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2020年度春休み映画興行レポート/新型コロナウイルス感染拡大の影響で「話題作公開延期」「10億円突破作品なし」

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例年3月の第1週からは『映画ドラえもん』の最新作の公開によって、春休み興行が幕開けする。しかし今年はその1週間前の2月27日、安倍首相は新型コロナウイルスの感染拡大防止のために全国すべての小中高、特別支援学校を対象に「3月2日から春休みまで臨時休校を行うよう要請する」と発表。それに伴い、小学生をターゲットとする『映画ドラえもん のび太の新恐竜』は公開を延期を発表。他にも『2分の1の魔法』『ドクター・ドリトル』『ソニック・ザ・ムービー』などファミリー層をターゲットとした作品は軒並み公開延期が発表された。また一部シネコンは「座席を原則1席ずつ間隔を開けて発売する」という「最初から売り上げの半分を捨てる」異例の措置を取る、厳戒態勢で春休み興行は幕開けすることになった。今回はそんな春休み興行1週目から、「緊急事態宣言」が発令されるまでに封切られた作品の興行収入を振り返っていきたい。

 

  • 1週目

春休み興行の1週目は、例年オープニング興行で6億円以上、3年連続最終興行50億円突破を記録している人気シリーズの最新作『映画ドラえもん のび太の新恐竜』の公開延期されたことで、「新型コロナの映画界への影響」が可視化された週だ。また今年の『映画ドラえもん』は「ドラえもん生誕50周年記念」と「映画ドラえもん40作目記念」と「記念」が重なっていたことから、「テーマは原点となる『恐竜』」「東宝の売れっ子プロデューサー・川村元気脚本」「ゲスト声優にキムタクキャスティング」など、かなりの力の入った作品となっており歴代最高興行も狙えた作品だ。それだけに公開延期が映画業界に与えたダメージは計り知れない。

一方で予定通り公開した『Fukushima50』と『仮面病棟』が動員ランキングでトップ2を獲得するも、オープニング興行1億円前半に留まるなど、苦戦を強いられた。それでも3月1週目公開というアドバンテージからか、『Fukushima50』は累計興行7.5億円、『仮面病棟』は7億円を突破している。ただ『Fukushima50』は福島原発の事故を描くために莫大な予算を投下しているため、この数字ではかなり厳しいだろう。一方で『仮面病棟』は若者層の支持を集めてか、オープニング興行に対して累計興行は伸びた。もちろん新型コロナの影響がなければ興行収入10億円を超えるヒット作品になっていた可能性が高いため、関係者にとっては「悔しい結果」であることは変わりないだろう。しかし新型コロナの影響で苦戦する作品が多い中で、ここまでのパフォーマンスを見せれたのは商業映画冥利に尽きるのではないかと感じる。

 

 

  • 2週目

「これからの1~2週間が、急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」と新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が発表してから2週間以上が経った、春休み興行2週目はディズニー・ピクサー最新作『2分の1の魔法』が公開延期となった週だ。『映画ドラえもん のび太の新恐竜』と『2分の1の魔法』という春休み興行を引っ張っていく存在だった2本が公開延期になったことで、劇場側はチケット料金だけでなく、ポップコーンやジュースなど売店での売り上げでも大きなダメージを喰らうことになった。春休み興行2週目は「前年の同時期から動員・興行共に73%ダウン」「動員ランキング2位の作品の週末興行が1億円割れ」と厳しい結果が並んだ。

 

  • 3週目

東京オリンピックの聖火採火式」「全国一斉休校要請解除の方針」など「自粛ムード」が薄れ始めたことから、国民が「自粛疲れ」「コロナ鬱」を理由に遊び歩いた「三連休」があった春休み興行3週目。映画業界は『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』という平時ならオープニング興行2億円以上は確実な作品が封切られていたにも関わらず、オープニング興行は1.23億円と依然「自粛ムード」を感じさせる大人しい結果となった。意外と危機感を持ってた人は少なくなかったのかもしれない。動員ランキング初登場2位となった広瀬すず主演の『一度死んでみた』に至っては、初週にも関わらずオープニング興行は8600万円と「1億割れ」、平時に公開してもコケていた可能性が高い『弥生、三月 君を愛した30年』に至っては目も当てられない数字となった。

 

  • 4週目

東京オリンピックの延期が決まり、小池都知事が遅れを取り戻すかのように本気を出し始めた週。首都圏では「不要不急以外の外出自粛要請」が出されたことで、一部シネコンは営業休止の判断。その結果、前年の同時期と比べて80%以上のダウンを記録した。

 

 

  • 5週目

東京都の感染者数が100人を超えて「本当にヤバいのかもしれない」と多くの人がコロナへの認識を改めた5週目は前週から69〜75%のダウン、同時期の前年比では約90%のダウンとなった。

 

新型コロナ感染拡大の観点からいえば動員数が前年比90%ダウンというのは「日本人の危機意識が高まった」とプラスに受け取ることもできる。しかし劇場側からすれば「苦しい状況」である。新型コロナ感染拡大に伴い各映画会社はゴールデンウィーク映画の公開延期を決めた。そのため、この絶望的な状況は今後しばらく続くことになる。

 

 

  • 最後に…

春休み興行でトップ候補になっている『Fukushima50』は公開中の映画としては異例の有料ストリーミング配信が決まった。レンタル料金は1900円に設定されており、収入は平時と同じく映画館・配給会社・制作者らに分配されるという。ただ今回『Fukushima50』のような大作映画がこのような措置を取ったのは、既に公開した映画だからというのが大きいだろう。そのため今後この手の商業映画がストリーミング配信に舵を切るかは未知数である。新型コロナ終息には1年以上の時間が必要とされている。映画業界にとって「厳しい時期」は続きそうだ。

 

Fukushima50

Fukushima50

  • 発売日: 2020/04/18
  • メディア: Prime Video