

  • キャラクターの演技も前作より自然に!

役者陣の話をすると前作は役者達が先行して放送されていたアニメ版に引っ張られてたのかもしれないんですけど演技が凄くワザと臭くて不自然だったのに対して、本作では自分なりの演じ方見つけたのか演技らしさみたいのが薄れて自然に演じれてるように感じたのも高評価のポイントになりました。冒頭の神楽の演技はまだ少し不自然な気もしましたけどね。

 

 

福田雄一監督のオリジナルの小ネタは別エントリーでまとめてるのでそっちを読んで欲しいと思うんですが、本作では前作の様な作品のテンポを壊す様なギャグはなく原作の持ち味と上手く化学反応を起こしている様に思いました。前作のギャグも単体のコントとしては面白かったのですが、前述した通りシリアスパートとの食い合わせは悪かったので今回は上手くいってるようで良かったです。

 

[注意]ここから下やや苦言多め&原作のネタバレ

 

 

  •  原作改変によるデメリット

原作では土方がオタク化する理由は妖刀の呪いになっているんですが、実写映画ではチップを打ち込まれたという設定に改変されています。この改変は恐らく前作も紅桜という妖刀の設定だったので被らないようにしたというのが理由だと思うんですがこの改変の結果土方がオタク化を断ち切ろうと刀を抜くシーンが、原作では妖刀の呪いのせいで抜けない訳ですが実写映画だと土方の精神的な問題で抜けないに変わってしまっているんですね。また原作では土方の呪いは暫くは解けないので真選組を謹慎するんですが、実写版では呪いは解けたけど謹慎するという説得力の弱いシーンになってしまっています。

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※ヘリコプターを精神論で投げ飛ばす実写版の銀さん

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※原作では銀さんがヘリを投げ飛ばせたロジックがある

ただこの位なら実写映画の改変としては許容範囲なんですが万斉と銀時のバトルが江戸城に変更したのはデメリットが生じてしまっている様に感じました。まず原作ではヘリコプターは1機しか登場せず銀さんと万斉のバトルは真選組のいる場所の近くで戦っていて銀さんと真選組を追い込んでいるヘリは同じヘリという設定でした。その為最後は銀さんが万斉をヘリごと投げ倒す事で真選組は窮地を脱するという展開になっていて銀さんサイドと真選組サイドのドラマが上手く繋がっているんですが、実写映画だとヘリが2機飛んでいて鈍重になっています。その上真選組サイドのヘリは「真選組の肩を持つわけではないが今回は加勢する」みたいな意味不明な理由で攘夷志士の桂が真選組の為に空飛ぶエリザベスに乗ってヘリを壊すという御都合主義全開の展開に改編されているんですね。コレは恐らく桂演じる岡田将生に見せ場を作りたかったという想いもあったのかもしれませんが、脚本の都合上キャラが駒のように動かされているような無理矢理な展開に感じました。

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※銀さんを身動きが取れないように縛り付けている実写版の万斉

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※原作で身動きが取れなくなるのは銀さんではなく万斉

また銀さんが江戸城でヘリを落とす場面も原作ではヘリの上で戦って銀さんが万斉に追い詰められてヘリから落ちたと思ったら、実は銀さんはアクションをしながら万斉を弦でヘリに縛り付けていたので銀さんはヘリごと万斉を投げ倒す事が出来たというシッカリとしたロジックあったにも関わらず、実写映画ではヘリの上から弦で身動きを封じられた銀さんが精神論でヘリを落とすというロジックのないシーンに改変されているんです。それでいって福田監督はパンフレットの中で「松平が将軍を外に連れ出す事に対して理由付けが欲しかった」みたいな事を言ってるんですが、その理由付けの改変のせいで原作ではあった理由付けがいい加減になってしまうのは如何なモノなのかなとは感じました。銀さんが江戸城に戻る為に出てくる『となりのトトロ』のネコバスをオマージュしたアライグマが出てくる所や江戸城裏の都市のビジュアルなどは凄く好きなんですけどね!ところで銀さんは江戸城の戦いが終わった後どうやってあそこまで移動したの?またネコバス?

 

  • 上映時間が長い問題

本作に関しては主演の小栗旬含め多くの人が「上映時間が長すぎる」みたいな苦言を呈しているようですが、長くなっている原因の1つはやはり将軍暗殺の件を追加した事江戸城内部と列車内部の2つの似たような狭い所でのアクションシーンが立て続けに展開されたりする事や前述した通りヘリコプターが2機になった事での鈍重感などが考えられると思います。他にも原作のエピソードには登場してないけど、岡田将生を出演させたいが為に作った桂のシーンとかね。

ただこの映画を2時間にまとめるとするならばカット出来るのは、正直今回オリジナルかつ福田監督色の最も強い佐藤二朗のシーンだと思うんですね。ただ佐藤二朗が出演するシーンはやっぱり福田監督映画のお約束みたいなところもありますし、あのシーンがあったからこそ劇場の空気が温まって後々のギャグが笑いやすくなった効果はあったと思うので難しい問題だとも思います。小栗旬佐藤二朗のアドリブに耐えきれず笑っちゃってるシーンも良かったしね。また佐藤二朗さんって現場のメイキングを見るとムードメーカーにもなって現場の指揮を高める存在にも感じて福田組には必要な存在なのかなとも感じました。

今回の上映時間は134分とコメディ映画としては確かに長すぎるとも思うし、後半ダレてきて「まだ戦ってるのか…」みたいに感じたシーンもあったんですが多くの人にとって本作は年に1回や2回映画館で観るお祭り映画だと思うんですね。だから多少長くてもボリューム感があった方が嬉しいのかなとも思いました。

 

苦言多めで終わるのは嫌なので、本作で最高だったシーンを挙げて締めます。長澤まさみカワイ過ぎ!特にキャバクラでウィンクする所はメロメロに!今回は前半だけの登場だったので、3作目があるならもっとコメディに徹した姿を観たいです。

 

(C)空知英秋集英社

(C)2018映画「銀魂2」製作委員会

 

 

最後に…

ウェットになり過ぎみたいな感想もよく聞きますが、隣に座ってた小栗旬の「チンコが目立ち過ぎ」の場面で一番笑ってた金髪の女の子がメッチャ泣いてたので「まぁ、いいのかな」という気持ちに今はなっています。後に見返した時は分かりませんが…

もし3作目があるなら殆どの人に「流石にやり過ぎ…」と引かれるくらいギャグをエスカレートさせてみて欲しいです。オススメです!