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【ジョーカー2/ヴェノム3/シビル・ウォー/進撃の巨人/スマホ/アクマゲーム/八犬伝/きみの色/侍タイ/Cloud】秋の興行収入2024

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秋の興行収入の雑感、前回の『ラストマイル』『室井慎次 敗れざる者/生き続ける者』『スオミの話をしよう』の続き。

 

  • 日本は分析型感想多めの『ジョーカー2』

ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ

この秋最大の興行的注目作品は『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』だったと言っても過言ではないだろう。本作は日本公開前の1週間前に本国アメリカで公開されたが、批評家・一般観客共に酷評の嵐。それを受けて日本ではアメリカのレビューから「どうやら前作で感化されたファンに冷や水を浴びせて怒らせる内容らしい」「いや、それは実はちょっと違って、批評家レビューも低いということは純粋に映画の出来が悪いのだろう」と公開前から考察合戦が起きるカオス状態。興行面でも製作費2億ドル(前作は6000万ドル、監督は報道に「馬鹿げている」「荒唐無稽」と否定、実際は1.9億ドルか)に対してオープニング興行4000万ドルと前作のオープニング興行9350万ドルの半分以下のスタートでDCEUに終止符を打たざるを得ない程にコケた『ザ・フラッシュ』の5500万ドルすら下回る大惨敗。しかも2週目に至っては前週比−81.3%と『マーベルズ』の−78.1%を下回りアメコミ映画史上ワースト記録を更新。一部では「メディアでのネガティヴキャンペーンが酷かった」との指摘もあるが、あまりにも無惨な結果だ。日本ではオープニング4日間で4.56億円、最終興行は12億円程度と日本のアメコミ映画の興行水準的には平々凡々な成績だが、前作がオープニング3日間で7.55億円、最終興行が50.6億円の大ヒットだったことを踏まえると大幅ダウンであることは明らか。一方で日本での評価は肯定派も否定派も割と作品と一定の距離を保った上での分析型の感想が多く、そこまでの熱量を感じられなかったりもした。

 

『ジョーカー2』レビューと興収、ともに苦戦スタート ─ アメコミ映画史上最低スコア、世界が混乱する問題作に | THE RIVER

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  • 熱量の低いアメコミ映画『ヴェノム』完結編

ヴェノム:ザ・ラストダンス

そこまで熱量を感じられない感想の多いアメコミ映画といえば、この秋は『ヴェノム』シリーズの完結編『ヴェノム:ザ・ラストダンス』も公開。1作目公開時の「あっ、思ったよりヌルい感じなのね…」というイメージをそのまま完結編も引き継いでいたことあって、「ヴェノム史上最高傑作」という海外の最速レビューに対しても「いや、あの前2作対比で最高傑作と言われても…」と若干困惑させられたりもした。アメリカでのオープニング興行も5100万ドルと1作目の8000万ドル、2作目の9000万ドルを下回るシリーズ最低のスタートなのに対して、2週目は前週比48.8%とスーパーヒーロー映画の完結編というポジションに対して下落率が低いのも「何とも言えない観客サイドの温度のヌルさ」みたいのを裏付ける数字だったように思う。日本でのオープニング4日間の興行収入は先行上映込みで6.87億円で最終興行は15億円程度見込み。1作目の22.5億円、2作目の19.1億円を下回る結果だが、正直「まー、こんな感じじゃない」感が強い。寧ろ2作目でかなり粘ったことの方が(『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』公開直前も影響したのかもしれないが…)当時衝撃的だった。

 

クリント・イーストウッド最新作、北米でひっそり公開 『ゴジラ-1.0』北米再上映が好調|Real Sound|リアルサウンド 映画部

 

 

