サム・ライミ監督『スパイダーマン3』は評判が悪い。それどころか監督自身が駄作認定する始末だ。
- 評判の悪い『スパイダーマン3』
サム・ライミ監督の『スパイダーマン』シリーズは、2002年公開の1作目が全米興行4.03億ドル、世界興行8.21億ドル、日本興行75.0億円、2004年公開の2作目が全米興行3.73億ドル、世界興行7.83億ドル、日本興行67.0億円、2007年公開の3作目が全米興行3.36億ドル、世界興行8.90億ドル、日本興行71.2億円を記録した大ヒット作品。公開から既に20年以上経っているが、後に公開された『アメイジング・スパイダーマン』シリーズとMCU版を差し置いて、本シリーズがこれまでの『スパイダーマン』映画の中で一番だという声は根強い。そして、その声と同じくくらい「サム・ライミ監督版の『スパイダーマン3』は駄作」という声も多い。それどころか、監督自ら駄作だと認める発言もしており、それを持ってシリーズファンが歓喜の声をあげてしまう始末だ。
SPIDER-MAN
TOMATOMETER 90%
AUDIENCE SCORE 67%
SPIDER-MAN 2
TOMATOMETER 93%
AUDIENCE SCORE 82%
実際、全米の大手批評サイト『ロッテントマト』でも1・2作目は上記のように高評価を得ている。
SPIDER-MAN 3
TOMATOMETER 63%
AUDIENCE SCORE 51%
その一方で3作目は前2作共に90%超えだった批評家支持率は63%に留まり、観客支持率に至っては51%とポップコーンが倒れるレベル。評判の悪さを裏付ける結果となっている。
- 評判の悪い理由は「ヴェノム」の無理強い
本作の悪評の最大の理由はソニー側がコミックスの人気キャラクター・ヴェノムの登場をサム・ライミ監督に無理強いした結果、脚本が散らばってしまったという指摘が多い。恐らくサム・ライミ監督としても、自身の望む形で映画化できなかった悔いが本作への駄作認定に繋がっているのだと思う。現にネットでも「ピーターがグレてるシーンが長くてダルい」というのをよく見る。
ただ個人的には前髪を下ろしたピーターが賃貸の大家さんの娘と遊びながら教授と電話してるシーンやMJに嫌がらせの意味でピアノを弾いてグウェンと踊るシーンなど、メチャクチャ面白く観た。また「憧れのMJと交際を始めて、ヒーロー活動も絶好調であるが故に生じた傲慢な心」と「ベンおじさん殺害犯への復讐心と仕事のライバル登場で生じたダークサイド」という不安定な精神状態がヴェノムによって可視化され、飲み込まれていってしまうというストーリーも自分は上手かったと思う。ピーターのこうした精神状況によって生じたギスギスした感じを賃貸の部屋のドアの立て付けの悪さで表現し、ヴェノムから解放されるとそのドアも直って、そこから入ってきたメイおばさんの話もスッと聞けるという演出(それまでは立て付けの悪いドアからピーターの部屋に入りにくいのと同様に、ピーターも人の話を聞く精神状況ではなかった)も気が利いていた。
※ピーターが顔を見る度に「家賃」とプレッシャーをかけてくる大家さんにキレるシーンで、大家さんが「彼はいつもイイ奴だ。きっと何かあったのだろう」と庇うシーンが地味に好き
- サンドマンを許した理由
本作はVFXをふんだんに使ったアクションシーンも見応えがあるし、MJにプロポーズする際のピーターとレストランのすれ違いギャグも面白い。関係が悪化していたハリーとの共闘シーンも燃えた。また時折「ピーターがサンドマンを許した理由が分からない」という意見も見かけるが、個人的にはピーターはベンおじさんの話を聞かずに最悪の事態を招いてしまい悔いているサンドマンと自身を重ねて、サンドマンを許すことで自身の過ちも許したのだと思う。そして、その直後にあるハリーとお互いを許し合うことで親友だと再確認するシーンも踏まえて、本作は「自分と他者を許すこと」がテーマだったのではないかと感じた。だから物語の幕もピーターとMJの和解を描くことで閉じたのだろう。
- 最後に…
それなのにシリーズファンも監督含めた制作サイドも『スパイダーマン3』を許せない人が多いなんて… そういう人たちを自分は許せない。