スポンサーリンク

【興行収入】期待外れのテレビアニメ版→中山竜監督降板と「総集編」→原作リスペクトの劇場版『チェンソーマン レゼ篇』大ヒット

チェンソーマン レゼ篇 映画パンフレット チラシ付き 監督 吉原達矢 出演 声の出演:戸谷菊之介、井澤詩織、楠木ともり

劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が大ヒット公開中である。

 

  • テレビアニメ版の不評、「コレじゃない感」

チェンソーマン 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

チェンソーマン

『チェンソーマン』は『週刊少年ジャンプ』で連載されていた(現在、第二部が『ジャンプ+』で連載中)、藤本タツキ先生による人気漫画。2022年にテレビアニメ版が放送されており、当初は『鬼滅の刃』『呪術廻戦』に次ぐ「覇権アニメ」になることが期待されていたが、放送中は常にSNSで「チェンソーマン  微妙」がサジェストされるくらいには評判はイマイチで、怒り狂う原作ファンも少なくなかった。この件に関しては放送当時も記事にしたので、再度多くは語らないが、原作コミック1巻の表紙とテレビアニメ版のキービジュアルを比べて貰えば、その理由は一目瞭然だろう。兎にも角にも「コレじゃない感」は半端なく、SNSでの批判は監督の中山竜氏に向かった。

 

 

  • ビジネス的にも期待外れ、中山竜監督降板へ

収支においては完全に成功だったといえる。ただ直近に手がけた『呪術廻戦』と同じようなインパクトが出せているかというと、まだ満足はできていない。

(DVD・ブルーレイ)パッケージがたくさん売れる作品もあれば、配信でたくさん見てもらえる作品もある。パッケージにお金を払うお客さんの層までこの作品が届いたかというと、もっと行きたかったというのが正直なところだ。

『チェンソーマン』の作品性の中で、お金を払ってくれるターゲット層に向けてどうアプローチしていくか、模索していく。

「呪術廻戦」制作会社が挑むアニメ業界の悪習打破 MAPPAが「チェンソーマン」に100%出資した狙い | ゲーム・エンタメ | 東洋経済オンライン

中山竜監督批判の中には度を越したモノもあり、原作未読者の中には「テレビアニメも面白かったよ」の声もある。ただMAPPAの社長はテレビアニメ版は「収支においては完全に成功」としながらも、『呪術廻戦』と比較して売上に不満は残り、「作品性の中でアプローチを模索する」という趣旨の主張をしていた。ここからはテレビアニメ版の不評はノイジーマイノリティだけの暴走ではなく、サイレントマジョリティも同様であり、作品の売上が事前の期待値に及ばなかったことが伝わってくる。

このインタビューからは「テレビアニメ版の反省からの方針転換」が期待された。そして昨年の「ジャンプフェスタ2025」で『レゼ篇』の監督が中山竜氏から𠮷原達矢氏に変更になったことが発表されると、テレビアニメ版に不満を持つファンは公開された予告編のデンジの「これが正解だよなあ」の叫びに「正解!!正解!!正解!!正解!!」と歓喜した。新たに発表されたビジュアルもテレビアニメ版と異なり、原作を意識させるカラーリングに変わった。

 

 

  • 「総集編」で修正、徹底した原作リスペクト

チェンソーマン 総集篇

中山竜監督の降板により、SNSでの『レゼ篇』への期待は一気に上がったが、映画公開前に驚くべきことが起きた。それは劇場版公開に合わせたテレビアニメ版の「総集編」の内容が、テレビアニメ放送当時に不評だった「デンジの1話目の決めゼリフの原作改変」や「未来の悪魔のテンション」などが原作に沿った形で修正されていたからだ。SNSでは「総集編ではなく新訳版、再編集版」「ディレクターズカット版ではなくディレクターカット版」「『チェンソーマン 竜狩編』」と湧いた。この修正からはアニメ制作陣の「前回は期待を裏切ってしまったが、今回は前回の反省を活かして原作の魅力が最大限伝わるように頑張っているので、劇場版も安心して期待して観に来てください」という趣旨のメッセージが伝わってくる。

『レゼ篇』の吉原監督はインタビューで「原作の魅力、藤本先生のコマ割や絵面など原点に立ち返るところからスタート」して、「原作の印象により近づける、寄り添うことが一つの核」と語っており、徹底した原作リスペクト振りを見せている。実際、本編を見ると冒頭から原作漫画風のモノクロタッチから始まり、アニメパートに移行する演出が施されており、「ここから本当の意味で原作漫画のアニメ化が始まります」と宣言しているようだった。また総集編では「いくら調味料を後から足しても元の素材が…」みたいなところも否めなかったが、『レゼ篇』は一から生み出されているので、ドラマパートのエモさ(ここに関しては中山竜監督の「良かったところ」が上手く引き継がれてプラスに働いている面もあった)、アクションパートの見せ方、共に「コレだよ!コレが欲しかったんだよ!コレを最初から出して欲しかったんだよ!」という満足感があった。またアクションシーンのある見せ場では原作コミック1巻のカラーリングを使った演出が施されており、「ここまで原作リスペクトに徹して、こちらが欲してるモノを見せてくれるのか!」と感動した。

 

 

  • 最後に…

そんな『レゼ篇』は世間的にも大好評で、興行収入はオープニングだけで12.51億円を超えて、東宝は「最終興収50億円を狙える好スタート」だと発表している。世評的にもビジネス的にも事前の期待を裏切ったテレビドラマ版の失敗を、徹底した原作リスペクトによって見事に蘇らせることに成功した。一方で過度な中山竜監督イジリに「死体蹴りは良くない」との意見や総集編のクレジットに名前がないことなどから「クリエイターの尊厳問題」を指摘する声もある。実際、自分も色々とネガティブな感情はあるが、それはそれとして「若手をキャリア初の監督として大抜擢しておいて、失敗したら追放」的な扱いは、結果責任がある以上はやむを得ないとはいえ、中々辛いモノはある。

 

  • オマケ

劇場版のラスト、パワーが喫茶店を訪れた辺りからシネスコ画面でなくなってたのが、「映画の終わり、夢の終わり」みたいで切なかった…

 

 

  • 関連記事

mjwr9620.hatenablog.jp

mjwr9620.hatenablog.jp