  • 日本も選挙イヤー、『シビル・ウォー』

シビル・ウォー アメリカ最後の日

「冷めた熱量」と正反対の「熱狂」による「分断」を警戒したアメリカ映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』も本国から半年遅れでようやく公開。どうやら日本の配給会社はアメリカ大統領選の時期を狙って意図的に公開を遅らせたようだが、その結果もあってなのか洋画不振が指摘される今年度においてインデペンデンス系映画にも関わらず週末観客動員数ランキング初登場1位を獲得。勿論、週末観客動員数ランキングは相対評価でその週に公開されている作品の強さに左右される運の要素も強く、週末1位だからといって必ずしも興行的にヒットしている訳でもないのだが、今年は日本でも注目度の高い選挙が続いた年であることを踏まえると、数少ない洋画の週末1位獲得作品が本作というのは「時代を象徴している」とやや無理くりに解釈することも出来なくはない。最終興行は6.8億円程度で劇場での公開が遅れた反面、上映終了後に速攻でアマプラ会員向けのサブスク配信が開始された。

 

洋画離れの日本で、まさかの1位登場「シビル・ウォー」の衝撃。世界から「半年遅れ」の公開に意味が?(斉藤博昭) - エキスパート - Yahoo!ニュース

 

  • 平成後期の代表作が完結、『進撃の巨人』

劇場版「進撃巨人」完結編THE LAST ATTACK ポスター

「熱狂」と「分断」といえば大人気漫画のアニメ版の完結編『劇場版「進撃の巨人」完結編 THE LAST ATTACK』が興行収入10億円超えのヒット。本作は昨年NHKで放送された『「進撃の巨人」The Final Season 完結編 前編/後編』をブラッシュアップした総集編。これまでも『進撃の巨人』のアニメ版の総集編は劇場公開されていたが、最高は4億円で10億円の大台突破は初。平成後期を代表する人気漫画のアニメ版だが、「まずテレビでアニメを放送してから、劇場で総集編を公開して手堅くヒット」というスタイルからも平成後期の名残を感じなくもない。

 

“総集編”の枠を超えた長編映画、ファン待望の『劇場版「進撃の巨人」完結編 THE LAST ATTACK』が初登場No. 1!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS

 

  • 3度目の『スマホを落としだけなのに』

【チラシ付き、映画パンフレット】スマホを落としただけなのに 最終章 監督 中田秀夫 出演 成田凌、クォン・ウンビ、大谷亮平、白石麻衣

タイトル長い系の完結編だと『スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム』も公開されたが、こちらは1作目が19.6億円のヒットだったのに対して、2作目では11.9億円まで落として、3作目の最終章は4億円にも満たない見通し。正直1作目から「あっ、タイトルから想像してたのと違うな…」感はあったが、随分遠いところまで来てしまった印象。『着信アリ』とかもそうだけど、「一発ネタでそんなに引っ張らなくても…」感は半端ない。ただ原作小説は今年第4弾が発売された。

 

  • 世界視野も原作者がツッコミ、『アクマゲーム』

【チラシ付き、映画パンフレット】 劇場版 ACMA GAME 最後の鍵 アクマ ゲーム 監督 佐藤東弥 出演 間宮祥太朗、田中樹、古川琴音、竜星涼

世の中には完結編で跳ねる作品もあれば沈む作品もある一方で最初から最後まで低空飛行を続ける作品もあり、それに該当してしまったのが『劇場版ACMA:GAME 最後の鍵』。本作は原作:メーブ、作画:恵広史による漫画をドラマ化した『ACMA:GAME アクマゲーム』の劇場版で、日本テレビが「Prime Videoでの世界配信に日本テレビとして初めて臨んだ作品」でもあった。おそらく「韓国の『イカゲーム』が世界的にヒットしたけど、デスゲームは本来日本の人気コンテンツ、実写映画版『カイジ』シリーズをヒットに導いた佐藤東弥監督のノウハウで日本の本気を世界に見せつけやろう」的な目論見があったのではないか、と勝手に推測しているが、視聴率は低迷、再生回数のポジティブな情報も特に公式から発表されることもなく、映画も最終2億円程度の大コケ… 

また本作は『セクシー田中さん』事件への世間的な注目度が高い時期に放送が控えていた漫画原作の日テレドラマだったこともあり、放送前から「原作と主人公の年齢が違う」とネットニュースになりプチ炎上。更に放送中には原作者が直々にSNSでイラスト付きでツッコミを投下し始めて、これまた悪い意味で注目を集めてしまった。ただ原作者サイドはドラマ未視聴で『セクシー田中さん』と絡めて再生回数目的で執拗に煽る勢力にも嫌気を刺していた様子。

