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夏休み映画興行収入レポート2023/スタジオジブリ・宮﨑駿監督『君たちはどう生きるか』他10億円突破のヒット作品8本をレビュー

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本年度の夏休み映画の興行収入振り返り。

 

  • 君たちはどう生きるか

君たちはどう生きるか サウンドトラック

この夏1番のヒットは宮﨑駿監督10年ぶりの新作『君たちはどう生きるか』。本作は鈴木敏夫プロデューサーの意向で予告編すら公開せず、宣伝はポスタービジュアル1枚のみと異例の情報統制の中で封切られた。その効果もあってか金曜初日から月曜祝日までのオープニング4日間の興行収入は21.49億円と最終120.2億円の前作『風立ちぬ』の150%超えのロケットスタートを記録。『キネマ旬報』によると東宝はこのスタートをもって最終興行150億円超えを期待していたというが、7週目段階の累計は74.14億円と『風立ちぬ』の7週目段階の累計88億円を下回る推移。伸び悩みの背景には「都心型で地方が弱い」とか「事前情報がなく内容が分からないから子供連れのファミリー層から敬遠されている」などが指摘されている。作品自体の評価が賛否真っ二つに大きく割れており、「なんかよく分からなかった」という意見が目立つこともライト層にとってはネガティヴ要素として捉えられている可能性もある。とは言っても公開前に「10年のブランクがあって宣伝なしだと大コケするのでは」と不安視されていたことを踏まえると、何だかんだで100億円レベルのヒットとなっているのは流石の宮﨑駿監督ブランド。今後の展開も含めてまだまだ注目の作品だ。

 

  • キングダム 運命の炎

映画「キングダム 運命の炎」オリジナル・サウンドトラック

この夏2番目のヒットとなる見込みなのは人気漫画を山﨑賢人主演、佐藤信介監督で実写映画化した人気シリーズの第3弾『キングダム 運命の炎』。本シリーズは2019年公開の1作目が57.3億円、2022年公開の2作目が51.6億円と推移しており、3作目の本作も最終興行50億円を超える見込み。実写邦画で50億円超えのヒットは定期的にあるが、実写邦画の同一シリーズで興行収入が3作連続で50億円を超えているのは2000年以降だと『踊る大捜査線』シリーズと『海猿』シリーズくらいで、あの『るろうに剣心』シリーズですら50億円を超えたのは全5作中1作品のみ。そう考えると実写邦画としては破格の予算を注ぎ込んで製作されている本シリーズが日本映画史の中でも稀に見るヒットの推移を見せているのは非常に喜ばしい話。『週刊文春』によると2〜4作目を同時撮影したみたいなので、早ければ来年の夏には続きが見られるだろう。

 

 

  • ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE

【映画パンフレット】ミッション インポッシブル デッドレコニング 監督 クリストファー・マッカリー 出演 トム・クルーズ、サイモン・ペッグ

この夏3番目のヒットとなる見込みなのはトム・クルーズ主演大ヒットスパイアクション映画シリーズの第7弾『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』。ハリウッドの俳優協会のストライキでトム・クルーズらキャストの来日が中止になるなどの不運もあったが、昨年の『トップガン マーヴェリック』効果もあってかオープニング3日間で興行収入10億円超えの大ヒットスタートを記録。本シリーズは1996年公開1作目が65.0億円、2000年公開2作目が97.0億円、2006年公開3作目は51.5億円、2011年公開4作目が53.8億円、2015年公開5作目が51.4億円、2018年公開6作目が47.2億円と3作目以降は興行収入50億円前後と安定した推移。前作では最終興行50億円を割ったが、本作では50億円突破と回復の見込み。ただ『キネマ旬報』によると配給会社的にはもっと高い数字を見込んでいた、とのこと。

 

  • マイ・エレメント

マイ・エレメント

この夏4番目のヒットが見込まれている作品の一つがディズニー・ピクサー最新作『マイ・エレメント』。ピクサー作品はコロナ禍以降『ソウルフル・ワールド』『あの夏のルカ』『私ときどきレッサーパンダ』と配信限定作品が続き、満を持して劇場公開された『バズ・ライトイヤー』も日米共に大コケ。コロナ禍前のピクサーブランドは何処へやらという感じで日本より一足早く公開された本作の全米興行も興行不振が話題になった同日公開の『ザ・フラッシュ』を下回るオープニングでピクサー史上歴代ワースト2位のスタート。「もうピクサーはダメなのか…」というムードが漂うも、その後アメリカでは珍しく口コミで興行を伸ばして赤字を回避。日本でも好評で、興行収入20億円を超えて最終的には25〜30億円程度のヒットが見込まれている。ピクサーの底力を見せられた気分だ。

 

  • しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜

しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~オリジナル・サウンドトラック

この夏4番目のヒットを『マイ・エレメント』と争っているのが、国民的人気アニメを3DCGアニメ映画化した『しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』。興行収入は既に20億円を超えて、こちらは最終25億円程度見込み。大根仁監督らしい原作リスペクトに溢れるエンドロールは好評も、作品内容に対しては「しんちゃんってこんなキャラじゃなくね?」「時代の変化で野原ひろしという平凡なサラリーマンが勝ち組男性になってしまって、ほぼ同世代の敵役に『頑張れ!』と応援する構図がグロい」などSNSでは物議を醸したが、『映画クレヨンしんちゃん』シリーズとしては2015年公開『オラの引越し物語 サボテン大襲撃』の最終興行22.9億円を抜いてシリーズNo. 1ヒットとなる見通し。ただ制作期間7年というスパンを考えると、『シン・仮面ライダー』同様に「予算的に通常の映画+α程度の興行で大丈夫なの?」と余計な心配をしたくなるが、『STAND BY ME ドラえもん 2』の最終興行も27.8億円なので「まー、大丈夫なのだろう。知らんけど」という気分になる。

 

 

  • インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル (オリジナル・サウンドトラック)

『マイ・エレメント』『しんちゃん』と並んでこの夏4番目のヒット候補なのが、ハリソン・フォード主演の大ヒットアドベンチャー映画の完結編『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』。ディズニー配給になったことで邦題のパターンが変わったことも話題となった。本作の最終見込みは26〜28億円程度。実写洋画としてはヒットではあるが、15年前の2008年に公開された前作『クリスタルスカルの王国』が最終興行57.1億円を記録していたことを踏まえると劇中のインディ同様「老い」を感じざるを得ない。前作が公開された2008年はMCU1作目の『アイアンマン』と『ダークナイト』が公開された年でもあり、こうした背景から「あそこが今の映画界の状況に繋がる一つの転換期だったよね」的な指摘もされている。こうした指摘を踏まえるとアメコミ映画が飽和状態となり衰退の兆しを見せている新たな転換期を迎える中で公開された『インディ・ジョーンズ』シリーズの最新作がこういう結果になったのもある意味当然だったのかもしれない。とは言っても、世代の人たちからは一部では反感も買っているものの基本的には「お疲れ様」と感極まっている様子。トム・クルーズも本作を観て「20年後まで『ミッション:インポッシブル』でアクションを続けたい」と決意を新たにした模様。

 

  • 東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編-決戦-

【Amazon.co.jp限定】映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』オリジナル・サウンドトラック (メガジャケ付)

この夏7番目のヒットが見込まれているのは大ヒットタイムスリップヤンキー漫画を実写映画した人気シリーズの完結編『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 −決戦−』が23億円程度のヒット。本作は完結編2部作の後編で前編の『-運命-』は今年4月に公開されて27億円程度のヒットを記録。8月末の段階で二部作合計49.4億円と50億円に迫る大ヒットを記録しているが、『キネマ旬報』によると関係者は二部作で100億円を狙っていた、との話もあり諸手を上げて喜ぶ感じでもないとか。実際2部作合計の数字が2021年公開の1作目の最終興行45億円とほぼ同等というのも「期待外れ」感を裏付けているような気もする。とは言っても前編に対する後編の鑑賞率が8割を超える高数字を叩き出していることから熱心なファンは未だに多い様子。更なる続編も期待したいところだが、プロデューサーによると売れっ子たちのスケジュールを合わせるのが難しいのだという。

 

  • トランスフォーマー/ビースト覚醒

【映画パンフレット】トランスフォーマー/ビースト覚醒 監督 スティーブン・ケイプル・Jr. 出演 アンソニー・ラモス、

この夏8番目のヒットとなりそうなのが大ヒットSFアクション映画の第6弾『トランスフォーマー/ビースト覚醒』。スピンオフの『バンブルビー』を含めるとシリーズ7作目となる。本シリーズは2007年公開の1作目が40.1億円、2009年公開の2作目が23.2億円、2011年公開の3作目が42.5億円、2014年公開の4作目が29.1億円、2017年公開の5作目が17.5億円で、2019年公開のスピンオフが8.72億円との推移。本作の最終興行は13〜14億円程度が見込まれているため、シリーズの中ではワーストレベルの数字だが、5作目から急激に数字を落としていることから、本作単体の責任という訳ではないだろう。寧ろマイケル・ベイ監督が降板した後にスピンオフで10億円割れした興行を持ち直したという意味では評価されてもいいのかもしれない。余談ではあるが、洋画の日本語吹替主題歌は「作品の世界観と合ってない」と評判が悪いのが常だが、本作の吹替声優を務めた中島健人が所属するSexyZoneによる「Try This One More Time Sky is clear」はテレビアニメのオープニングリスペクトでリアルタイム世代にとっては刺さるものがあるらしく、珍しく評判が良い。

 

 

  • 最後に…

次回は『バービー』『リボルバー・リリー』『SAND LAND』辺りの「ガチコケ」した作品の振り返りをしたいけど、予定は未定。

 

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