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『ミッション:インポッシブル』シリーズ連続ヒット!アクション映画に特化した2010年代トム・クルーズ主演作品

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2010年代のトム・クルーズ主演映画の興行的・批評的評価を振り返ると、『ミッション:インポッシブル』シリーズが如何に彼のキャリアを支えているかが分かる。

 

  • 暗黒期からの脱出に成功した『ゴースト・プロトコル

ナイト&デイ (字幕版)

トム・クルーズといえば『トップガン』『レインマン』『ミッション:インポッシブル』『マイノリティ・リポート』『ラストサムライ』『宇宙戦争』など大ヒット作品が多い世界を代表するトップスターの1人だ。一方で2006年公開の『M:i:III』から「バラエティでのソファ上での奇行」や「サイエントロジー教会の熱心な支持者」などのネガティブなイメージから人気が低迷。2010年代初公開作品となるキャメロン・ディアスとの2大スター共演映画『ナイト&デイ』は製作費1.17億ドルの大作映画でありながら公開初日の興行収入は僅か380万ドルに留まり、オープニング興行も2013万ドルと「トム・クルーズ主演のアクション映画としては過去20年間で最低の初動成績」を記録。「ロッテントマト」でも批評家支持率52%、観客支持率49%と厳しい結果となった。最終的な興行結果も全米で7637万ドルと製作費回収に失敗、世界興行も2.61億ドルと大コケした。日本での興行収入は23.1億円と一定の結果を出した一方で、世界的なトムへの評価は「彼の時代は終わった」というものだった。

ナイト&デイ (字幕版)

ナイト&デイ (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 
ナイト&デイ (吹替版)

ナイト&デイ (吹替版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル [DVD]

おそらくトム自身も主演作品が連続大コケしたことで、キャリアの見直しが必要だと考えたことだろう。トム史上最大の大コケをした作品の次に選んだのは、大ヒットシリーズの最新作『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』だった。ただトムは他の人気が落ち目の俳優がやるような人気シリーズへの頼り方はしなかった。まずトムは本シリーズにおけるストーリー面での低評価を改善するために、ピクサーで『Mr.インクレディブル』『レミーのおいしいレストラン』を手掛けたブラッド・バードに監督をオファー。物語の奥行きを出すことに成功した。その上、シリーズの中で評価の高いアクション面も大幅に強化した。それがかの有名な「世界一高いビル『ブルジュ・ハリファ』にノースタントで挑むアクションシーン」だった。ただ配給会社の本作への期待はそこまで高くなかったように思う。その理由は当初公開予定した日にロバート・ダウニーJr.主演『シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム』が公開されると分かると、客層が被ることを恐れて当初の公開予定日をIMAX版のみの公開日に変更、拡大公開を後ろ倒しにする措置が取られたことからだ。ただ映画が公開されると、「ロッテントマト」での批評家支持率は93%、観客支持率76%と「シリーズ最高傑作」という高評価を得た。興行収入も製作費1.45億ドルに対して、全米興行2.9億ドル、世界興行6.94億ドルとシリーズ最高のヒットを記録した。日本でも興行収入53.8億円と2012年度に日本で公開された洋画作品の中でNo. 1ヒットとなった。こうして「彼の時代は終わった」ように見えていたトム・クルーズは『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』によって華麗なる復活を遂げたのだった。

 

 

  • 意欲作続くも…

アウトロー (吹替版)

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』の大ヒットによって、「トム・クルーズ完全復活!」となったかといえば、実はそういう訳ではなかった。2012年に公開されたリー・チャイルドの全米でベストセラーとなっている『ジャック・リーチャー』シリーズを実写映画化した『アウトロー』は「ロッテントマト」で批評家支持率63%、観客支持率67%とボチボチといった感じに留まった。興行面でも製作費0.6億ドルに対して、全米興行0.8億ドル、世界興行2.18億ドルとヒットこそしたものの、「何となく地味だよね」という感じは否めなかった。日本での興行収入も11.3億円とほどほどにヒットしたという感じだった。

アウトロー (吹替版)

アウトロー (吹替版)

  • メディア: Prime Video
 
アウトロー (字幕版)

アウトロー (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

オブリビオン(吹替版)

ただ『アウトロー』は批評的・興行的にコケた訳でもないし、「大予算かけた大作ばかりじゃなくて、偶にはこういう比較的低予算の渋めのアクション映画もいいよね!」といった具合に本作を評価する声も多く、続編も製作された。問題はその次、2013年に公開されたSFスリラー『オブリビオン』だ。本作に対しても映像面を持って評価をする声もあるにはあるのだが、「ロッテントマト」の批評家支持率は53%、観客支持率も61%と振るわなかった。興行面でも製作費1.30億ドルに対して、全米興行は0.89億ドルと製作費回収に失敗。世界興行も2.86億ドルと厳しい結果に終わった。一方で日本での興行収入は13.1億円とそれなりのヒットになっているところをみると、やはり日本でのトム・クルーズ人気は高いのだろうと感じさせる。