 

<劇場版 ACMA:GAME>岩崎Pが語る、映画化への特別な思い「世界配信に日本テレビとして初めて臨んだ作品」 | WEBザテレビジョン

 

 

  • VFXのライバルが嫉妬も差が開く『八犬伝』

【チラシ付映画パンフレット】 『八犬伝』 出演:役所広司.内野聖陽.土屋太鳳

必要以上の「対立」を煽って「分断」を招くのは社会にとってマイナスになるが、健全な「対決」には社会にとってポジティブな効果もある。それはクリエイター同士のライバル関係にも当てはまることであり、例えば『ゴジラ−1.0』の山崎貴監督は『文藝春秋』11月号の対談記事でVFX視点において『リターナー』時代からのライバル関係にある曽利文彦監督の『ピンポン』の描写を引用して「ライバル関係の熱さ」について語っていた。ただこの文脈においてライバルとして語った対象は曽利文彦監督ではなく庵野秀明監督。一応『八犬伝』公開の際には「自分が映画化したかった」の意味で「『ふざけるなよ!』と思った」と発言するなど未だライバル意識もあるようだが、「監督もVFXも自分で両方やるからクオリティコントロールが出来て作品の完成度が高い」という強みの共通項があるにも関わらず、『ゴジラ−1.0』を差し引いても世評的にも興行的にも大きな差が開いてしまっている印象。今回の『八犬伝』も観客動員数ランキング初登場1位は獲得したが、最終興行は7億円程度と10億円にも大きく届かない見通しだ。

 

映画『八犬伝』曽利文彦監督×山崎貴監督×上杉裕世氏「映画とVFXの最前線」を語り合う | ORICON NEWS

 

  • 川村元気プロデュースの山田尚子監督作品

【Amazon.co.jp限定】映画「きみの色」オリジナル・サウンドトラック all is colour within [Vinyl](メガジャケ付) [Analog]

映画監督同士のライバル関係を強調する宣伝が取られたのは山田尚子監督のアニメ映画『きみの色』。本作は『君の名は。』でマイナー監督だった新海誠監督をメジャー監督に引き上げた川村元気プロデューサーが『映画 けいおん』『たまこラブストーリー』『映画 聲の形』と「小規模公開でスクリーンアベレージが高い」結果を残してきた山田尚子監督をプロデュースして東宝配給のIMAXを含む全国公開に踏み切った作品。こうした背景もあってか『キネマ旬報』での大特集や日テレ『金曜ロードショー』での過去作放送に加えて、NHKで新海誠監督との対談が放送されるなど「女性初のポスト宮﨑駿枠」に開花させたい意図みたいのを少なからず感じたが、結果的には最終4億円程度の大惨敗。「そもそも山田尚子監督ではなく京アニにブランドがあったのでは?」との指摘に加えて、京アニ独立後の山田尚子監督作品の主人公らのキャラデザからパッと見のポップな可愛さが薄れているのが、作品の良し悪しとは別に興行的な意味では京アニファン層もライト層も惹きつけられなかった要因なのかな、とは感じた。

 

 

  • 最後に…

【チラシ付映画パンフレット】 『侍タイムスリッパー』 出演:山口馬木也.冨家ノリマサ.沙倉ゆうの

映画パンフレット Cloud クラウド

そんなこんなで秋興行は盛り上がりに欠ける感は否めなかったが、第二の『カメラを止めるな!』こと製作費2600万円の低予算自主制作映画『侍タイムスリッパー』が口コミによる全国拡大公開でロングランヒット。『カメラを止めるな!』の最終31.2億円には及んでいないが、流行語大賞の候補にノミネートされるなど注目度は高く、興行収入は8億円に迫っている。日本アカデミー賞の結果次第では更に動員を伸ばして10億円の大台突破の可能性も期待される。またアカデミー賞関連では『Cloud クラウド』がアメリカのアカデミー賞の国際長編映画賞の日本代表作品となっているので、現段階では興行は2億円ちょっとと大きなヒットには至っていないが、こちらも結果次第では再上映で化けるかもしれない。

 

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