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アクション量産システムへのカウンター、サム・ライミ監督『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』ネタバレ感想

ポスター/スチール写真 A4 パターン7 ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス 光沢プリント

ネタバレ注意

MCU最新作『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』を観た。

 

  • 鑑賞前のハードルの高さ、設定難しく

youtu.be

MCU作品は「サプライズ」が多いことから、ファンサイドが過剰に「ネタバレ」に恐れるという状況が生まれている。その傾向は今年1月公開の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でより巨大なものに膨れ上がったような気がした。そして本作は公開前から主演のベネディクト・カンバーバッチをはじめ『ノー・ウェイ・ホーム』以上の「何か」を匂わせるような発言もあり、その期待は頂点に達していた。一方で『ノー・ウェイ・ホーム』はアメコミ映画の中でもトップレベルの人気を誇り、尚且つ業界のルール的にも役者的にも「あり得ない」と思われていたことが実現していた作品だった。この驚きを超えるには「デッドプール登場」レベルでイーブンで、それこそ「トム・クルーズ演じるアイアンマン」レベルが来ないと満たされない。

「果たしてそんなことが可能なのか?」「あまりハードルを上げ過ぎると肩透かしを喰らうのではないか」、そんな気持ちからサプライズという意味ではあまり大きなものを期待し過ぎない方がいいような気持ちになってくる。しかし『ノー・ウェイ・ホーム』ではあれだけ秘密主義を貫いてきたMCUが、本作では予告の段階で『X-MEN』シリーズのパトリック・スチュアート演じるチャールズの登場をほぼ確実なものとして、海外のCMに至っては公開前からキャプテン・カーターの登場を事実上明かすような宣伝を行っていた。この宣伝に対して「予告でここまで明かすということは、これ以上のサプライズが本編では待っている」、そんな期待の声はそこら中で目にした。ただMCU作品でこそないが、今年4月公開の『モービウス』が予告編詐欺としか思えない内容で、一観客としてMCUに対するハードルの高さ設定の難しさを感じた。

 

 

  • サム・ライミ監督の作家性が全開

スパイダーマン (字幕版)

一方で本作はサプライズ要素とは別に現在のアメコミ映画ブームの礎を作ったと言っても過言ではない『スパイダーマン』シリーズのサム・ライミ監督がメガホンを取ることも話題となった。MCUはライトな映画ファンからするとあまり馴染みがないが味のある監督を積極的に起用する印象があったが、今回は真打ち登場という感じ。これまでは「監督がいなくても映画が出来てしまうのがMCU」と揶揄されるのを裏付けるように予告編で監督名を大きくクレジットするイメージが薄かったが、本作ではドーンと大きく「サム・ライミ監督」の名前がクレジットされるバージョンの予告編があるくらいにはスタジオ側も特別視していることが伝わってくる。

そして実際できた作品はサム・ライミ監督の作家性が全開。物語前半の巨大な一つ目のタコみたいなクリーチャーとの戦闘やマルチバースを次々と移動する描写は勿論、後半のゾンビ・ストレンジはホラー要素満載で「MCUのアクション量産システム批判」に対するカウンターにもなっていたのでないかと思う。ただ楽譜を使ったバトルは面白かった反面、日本の替え歌文化のマイナス面をモロに喰らった感もあった。

 

 

  • 「イルミナティ」全滅描写の是非

ブロマイド写真★『X-MEN:フューチャー&パスト』新旧のプロフェッサーX&マグニートー/パトリック・スチュワート、ジェームズ・マカヴォイ、イアン・マッケラン、マイケル・ファスベンダー/【ノーブランド品】

そんなこんなで「よく言えば矢継ぎ早、悪く言えばぶつ切り感」を覚えながらも楽しめた本作。一方でサプライズ要素の「イルミナティ」のメンバー辺りの部分は「ウルトロンがいるのにアイアンマンの話はなしか…」というのは少なからず感じた。とはいっても「イルミナティ」のメンバーがサノスを倒した後の描写は「何か他の世界線」というか「パチモン」を観ているような奇妙な気分にさせられて貴重な映画体験になったとは思う。また全滅描写も驚きは勿論、ワンダの強さを見せる面において良かったのではないか、と感じる。ただ最初にお亡くなりになった頭にフォークみたいなのをつけてたヒーローはアメコミの知識皆無な自分にとっては「はじめまして」だったので、衝撃を覚えながらもそれ以上のことは思わなかったが、キャストが違うとは言えど薄っすらとは思い入れのある『ファンタスティック・フォー』のミスター・ファンタスティックと、別バースで別人といえども役者が同じでそこそこ思い入れのある『X-MEN』シリーズのチャールズが無惨に殺されたのはショック。この辺の残虐描写はキャラクターに思い入れがあり、尚且つマルチバース展開に懐疑的な層からは賛否が割れそうな気がした。ただ個人的にキャプテンカーターの人体切断そのものを見せずに、顔の演技とその後の血塗れの盾の描写だけで見せる残虐描写はレーティングの限界があるからこその最高のシーンだと思った。

 

※キャプテンカーターの惨殺描写を踏まえるとPG-12で女子高生の切断描写をガッツリ見せた山崎貴監督の『寄生獣』は相当攻めていた

 

※あのバースの「イルミナティ」、やたら弱かったけどどうやってサノス倒したのか気になる

 

 

  • 最後に…

MCUとしては久々の復活というだけあって3Dとの相性も良く、物語設定としても「別の世界に行ったら初めにその世界の食べ物を食べる」とか「夢は別の世界の自分の現実」みたいのもベタだけど面白かった。第3の目覚醒からの普通に生活は「お、おう」感もあったけど、エンドクレジット後のダブルミーニング・オチのくだらなさは「コレコレ」感があって良かった。

 

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