オブリビオン (字幕版)

オブリビオン (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 
オブリビオン(吹替版)

オブリビオン(吹替版)

  • 発売日: 2016/01/30
  • メディア: Prime Video
 

オール・ユー・ニード・イズ・キル(字幕版)

そんな日本人が大なきなトム・クルーズが次に公開した主演映画が、桜坂洋によるタイムリープを題材にした日本のライトノベルを実写映画化した『オール・ユー・ニード・イズ・キル』だった。本作はトム・クルーズ史上初の3D映画でもある。前年に公開された『オブリビオン』と同様のSF映画ではあったが、「ロッテントマト」での批評家支持率・観客支持率90%と共に高評価を記録した。ただ批評的成功とは裏腹に興行面では製作費1.78億ドルという莫大な予算に対して、全米興行は1.0億ドルと製作費回収に失敗。世界興行も3.70億ドルと製作費に対して物足りない結果に終わった。一方で日本での興行収入は15.9億円とこれまたヒット、日本でのトム・クルーズ主演映画の累計興行収入は1000億円を突破したことも話題となった。

オール・ユー・ニード・イズ・キル(字幕版)

オール・ユー・ニード・イズ・キル(字幕版)

  • 発売日: 2014/10/29
  • メディア: Prime Video
 
オール・ユー・ニード・イズ・キル(吹替版)

オール・ユー・ニード・イズ・キル(吹替版)

  • 発売日: 2014/10/29
  • メディア: Prime Video
 

ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション[AmazonDVDコレクション]

日本はともかく世界的には『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』以降、大ヒットに恵まれなかったトム・クルーズ主演映画だったが、2015年に公開された『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』で再び大スターとしての貫禄を見せつけた。本作では前作での「世界一高いビル『ブルジュ・ハリファ』にノースタントで挑むアクションシーン」を超えるために、上空1500メートルを飛ぶ航空機にしがみつくノースタントアクションを披露。また「水中で6分以上息を止めるアクションシーン」「横滑り防止装置を全てオフにしたカーチェイス」「安全装置を全て無効にしてバイクを傾けながら猛スピードで疾走するバイクチェイス」など、とにかく「CGを使わないノースタントアクション」をウリにするプロモーションを打ち出した。その結果「ロッテントマト」での批評家支持率93%、観客支持率87%の高評価。興行面でも製作費1.50億ドルに対して、全米興行1.93億ドル、世界興行6.73億ドルの大ヒットを記録した。日本での興行収入も51.4億円を記録する大ヒット作品となった。

 

 

ジャック・リーチャー: Never Go Back (吹替版)

ミッション:インポッシブル』シリーズで2作品連続をヒットを記録したトム・クルーズは2013年に公開された『アウトロー』の続編『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』を2016年に公開した。おそらくトムは『ジャック・リーチャー』を『ミッション:インポッシブル』シリーズに並ぶ自身の人気シリーズに育てたいという想いがあったのではないかと思う。ただ本作の「ロッテントマト」での批評家支持率は37%、観客支持率も42%と大惨敗。興行収入も製作費0.6億ドルに対して、全米興行0.58億ドル、世界興行1.62億ドルと振るわなかった。また世界的な大コケ作品であったとしても、2010年代は常に興行収入10億円以上のヒットを記録し続けていた日本での興行収入も8.67億円と微妙な結果に終わった。この結果から本作の続編は難しいとされていたが、実は本シリーズは『アウトロー』公開前から身長195センチのジャックを身長170センチのトムが演じることに対して、原作ファンからの批判が起きていた。そして本作の公開が終了した後に、原作者により「残念ながらクルーズは素晴らしい才能に恵まれているけど、その体格は持っていなかった」というトムのコンプレックスを刺激するような止めの一言によって本作のシリーズ継続の夢は完全に途絶える結果となった。

ジャック・リーチャー: Never Go Back (吹替版)

ジャック・リーチャー: Never Go Back (吹替版)

  • 発売日: 2017/03/15
  • メディア: Prime Video
 
ジャック・リーチャー: Never Go Back (字幕版)

ジャック・リーチャー: Never Go Back (字幕版)

  • 発売日: 2017/03/15
  • メディア: Prime Video
 

ザ・マミー/呪われた砂漠の王女(吹替版)

『ジャック・リーチャー』シリーズの夢が途絶えたトム・クルーズがその翌年に公開したのが、『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』だった。本作は1920年代から1950年代にかけてユニバーサル・スタジオが製作したホラー映画・スリラー映画・SF映画を、豪華キャストと実力派スタッフ、現在の最新技術によって、「アクション・アドベンチャー」として蘇らせていこうというプロジェクト「ダーク・ユニバース」の第1弾。MCUの『アベンジャーズ』のような各映画の主人公が集結する「モンスター大集合映画」を製作して大儲けしてやろうというプロジェクトだったが、「ロッテントマト」での批評家支持率は16%、観客支持率も35%とトム主演映画史上の中でもワーストレベルの大酷評を喰らう結果となった。興行面でも製作費1.25億ドルに対して、全米興行は0.8億ドルと大コケ。世界興行は4億ドルを超えたが、「ダーク・ユニバース」は方向転換を余儀なくされた。ちなみに日本での興行収入は15.3億円とヒットしたが、何故か本作では主演作品があれば必ずといっていいほど来日してくれたトムの来日はなかった。一説によると全米での興行的失敗により、当初予定されていたトムの来日が中止になったという話もある。真相は分からないが、絶対的た事実とかで分かるのはトムがシリーズ化とユニバース化を狙った主演映画2作品が立て続けに失敗したということである。

