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【全作一覧】『映画クレヨンしんちゃん』30周年記念「興行収入」レポート、水島努・ムトウユージ両監督編/『ヤキニク』〜『ケツだけ』

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『映画クレヨンしんちゃん』シリーズが今年で30周年なので「興行収入」を軸に振り返る。2回目は水島努及びムトウユージ両監督時代の11〜15作目。

 

  • 振り切ったギャグと感動路線の水島努監督2作品

映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード

しんちゃん映画としての「シリーズ最高傑作」かつ「シリーズ最大の呪縛」となった『オトナ帝国』、しんちゃん映画の臨界点を突破してしまった『戦国大合戦』の後の10年間の作品は監督が基本的に2〜3作品ごとに交代していくというスタイルが取られた。降板した原恵一監督から最初にバトンを受け継いだのは後に『ガルパン』などで知られる水島努監督。そんな『オトナ帝国』『戦国大合戦』に続く11作目は前2作品のある種の大人に向けた感動路線から一転して「焼肉」をテーマにしたジェットコースター的逃亡ドタバタコメディ『嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード』だった。本作の特徴は「野原一家それぞれの劇画タッチ焼肉妄想描写」「みさえのヒッチハイクを見て恐怖を覚えた運転手視点の事故」「裏切りおにぎり」「野原一家朝の会話再現パスワード解除シーン」など全編に渡って放たれるキレッキレのギャグの殴打で、しんちゃん映画のシリーズの自由度と柔軟性を改めて感じさせる作品となった。しんちゃんの自転車チェイス描写など、絵がグリグリ動くのもアニメーションとしての気持ち良さも全開で素晴らしい。興行収入は13.5億円と『戦国大合戦』の14.0億円とほぼ同等の記録。

映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 夕陽のカスカベボーイズ

12作目はシリーズで初めてかすかべ防衛隊をメインに「友情」を描いた西部劇調の『嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』。一軒の古びた廃映画館「カスカベ座」のスクリーンに映し出された映画の中に入ってしまう物語。風間くんがしんのすけの腹をグーパンするキツいシーンもある。興行収入は12.8億円。単体で観ればしんちゃんの叶わぬ恋を描いた切ないラブストーリーとして十分名作かつノスタルジックな作品だが、時系列で振り替えれば、仮に本作が『オトナ帝国』『戦国大合戦』の直後に公開された場合、同じ感動路線でどうしても損な見え方をしてしまった可能性が高いので、一度『焼肉ロード』というギャグ全開の映画を挟んだのはシリーズにとっての英断だったと言える。

 

 

  • 前作ネタ投入のムトウユージ監督時代

映画クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶブリブリ3分ポッキリ大進撃

13〜15作目はムトウユージ監督作品。13作目『伝説を呼ぶ ブリブリ 3分ポッキリ大進撃』は野原一家がヒーローに変身して怪獣を倒すまでのタイムリミットは3分、東京タワー上空に現れる繭など『ウルトラマン』や『モスラ』といった日本のアニメ、特撮キャラクターパロディのオンパレードのヒーロー映画。「3分間」がキーであることからカップラーメンが劇中のシーンに度々登場するのが個人的にお気に入り。また「みさえの朝のルーティンを描く有名なシーン」は本作の描写。ゲスト声優・波田陽区による「13年間ずっと5歳児のままですから 残念!」というメタ発言も印象的。しんちゃん映画のオリジナルキャラクターであるアクション仮面やカンタムロボ、ぶりぶりざえもんが登場するなど豪華な作品でもある。興行収入は13.0億円。

映画クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!

14作目はコンニャクで作られたクローン人間がホンモノの人間と入れ替わるホラーテイスト強めの『伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!』。冒頭の踏切の警報音を巧みに使いながら夜道でクローンに襲われるよしながせんせいに始まり「風間くんかお母さんの生肉を食べるシーン」「ひろしの部下・川口の頭に刺さったモノサシ」「馴染みあるカスガベ市民のクローンの顔がウネウネと変形する」など、とにかく気味の悪いシーンが多いのが特徴。クローンはサンバの踊りに反応して踊り出してしまうというギャグ設定もあるが、陽気な音楽と共に集団が笑顔でサンバを踊りながら迫ってくる様子は恐怖。カセットテープを使ったしんちゃんの「大人マンモス」ギャグやまつざか先生の園児想いの捨て身な行動など見せ場も多い。主題歌を担当した倖田來未をモデルにしたとされる「シンデレラのお友達」こと「ツンデレ」と書かれたジャージを着るヒロイン・ジャッキーも魅力的。クライマックスの踊りシーンもしんちゃん映画に相応しいラストとなっている。興行収入は13.8億円と微増。

 

 

映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌う ケツだけ爆弾!

15作目は「ケツケツケツ、ケツケツケツ、ケツケツケツケツケッツケッツ」「カルリカルリアカルンケッツ」と歌うケツだけ星人の特殊爆弾がシロのお尻にくっついてしまうミュージカル風映画『嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』。しんちゃんたちと爆弾を狙う宇宙監視センタ「UNTI」と美人女性テロ集団「ひなげし歌劇団」との三つ巴を描く。「映画化15周年記念作品」とだけあってゲスト声優も京本政樹、戸田恵子、AKB48と超豪華。物語としては『オトナ帝国』を「ひろしの映画」だとするなら、それの「シロ」バージョンという感じ。本作以降に「みさえ」バージョンと「ひまわり」バージョンの映画も作られるがそれはまた別の話。雨降る夜桜の中をしんちゃんがシロを守るために走る姿と疲れ切ったしんちゃんの姿を見て1人と一匹の思い出を振り返り、決意を固めて自ら出頭するシロの姿は泣ける。しんちゃんの目元を見せずに、ほっぺに流れる水を「雨」とも「汗」とも「涙」とも解釈できる演出の塩梅もしんちゃん映画として良い。興行収入は15.5億円と2作目以来の15億円超えで、当時としてはシリーズ歴代3位のヒットとなった。

ムトウユージ監督作品では「3分ポッキリ」「アミーゴ」と書かれた前作のタイトルの一部を使った看板が次回作の劇中に出る「シリーズ繋がりネタ」を投入していたことと、キャラクターの動きをカメラワーク込みで過剰に見せるアニメーションだからこその魅力的な演出を多用していたのが特徴だったのではないかと思う。

 

 

  • 最後に…

次回は『金矛の勇者』からそれ以降の作品予定。

 

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