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充への接し方は「解釈違い」もメタ的には…/『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』感想

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大根仁監督作品『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』を観た。

 

  • シリーズ初の3DCGアニメ映画

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本作は『クレヨンしんちゃん』シリーズ初の3DCGアニメ映画化作品。個人的には「『STAND BY ME ドラえもん』同様に毎年恒例の手書きアニメ映画も別に作って公開してくれ〜」と思わなくもなかったが、『モテキ』『バクマン。』『エルピス』などの大根仁監督がアニメの「赤シャツ黄色ズボン」ではなく原作と同じ「黄色シャツ紫ズボン」のデザインで『映画クレヨンしんちゃん』の監督・脚本を務める、となれば楽しみにしない訳にはいかない。予告編の「初期テストフィルム」のモノクロ映像を観た時は本作への期待値は大きく上がった。ただ制作期間7年とあり、敵の名前が「悲理谷充(ひりやみつる)」と一昔前感があることやキャッチコピーの一つが「『この国に未来はない』なんてオトナの妄想だゾ。」であることが、やや不安要素でもあった。

 

以下ネタバレ

 

 

  • 元ネタは原作26巻収録、映画で追加されてるのは…

本作は原作コミックス26巻収録の『しんのすけ・ひまわりのエスパー兄妹』を元ネタにした作品。過去にはテレビアニメ化もされている。「宇宙から二つの光が接近し、白い光はしんちゃんとひまわり、黒い光は人生に行き詰まっている若者に当たり、超能力を得た両者が対決する」「しんちゃんらとの対決を経て若者は再び前を向いて生きようと心変わりする」という大筋のストーリーやメインキャラクターは基本原作と同じ。一方で本作では敵の悲理谷充のバックボーンの掘り下げやスクリーン映えする巨大カンタムロボの登場、そして池袋教授の友人としてヌスットラダマス2世というキャラクターが登場するという違いがある。

 

 

  • しんちゃんの「解釈違い」もメタ的に観ると…

悲理谷充のバックボーンの掘り下げは「今までの人生で色々辛いことがあったんだね…」と同情したし、しんちゃんが玉入れの時に幼稚園時代の充が「自分はやらない」と拒否した際に「じゃあ、オラも見てよ」と一回充の横に座ってから「見てるだけじゃつまらないゾ」と充の玉入れを応援するシーンとかは「しんちゃん優しいな…」と思って見ていたが、中学時代の充がいじめっ子に絡まれた際に「充くんはオラにとって友達じゃなく、えっと、えっと、オラの仲間をいじめるな〜!」とガチ喧嘩に参加し始めた時は「しんちゃんってこんなキャラだっけ?」感はあった。実際パンフレットを読むとしんちゃん役の小林由美子さんも好意的な文脈ではあるが「ところどころいつもとすこし違うしんのすけを感じました」と述べていて「やっぱりいつもと違う感はあったよね〜」と共感した。何というか個人的なしんちゃんのイメージは他者、特に人生に悩んでる青年辺りに対しては真っ正面から助けてる訳でも、救ってる訳でもなく、寧ろ関わってる最中は迷惑過ぎて怒られたりもするけれど、最終的にしんちゃんの意図しない何気ない発言や行動で他者が何かしんちゃんから前向きなメッセージを受け取って「ありがとな坊主」と感謝の気持ちを伝えるもしんちゃんは何を感謝されてるから分かってない、みたいな印象がある。勿論、しんちゃんも風間くんらに対してストレートな優しさを見せることもあるが、それも原作者の臼井義人先生はサラッと描写していたため、今回みたいなのは「ちょっと違うかな」感は否めなかった。シリーズの呪縛としても有名な感動作『オトナ帝国』もケンとチャコの自殺を止めたのはしんちゃんの「(2人だけでバンジージャンプをするなんて)ずるいぞ!」という勘違いの一言というバランス感覚だった。

ただ5歳のしんちゃんと30歳の充は四半世紀分も年齢が離れているが、充の幼稚園時代も今のしんちゃん同様にカンタムロボが好きだった、という描写を踏まえると「長い間『クレヨンしんちゃん』のアニメもその時代、時代の子供たちの隣に居て寄り添っていた」「しんちゃんは永遠の5歳児だけど、視聴者が大人になった後も彼はずっと変わらないまま君のそばにいる」というメタ的な解釈もできる。また本作のメッセージは「人間誰か1人自分を理解してくれる人がいれば大丈夫」的な感じだったが、最後まで失敗続きのヌスットラダマス2世は「池袋教授という理解者がいるから大丈夫」というメッセージ性を強化するために登場したキャラだったのだろう。ただやはりこの手の映画シリーズにはありがちだが「ゲストキャラとしんちゃん達の関係って今回限りだからな…」とか「正直知らない人たちにそんな『頑張れ!』『頑張れ!』言われても…」感も否めないので、個人的には原作くらいのウェットに寄りすぎない着地の方が感動したりもした。大根仁監督は本作で「平成」をやりたかったようだけど、悪い意味で「平成」を感じた。またラストが「頑張れ!」なら、充はこれまで誰からも期待されたことがなくてずっと誰かに「頑張れ!」と言って欲しかった、みたいな掘り下げがあったらもう少し飲み込みやすかったのにな、感もあった。大根仁監督にとって「エモい」が本作のキーワードだったというのにも「ズレ」を感じざるを得なかった。

 

※そもそも原作の連載が始まった頃の時代背景の問題もあるけど、30歳の充に5歳と0歳の子供を持つ35歳のひろしと29歳のみさえが「頑張れ!」「頑張れ!」と無責任に応援している構図結構グロいよね

 

※「充の幼稚園占拠の犯罪は消えないから、そこ辺もモヤつく」という意見もあるが、個人的にも「黒い光でダークサイドが出てしまった結果やってしまった犯罪に関してはラストで超能力で取り消される、みたいな温情措置があっても良かったのでは…」と思った

 

 

  • 最後に…

不満も多くなったが、エンドクレジットは『モテキ』『バクマン。』『エルピス』に続いて原作リスペクトに満ちた最高のエンドロールだったのでメチャクチャテンション上がった。ただ来年の手描きの告知を見て「やっぱりしんちゃんは手描きの方がいいな〜」とも思った。

 

 

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