3DCGアニメ映画化で魅力がなくなってしまった宮崎吾朗監督最新作『アーヤと魔女』

アーヤと魔女 (ロマンアルバム)

宮崎吾朗監督最新作『アーヤと魔女』を観た。「したたかに生きよ」というメッセージ自体は好きだし、ベラ・ヤーガとマンドレークに上手く取り入り生きていくアーヤの姿は宮崎駿監督と鈴木敏夫プロデューサーという強過ぎる2人と仕事をしている宮崎吾朗監督の生き方と重ねてみると面白いのかなと思う反面、純粋なエンタメ作品としては「…」という感じ。ただ鈴木敏夫プロデューサーと宮崎吾朗監督がそれぞれに「アーヤのモデルはあっち」と押し付け合っている関係者のインタビューを読むのは面白いので、やはりスタジオジブリ作品の公開はそういうのを含めて楽しい。

 

  • 宮崎駿監督「ピクサーに負けないものができた」

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本作は宮崎吾朗監督の父・宮崎駿監督が絶賛コメントを出したことも話題になった。宮崎駿監督は『ゲド戦記』の初号試写会では映画の途中で席を立ち「気持ちで映画、作っちゃいけない」と突き放していた。また『コクリコ坂から』の時は「少しは脅かせって こっちを」と中々厳しい発言。ただその直後には一瞬カメラに向かって笑顔を見せていたので、「素直に褒めるのは恥ずかしいのかな」という感じだった。そんな宮崎駿監督が今回の『アーヤと魔女』は「面白かった」とストレートに褒めており、ネットでは「『シン・エヴァ』のゲンドウ!?」という声もあった。これまでは素直になりきれない部分もあったのか、それとも何だかんだで息子が可愛いのか、はたまた宣伝のためにリップサービスをしたのか、真意は分からないが、宮崎駿監督の吾郎監督へのコメントを並べてみるだけでも面白い。

 

 

 試写を見た駿監督が「これでピクサーに負けないものが、我が国でもできた」と称賛したという。

 だが吾朗監督。「それはちょっと待て、どうなんだろうなと。かろうじて1回、米軍に勝っただけみたいな話。小さい組織ならではの作り方を見つけてやらなければいけないと思いました」。そう冷静に分析する。

「アーヤと魔女」の宮崎吾朗監督に聞く「ジブリの未来」 | 毎日新聞

ただ個人的に気になったのは宮崎駿監督が『アーヤと魔女』のCGを「ピクサーに負けないもの」と評価している点。またその発言に対して吾郎監督も「かろうじて1回、米軍に勝っただけみたいな話」と満更でもない様子で、毎日新聞の記者もこの発言を「冷静に分析」と評している。ただ流石にそれはどうだろうか… 日本のCGは技術面より予算面で「トライ・アンド・エラー」が繰り返せず、その上経験不足も重なりアメリカの予算も経験も豊富な大作映画と比べると確かに分が悪い。ただそれでも山崎貴監督の『STAND BY ME ドラえもん』『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』『ルパン三世 THE FIRST』と「ショボい」と思わせないレベルの高クオリティな3DCGアニメ映画が公開されたりしている。また同年夏公開の細田守監督最新作『竜とそばかすの姫』も<U>の世界は『スパイダーマン:スパイダーバース』と同じタイプのフルCGで登場人物の感情を描いていた。勿論、ここら辺の映画とは製作費が違うのかもしれないが、製作陣とその関係者が本作のCGを「ピクサーレベル」だと本気で思っているのなら「うーん…」感は否めない。宮崎駿監督はともかく宮崎吾朗監督は山崎貴監督の3DCGアニメ映画を認知していると思うのだが…

 

 

  • 3DCGアニメ化で宮崎吾朗監督の魅力が…

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※『ゲド戦記』

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※『コクリコ坂から』

また本作はCGが「ピクサーレベル」どうこう以前に手描きアニメではなく3DCGアニメ映画化してしまったことで宮崎吾朗監督の絵的な魅力も薄れてしまったように思う。例えば世間的には酷評された『ゲド戦記』もボチボチな反応だった『コクリコ坂から』も、両作品とも否定派であっても「アースシーやカルチェラタンの世界観は好き」という声は多かった。もしかしたら宮崎吾朗監督の建築家としての空間把握力みたいのが、アニメに存分に生かされていた部分だったのかもしれない。

一方で『アーヤと魔女』にもこの魅力が存分に発揮出来そうな「ベラ・ヤーガの作業部屋」が存在するが、3DCGアニメ化によって、前2作ほどの魅力は感じられない。美術ボードを見る限り、手描きアニメでやれば宮崎駿監督作品『魔女の宅急便』のキキの母親の作業場とかウルスラのアトリエ並みの世界観も出せそうな題材だけに残念に思う。

 

 

  • 最後に…

そんなこんなでエンディング映像の内容含めて、個人的には宮崎吾朗監督には3DCGアニメ映画ではなく、もう一度手描きアニメをやって欲しいな、と思った。