ザ・マミー/呪われた砂漠の王女(吹替版)

ザ・マミー/呪われた砂漠の王女(吹替版)

  • 発売日: 2017/11/08
  • メディア: Prime Video
 
ザ・マミー/呪われた砂漠の王女 (字幕版)

ザ・マミー/呪われた砂漠の王女 (字幕版)

  • 発売日: 2017/09/20
  • メディア: Prime Video
 

バリー・シール/アメリカをはめた男(字幕版)

シリーズ化、ユニバース化を狙った主演映画が立て続けにコケたトムの次の作品は、パイロットとしてCIAの仕事をしながら、麻薬の運び屋でもあった実在の人物バリー・シールの実話をもとにしたフィクション『バリー・シール/アメリカをはめた男』だった。本作はトムがノースタントで挑んだ飛行機アクションや破天荒な犯罪者キャラも話題となり、「ロッテントマト」で批評支持率86%、観客支持率78%と高評価を記録。興行面では製作費0.5億ドルに対して、全米興行0.5億ドル、世界興行1.32億ドルのヒットとなった。日本での興行収入は7.52億円もそこまで振るわなかったのは残念ではあるが、2010年代のトム・クルーズ主演作品として『ミッション:インポッシブル』シリーズ以外で、興行面と批評面で一定の評価を納めたのは唯一の作品となった。一方だ本作は撮影中に飛行機が墜落して、搭乗していた撮影クルーが2人亡くなるという事故も起きた。

バリー・シール/アメリカをはめた男(字幕版)

バリー・シール/アメリカをはめた男(字幕版)

  • 発売日: 2017/12/20
  • メディア: Prime Video
 
バリー・シール/アメリカをはめた男(吹替版)

バリー・シール/アメリカをはめた男(吹替版)

  • 発売日: 2018/02/21
  • メディア: Prime Video
 

ミッション:インポッシブル フォールアウト (吹替版)

2010年代最後のトム・クルーズ主演映画は人気シリーズ最新作『ミッション:インポッシブル/ファールアウト』。本作で前2作品に続き、「高度7600メートルからのヘイロージャンプ」「パリの螺旋街をノースタントで逆走するバイクチェイス」「ノースタントのヘリコプターアクション」などアクションシーン満載の作品。建物と建物の間をジャンプして骨折をした事故を宣伝に利用したり、撮影したアクションシーンの一部が物語に組み込めないためカットするなど、トムのアクションへの熱意がとんでもないレベルに達した作品でもある。本作の「ロッテントマト」での批評家支持率は97%、観客支持率は87%と「シリーズ最高傑作」という声も多く、興行面でも製作費1.78億ドルに対して、全米興行2.20億ドル、世界興行7.91億ドルとトム・クルーズ史上歴代最高記録の興行収入となった。一方で本作は3D映画だったにも関わらず、日本では3D公開がされず、興行収入も47.2億円とシリーズ最低記録となった。トム・クルーズは頻繁に来日してくる大スターの人気シリーズ最新作がトムが望む環境での上映が実現されていなかったのは個人的には残念に感じた。

ミッション:インポッシブル フォールアウト (吹替版)

ミッション:インポッシブル フォールアウト (吹替版)

  • 発売日: 2018/11/14
  • メディア: Prime Video
 
ミッション:インポッシブル フォールアウト (字幕版)

ミッション:インポッシブル フォールアウト (字幕版)

  • 発売日: 2018/11/06
  • メディア: Prime Video
 

 

 

  • 最後に…

こうして最低興行から始まり、最高興行で終えた2010年代のトム・クルーズ主演映画を振り返ると『ミッション:インポッシブル』以外はイマイチヒット作品に恵まれていないこと、そしてエンタメアクション映画に特化していることが分かる。トム・クルーズの2020年公開作品は『トップガン マーヴェリック』『ミッション:インポッシブル7』『ミッション:インポッシブル8』、また先日NASAとタッグを組んで宇宙空間での撮影を行う映画の製作も予定されていることが発表された。新型コロナウイルス感染拡大の影響で先行きが見えない状況であるが、2020年代トム・クルーズの活躍も楽しみだ。その一方でアクションの過激化が進むと「トム・クルーズ、ノースタントアクションの事故で死亡」みたいなこともあり得ると思うので、安全面を最優先にした撮影をしてし欲しいと願う。