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「時代を映す鏡」、コロナ禍でより強調/小栗旬主演・日曜劇場『日本沈没-希望のひと-』最終回

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小栗旬主演・日曜劇場『日本沈没-希望のひと-』の最終回が放送された。

 

  • 「時代を映す鏡」、コロナ禍でより強調

別記事にも書いたが小松左京の小説『日本沈没』のように同一作品が繰り返し様々な時代に語り直される作品は、常に製作側が「もし今、日本沈没が起きるならどうなるのか」と過去作を踏まえた上で意識的に時代を考えて作られた作品のため「時代を映す鏡」の側面が他作品より強い。そのため『希望のひと』も「東京一極化」や「SDGs」を意識させるような「関東沈没」や主人公が環境省の代表で総理が環境を重視している設定を筆頭に、森友学園の公文書改竄問題を連想させる「データ改竄」やインターネットの普及によって生じた「転売問題」、「東日本大地震後の心境変化」など「2020年前後の時代」を反映した作品となっている。

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更に本作は脚本段階で新型コロナウイルスのパンデミックが生じたことにより、脚本を調整。「人命と経済の天秤」や「旧来の家族観に基づいた海外への日本人移民システムの限界」などコロナ禍で生じた今の日本の問題をリアルタイムで反映。その上、最終回では感染症の流行によって世界各国が移民入国を停止する展開に発展。昨年放送の『MIU404』の最終回でも似たようなことを書いたが、この展開は平時であれば「唐突かつ盛り過ぎ」と批判を受ける要素なのかもしれない。しかし「コロナ禍」がスタンダードな日常かつ最近地震が多いことから「巨大地震の予兆なのでは…」と内心怯えている日本人も多い2021年放送のドラマであることを踏まえれば、「『日本沈没』という未曾有の事態に『感染症』という同じく未曾有の事態が起きる」という「最悪の事態が重なる展開」を視聴者がある種のリアリティを持って受け入れてしまう今という時代の反映として、盛り込んで良かった要素だと感じる。

またコロナ対策の説明が不十分だと内閣支持率が低迷して事実上退任に追い込まれた菅政権の直後に放送開始と本作のコピーになっている「信じられるリーダーはいるか。」というメインテーマが意識される時期と重なり、コロナ禍によって「時代を映す鏡」としての意味合いがより強調される作品となった。

 

※埋め込みツイートの「前半では」は誤字

※プロデューサー曰く「アフターコロナ」の世界らしいが、そう考えると色々違和感あるから見なかったことにした

※脚本家のインタビューによると感染症の設定はコロナ禍前の構想から盛り込まれていたという

 

 

  • 「日本への想い」と「国土を失う日本人」

ラストシーン「日本沈没―希望のひと―」より(原曲:菅田将暉)[ORIGINAL COVER]

小松左京は『日本沈没』で「日本への想い」や「国土を失う日本人」をテーマにしたとされ、それ故に2006年公開の樋口真嗣監督版『日本沈没』は「日本を失う日本人」ではなく「日本沈没を食い止めようとする日本人」を描いたことが、原作に思い入れのある層からの批判対象となった。一方で今回の『希望のひと』では「日本沈没」を認めず天海らの足を引っ張ってきた『半沢直樹』ヒット以降の『日曜劇場』らしい悪役顔の里城副総裁(多分、麻生さんがモデル)が、実は「日本への想い」から「日本沈没」を認められなかった哀愁漂う役柄に設定することで、「日本人が日本を失うことで再認識する日本への想い」をエモーショナルに演出。

「国土を失った日本人は日本人なのか問題」に対しても、生島自動車会長による「海外に移住した日本人の人生はその先も続いていくが、政府はそれが分かっているのか」、中国元国家主席による「あなた達日本人は中国人になれますか?」という趣旨のセリフによって問題提起した上で、天海らは「ジャパンタウン構想」を提案。現実的かは置いといて「日本への想い」と「国土を失う日本人は日本人なのか問題」に『希望のひと』独自のアンサーを提示したことには好感を覚えた。

 

※里城副総裁が「日本沈没」を認め、沈みゆく日本への想いを語るシーンは地上波放送版では日本各地の様々な風景が映し出される演出が施されていたが、Netflix配信版では想いを語る里城副総裁とそれを聞く天海らの表情が映し出されており、演出に違いがあった

※個人的に作品全体の評価とは別に「国土を失った日本人は日本人なのか問題」のアンサーとしては東京オリンピック開催予定年だったからこそ提示できた『日本沈没2020』のが好き

※個人的に樋口真嗣監督版も普通に好き

 

 

  • 最後に…

最後に「CGがショボい」との批判もあった本作だが、「スカイツリー周辺」や「お台場」の一枚絵的なCGは中々良かったし、ラストの本州沈没シーンもCGは結構ショボかったが、勢いで押してそれが伏線になってたのが面白かった。

 

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