2014年に公開され、興行収入83.8億円の大ヒットを記録した山崎貴監督作品『STAND BY ME ドラえもん』。本作は原作にある「未来の国からはるばると」「たまごの中のしずちゃん」「しずちゃんさようなら」「雪山のロマンス」「のび太の結婚前夜」「さようなら、ドラえもん」「帰ってきたドラえもん」の7つのエピソードを「ラブストーリー」と「泣けるドラえもん」を主軸に一本の長編3DCGアニメーション映画として再構成した作品である。
自分は初めて本作の予告編を観たときに「3Dで描かれたのび太、少し気持ち悪いな…」と半笑いしてしまった一方で、「名作エピソードを軸にドラえもんの出会いから別れを一本の映画として3Dで描く」という企画のコンセプト自体は結構面白そうだと思った。ただ実際に映画を鑑賞した後の感想は真逆となった。まず3DCG描写への違和感は割と早い段階で慣れ、のび太が初めてタケコプターで飛行するシーンではハラハラさせられ、レトロフューチャー感溢れる未来都市でのタケコプターの飛行シーンも「トヨタとパナソニックの看板だらけだな…」と苦笑いしつつも、ワクワクさせられた。2作目では上映自体がなかった3D上映のための演出も効果的に使われており、楽しかった。
その一方でストーリー面は自分が元のエピソードを知っていたのも影響してか「1話完結のエピソードを連続で観せられている感」が強く、一本の長編映画を観た満足感は薄かった。そしてこれは個人的な好みとなってしまうが、「この夏、ドラえもんが終わる?」という予告編のコピーそのままに、「さようなら、ドラえもん」のエピソード終了後にエンディングに入り、そのまま「帰ってきたドラえもん」は描かれず上映は終了して、場内が明るくなって欲しかった。子供時代に『ドラえもん』の漫画やアニメに触れているときに「のび太達が大人になっている未来にはドラえもんがいない」ことから察した「ドラえもんとのび太のいつの日にか必ず来る別れ」に対する明確なアンサーとなる作品になって欲しかった。
ただ山崎貴監督的には『ドラえもん』は「ドラえもんとのび太のドタバタした日常を送っている作品」であり、「帰ってきたドラえもん」まで描くことで「これからもドラえもんとのび太の楽しい日常は続いていく」と提示するエンディングにしたのではないかと思う。そういう意味では自分の観たかった作品とは違ったが、藤子・F・不二雄生誕80周年記念のお祭り映画としては、コレはコレで悪くないようにも思う。
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