『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』を観た。
- 公開前日に延期発表、1作目以来の夏休み公開
新型コロナウイルス感染拡大を受け、2021年4月23日(金)より公開を予定しておりました『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』の公開延期を決定致しました。
— 4/22映画公開✨クレヨンしんちゃん【公式】 (@crayon_official) 2021年4月22日
今後の公開予定は決定次第、公式HPにてお知らせ致します。
詳細は下記よりご確認下さい。https://t.co/rtRYKqhmJL pic.twitter.com/QQJy0GcqIR
本作は当初例年通り4月中旬のゴールデンウィーク興行作品だった。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて公開日前日に延期を発表。その結果、1作目『アクション仮面VSハイグレ魔王』以来29年ぶりにしんちゃん映画が夏休み公開されることになった。
- 「青春はミステリー」、認められる多様性と失敗
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— 4/22映画公開✨クレヨンしんちゃん【公式】 (@crayon_official) 2021年8月28日
夏の思い出に#映画クレヨンしんちゃん
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しんちゃん、風間くん、カスカベ防衛隊、天カス学園の生徒達のそれぞれの青春のかたちをぜひ劇場で…#夏の終わりはオラと謎解き#劇場へ急げ🏃♀️ pic.twitter.com/WSfZlDGllD
本作は風間くんの誘いでかすかべ防衛隊の5人が全寮制の超エリート校「私立天下統一カスカベ学園」通称・天カス学園に1週間体験入学するという物語。この学校では学園長の方針からエリート教育と称して、生徒をランク付けをして、そのランクに応じてクラス分けは愚か昼食のレベルまで決まってしまうという行き過ぎた教育システムが敷かれているという設定。その学校内で起きた「吸ケツ鬼事件」の犯人をしんちゃんたちが個性豊かな容疑者から特定していく物語になっている。ただ本作では「行き過ぎた教育システムを作った学園長」や「吸ケツ鬼事件の犯人」の失敗は明らかにされるもの、両者が断罪されることはない。それどころか本作ではAI「オツムン」の「青春は?」の問いに個性豊かな生徒たちが答えた「キラキラ」「ウェイウェイ」「恋」「コンプレックス」「孤独」という回答の一つに犯人の「後悔」も入れることで、失敗も含めて多様な青春を全面肯定する作品に仕上がっている。しんちゃんの汗がトドメとはいえ、「青春は?」の問いに対する多様な答えにバグを起こして「青春はミステリー」と結論づける着地点も良かった。ステレオタイプの青春像の押し付けになっていないメッセージには子供向け映画としての「あるべき姿」さまで感じさせる。また昨年公開の『ラクガキングタム』は大人が極端かつ無責任な言動を取り、しんちゃんたちを追い詰めることが奇しくもコロナ禍以降で強調された「不振と分断と憎悪の時代」を表す作品に仕上がっていたのに対して、今年は大人から子供まで本当の意味で嫌な人がいない、優しさに包まれた作品になっていたのでないかと思う。
※ひろしが「青春は今だぜ」とするところは「いつでも青春できる」と「オトナ帝国の昭和に懐かしさを感じているひろしはいない」という二つの意味で良かったという指摘に「なるほど」と思った
- 風間くんの想い
原作では『オラの心はエリートだぞ』、映画では『嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』『オラの引越し物語 〜サボテン大襲撃〜』などしんちゃんと風間くんの友情は作品内で常々描かれており、それが作品の魅力の一つとされてきた。そんな中、本作では風間くんの想いがこれまで以上にストレートに述べられるクライマックスが用意されている。本作では風間くんはエリート小学校の入学にも繋がる5人参加の体験授業に同じ目標を共有する塾の友達ではなく、かすかべ防衛隊の5人を誘った。その理由は「風間くんは親の方針でかすかべ防衛隊のみんなとは違うエリート小学校に行かなければならないけど、この体験入学を機会にみんなで同じ小学校に通えたらいいな」と考えていたからだった。
しんちゃん映画はかねてより「映画でどんなに凄い体験をしても、毎週やってるテレビアニメの放送では全部リセットされて日常生活を送ってるのがアレ」という指摘がなされる。個人的に「あまりそういう話はね、ホラ」みたいには思うのだが、本作ではそういう指摘を踏まえると「映画(体験入学)というちょっとした非日常によって、風間くんが多分心の奥底ではずっと想っているモヤモヤみたいのを少し吐き出せた」という見え方も出来る。また風間くんがこの想いを吐露する時、しんちゃんは「オラ、今しか分からない」と反論してる。原作等の描写も踏まえてしんちゃんは次の日には本当に風間くんのこの言葉を忘れてしまっているんだろうけど、そういう意味でもテレビアニメのレギュラー放送から逸脱しない、それでいって2人の友情と本音を再確認できるしんちゃん映画になっていたのではないかと感じた。
※風間くんが「かすがべ防衛隊」のみんなを一緒の小学校に行きたいという理由でただ単に「エリート」と持ち上げるのではなく、それぞれの個性をシッカリと認識した上で指摘してる部分も好き
- 最後に…
本作は「青春の多様性」という子供向けメッセージと同時に、「しんちゃんと風間くんの友情」という長年のしんちゃんファンに向けたサービスという名の「2人の友情の魅力の本質の確認」という面もあったのかな、と思った。
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