原恵一監督最新作『かがみの孤城』の興行収入が6億円を超え、『映画クレヨンしんちゃん』シリーズを除く同監督作品としては過去最高のヒットとなった。
- 「作品は良いのにヒットしない監督」という風潮
原恵一監督は『映画クレヨンしんちゃん』シリーズの5作目から10作目を監督しており、その中でも9作目『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』と10作目『嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』は映画史に残る傑作扱いを受けている。
また『映画クレヨンしんちゃん』シリーズを離れた後も『河童のクゥと夏休み』『カラフル』『はじまりのみち』『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』と評価の高い作品を公開している。その一方で『映画クレヨンしんちゃん』シリーズを離れて以降の作品はどれも興行的に振るっていない。そのため一部では「作品の評価は高いのに興行的にはヒットしない監督」みたいな風潮もある。
- 前作『バースデー・ワンダーランド』からポップに
『かがみの孤城』原恵一監督「僕はほっとくと、どんどん地味なものを作る/孤城の外観や内装など、背景となる造形なども含めて、若い人に憧れてもらえるような画を作ろうと/キャラの色彩設計に関してもこころの髪と眼は青系統の色彩なんですが、これは僕にとって初めての試み」https://t.co/H1AdRN7IcY
— ゴミ雑草 (@mjwr9620) 2023年1月12日
原恵一監督作品が興行的にヒットしない要因として最も指摘されているのが「作品が地味」であること。インタビュー記事によるとこの点は原恵一監督本人も自覚的で本作では孤城のデザインやキャラの色彩設定を意図的にポップな方向で演出した様子。
この傾向は前作『バースデー・ワンダーランド』の時から見られていたことだが、本作ではより若者ウケ、アニメ好きウケするように踏み込んだように思える。勿論、これでも同時期公開の新海誠監督最新作『すずめの戸締まり』対比では「何となく華がない、地味」という感じもするが、原恵一監督の過去の作品のキャラデザ等と比べれば本作がポップな方向に寄せていることは誰もが認めるところだろう。前作『バースデー・ワンダーランド』は残念ながら批評的・興行的には当たらなかったが、本作はポップな方向に舵を切ったことが功を奏したのではないか、と感じる。
- 全国公開かつ原作がベストセラー
また本作のヒットの要因は純粋に松竹配給で全国307館と公開規模が大きかったことや原作が2017年と比較的近年出版で複数の賞を受賞している累計発行部数170万部超えの辻村深月氏のベストセラー小説が原作だったこと、主題歌の選曲、SNSによる好意的な口コミの拡散なども良かったのだろう。
- 最後に…
興行的不発作品ばかりだとそのうち新作が作れなくなっちゃうんじゃないか、とちょっと心配だったので本作がそこそこヒットして何より。
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