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「手描きアニメ」宮﨑駿監督『君たちはどう生きるか』と「低予算高クオリティ」山崎貴監督『ゴジラ−1.0』がアカデミー賞W受賞!

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第96回米アカデミー賞で宮﨑駿監督『君たちはどう生きるか』が長編アニメーション賞、山崎貴監督『ゴジラ−1.0』が特殊効果賞を受賞した。

 

  • 今年は「戦争映画」が強い傾向

今年のアカデミー賞はロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ攻撃などの社会情勢が影響したのか、戦時中を舞台にした『君たちはどう生きるか』と終戦直後の日本を舞台にした『ゴジラ−1.0』の他にも作品賞にクリストファー・ノーラン監督が「原爆の父」を描いた『オッペンハイマー』、長編ドキュメンタリー映画賞に『実録 マリウポリの20日間』、国際長編映画賞に『関心領域』と「戦争映画」が強い傾向にあった。アカデミー賞について分析した米紙「ニューヨーク・タイムズ」には「『君たちはどう生きるか』と『ゴジラ−1.0』は『オッペンハイマー』で日本視点の戦争について知りたくなったアメリカの観客の回答になる」という趣旨の論評が載ったという話もあり、両作品共に今年の傾向に上手く合致した面も大きそうだ。その意味では受賞を逃した『PERFECT DAYS』はちょっと運が悪かった面もあるのかもしれない。

 

 

  • 「手描きアニメ」VS「3DCGアニメ」

優秀アニメーション賞は『君たちはどう生きるか』と『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の一騎打ちとされていた。これは日米アニメ対決と同時に「古典的手描きアニメの究極」と「3DCGアニメ映画の最先端」という闘いでもあった。今回『君たちはどう生きるか』が戦いを制した背景には本作が「宮﨑駿監督最後の作品となる可能性」に加えて、アメリカでは既に失われてしまった「手描きアニメの文化の継続」に対するリスペクトの側面が指摘されている。鈴木敏夫プロデューサーは前作『風立ちぬ』から10年空いたのも大きかったのではないか、などとも述べていた。その意味では『スパイダーバース』の方は前作からそこまで大きな期間は空いてないし、本作も前後編の前編と近いうちに後編も公開される予定。「前作からの大幅なパワーアップ」が称賛されている反面、「前作からの拡大再生産」との指摘もあり、新鮮さが欠けた面もあったのかもしれない。こういう風に見ていくと「もう2度と同じスタイルでは作れないであろう『かぐや姫の物語』にも取って欲しかったな…」と過去の結果に不満が出る一方で、今後新海誠監督などの映像美がアカデミー賞の場で評価される日も遠くないのでないか、という期待もある。

 

 

  • 低予算で高クオリティ

特殊効果賞は「ハリウッド基準で低予算(日本基準では最高レベル)にも関わらず高クオリティの映像」を実現した『ゴジラ−1.0』を受賞したが、その背景には山崎貴監督が「撮影前に明確なビジョンを持っていること」と監督自身がVFXを担当していることから常に現場の進行をチェックしていることで意図と違う方向に行った場合、早めに修正出来ることなどが指摘されている。その意味では最大のライバルとされていた『ザ・クリエイター/創造者』も「再撮影を抑えることで予算を抑えた」というウリが被っており、尚且つこちらも「核と戦争」の話で更にホットな話題の「AI」がテーマと「こっちが取ってもおかしくない」ような作品だった。今回『ゴジラ−1.0』が獲得出来たのは、山崎貴監督による「自分たちの古典的な手法と最新技術を組み合わせた作り方が投票者の若い頃を思い出させることで懐かしさを刺激したのではないか」という趣旨の分析に加え、近年の「自国の作品だけではなく他国の作品にも取らせよう」という流れも追い風になったのだろう。兎にも角にも『ゴジラ−1.0』の受賞を持ってハリウッドが「低予算でも作れる」という表面的な部分ではなく『ザ・クリエイター』と共通する「撮影前の明確なビジョンを持つことで再撮影などを抑えてコストを抑えてクオリティを上げる」という本質的な部分でプラスな影響を与えられたらいいな、と偉そうな書き方になるが願う。

 

 

  • 最後に…

『ゴジラ−1.0.』のアメリカでの反応を見て山崎貴監督は百田尚樹氏に「『永遠の0』をアメリカで公開したら、いけるじゃないか」とメールを送ったという。山崎貴監督はアメリカのトークショーでも「次に何を見るのかオススメか」と問われた際に「『永遠の0』を観て欲しい」と答えていた。実際、『永遠の0』は戦時中の特攻隊員を主人公にした作品で『ゴジラ−1.0』の前日譚的な側面もある。そのためアメリカで『永遠の0』が公開されて日本含めて一体どういう反応が起こるのか個人的には興味があるが、「監督と原作者は別」とはいえ作品そのものより原作者のSNSの投稿内容が大きなネガティブ要素になってしまうのではないか、みたいなことを思わなくもない。

 

 

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