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ノスタルジーかつフレッシュ、カオスと悪趣味が織りなす幸福感、ティム・バートン監督『ビートルジュース ビートルジュース』感想

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ネタバレ注意

ティム・バートン監督『ビートルジュース ビートルジュース』を観た。

 

  • 36年ぶりの続編、アメリカでは大ヒット

ビートルジュース (字幕版)

本作は1988年公開の『ビートルジュース』、36年ぶりの続編。当初はサブスク配信映画の予定だったが、ティム・バートン監督の意向から「製作費を当初予算1.47億ドルから1億ドル未満に抑えること」を条件に劇場公開に踏み切ったという。どうやらワーナー・ブラザースは『アリス・イン・ワンダーランド』以降10年以上メガヒット作品を出せていないティム・バートン監督の興行力に不安を抱いたようだ。しかし結果的にはアメリカではオープニングだけで1.10億ドル超えの大ヒットを記録。前作の根強い人気(前作の興行収入は7400万ドル、インフレ調整すると1.95億ドル以上のヒット)に加えて、Netflixオリジナル『ウェンズデー』の主演であるジュナ・オルテガが出演していることがリアルタイム世代だけでなく若者世代からも支持され、SNSのプロモーションも巧みだったという。

一方で日本での肌感覚としては、そこまで『ビートルジュース』に根強い人気みたいのを感じたりはしない。実際、Wikipediaによると日本での配給収入は4億円ということなので、興行収入に換算すると単純計算2倍で8億円程度とあまりヒットしたという感じでもない。日本でティム・バートン監督作品といえば興行収入53.5億円、地上波のプライムタイムの映画枠で定期的に放送されている『チャーリーとチョコレート工場』が一番国民的な浸透度が高いと思うが、アメリカ視点では『チャリチョコ』が懐かしの旧キャストと若者の人気の新キャストで最高の形で帰ってきた、みたいな感覚に近いのかもしれない。

 

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  • ノスタルジーとフレッシュ、母と娘の物語

そんな本作を一応ライトなティム・バートン監督ファンではあるものの、前作については「まぁ普通に面白かったかな…」くらいのテンションの自分が観に行ったが、凄く面白かったし、とても幸せな時間だった。本作はオープニングの「ミニチュア空撮」など前作のノスタルジーを刺激しながら、前作のヒロイン・リディアのZ世代の娘・アストリッドを加えることでフレッシュな感覚も担保されている。ストーリーの軸は「母と娘の関係性の回復」。「幽霊が見える」ことで商売をしながら、父親の幽霊は「見えない」と説明し、信用に欠けるポエマーな男と再婚しようとする母親に不信感を持つアストリッドが祖父(アニメによる死亡説明最高)の葬式のために訪れた街の男の子に初恋をするシーンはピュアでエモいし、その男の子が実は20年以上前に両親を殺して逃亡中に転落死した幽霊で「娘も母親と同じ能力を持っていた!」と判明するシーンはベタながら「そう来たか!」という高揚感があった。

 

 

  • 1シーン、1シーンの幸福感

ただ本作の魅力はそうした「ストーリー」云々ではなく「1シーン、1シーンの幸福感」。例えば予告編で宣伝されている「ビートルジュースの元嫁が復活!?」みたいのはプロット的にはなくても特に問題ない訳だが、それでもバラバラの箱に詰められていた彼女が自身の身体をホチキスで止めて修復していくシーンはとにかく魅惑的。そうした魅惑的なシーンの詰め合わせの中でも白眉はやはり赤いドレスに包まれたリディアとビートルジュースの結婚式のシーン。名曲と共にビートルジュースに操られて踊らされるシーンのカオスさに加えて、テンションの異なるウィレム・デフォー演じる俳優が警察として突入するシーンまでカットバックされるため、どんどんヤバい方向に収集が付かなくなっていく終末感が堪らない。ラストのリディアが見る娘がベイビー・ビートルジュースを出産する悪夢やリディアの母親が毒蛇がアッサリ死んで尚且つ上半身を失っている夫に対して首筋の噛み傷をみせながら「こんなに酷い傷が出来た」と訴えるシーン、インフルエンサーがスマホの中に閉じ込められるシーンやエンドロールのBOBへの追悼など、とにかく「悪趣味」さが詰まっているのも最高だった。

 

 

  • 最後に…

そんなこんなで個人的には今年ベスト級の大絶賛で是非『ビートルジュース ビートルジュース ビートルジュース』も作って欲しい訳だが、ティム・バートン監督は消極的な姿勢。最後にティム・バートン監督作品の家族観の視点で作品を見ると『ウェンズデー』に続いて「親の子への愛は本物」というテイスト。初期は「子が親に捨てられる恐怖」を強調した反面、中期は「親と子の和解」の傾向が強くなり、現在は「親の愛は本物」路線だが、やはり年齢的に子の視点から親の視点に移った、ということなのだろうか…

 

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