三谷幸喜監督最新作『スオミの話をしよう』の興行収入が伸び悩んでいる。
- 東宝、公開初日に「30億円狙えるスタート」
配給の東宝によれば、初日の動員と週末の予約状況から興行収入30億円を狙えるスタートになったと発表。三谷監督は、「これは凄いこと。この作品はオリジナルです。ベストセラーの映画化やテレビドラマのスピンオフでもなければ、アニメでもない。オリジナルが力を持つことで、日本映画を底上げしていくんです」と力説し、胸を張った
東宝は公開初日に「興行収入30億円を狙えるスタート」と発表しており、三谷幸喜監督もこの発表を受けて「オリジナルが力を持つことで、日本映画を底上げしていく」と胸を張って力説していたという。実際、昨年度の日本映画で興行収入30億円を超えたのは『THE FIRST SLAM DUNK』『名探偵コナン 黒鉄の魚影』『君たちはどう生きるか』『ゴジラ-1.0』『キングダム 運命の炎』『ミステリと言う勿れ』『劇場版「TOKYO MER~走る緊急救命室~」』『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』と実写邦画のオリジナル作品(『ゴジラ−1.0』は人気IPの新作扱い)はゼロ。当然「オリジナルだから偉い」とか「実写はアニメより上」とかそういう話ではないが、オリジナルの実写邦画に元気がないからこそ、三谷幸喜監督の言いたいことは分からないでもない。現に「日本も海外も原作付きか人気IPの新作ばかりで、儲かるかどうか分からないオリジナル作品は全然作られない」と愚痴を溢す映画ファンも少なくない。何となくそういう愚痴を溢すタイプの映画ファンは三谷幸喜監督作品をそんなに高く評価はしていないような気もするが、それはそれはとして商業作品になると山崎貴監督レベルのヒットメーカーでもオリジナル作品には中々手を出せない日本映画界で、「人気監督がオリジナルでヒットを飛ばす」が当たり前になれば確かに日本映画の底上げに繋がるのかもしれないし、三谷幸喜監督作品を製作するフジテレビムービーに関しては是枝裕之監督作品を「国内でメジャー化」かつ「世界で評価」を現に両立させることに成功したりもしている。
- 大ヒットスタートも2週目以降失速
三谷幸喜「スオミの話をしよう」が初登場V!【国内映画ランキング】 : 映画ニュース - 映画.com
— ゴミ雑草 (@mjwr9620) 2024年9月17日
→ 公開4日間の累計成績では、動員43万1000人、興収5億9700万円
最終36.4億円の前作『記憶にございません!』のオープニング4日間(5年前の同時期に公開)は8.19億円 https://t.co/Vyq9hfbkfg
そんなこんなで実写邦画のオリジナル作品の大ヒットはめでたいことであるのだが、肝心の本作の興行収入がオープニング興行こそ4日間で5.97億円の大ヒットスタートを切ったものの、2週目末の累計で11億円、3週目末の累計で13億円とかなり伸び悩んでおり、このペースだと最終20億円すら怪しいレベル。前作『記憶にございません!』の最終36.4億円には遥かに劣る成績に終わる可能性が高いし、監督作3作目以降『THE 有頂天ホテル』(最終60.8億円)、『ザ・マジックアワー』(最終39.2億円)、『ステキな金縛り』(最終42.8億円)、『清洲会議』(最終29.6億円)と高い評価とアベレージを保ち続けていた中で唯一酷評された『ギャラクシー街道』(最終13.2億円)に次ぐ惨敗となる見込み。同じ長澤まさみ七変化系の映画『コンフィデンスマンJP』シリーズ(1作目が最終29.7億円、2作目が最終38.4億円、3作目が最終28.9億円)と比べても分が悪い。何より最初から三谷作品にしては渋めのスタートだった『ギャラクシー街道』と異なり、オープニング興行ではそれなりの成績を出していた本作が見るからに失速してしまっているのが中々辛い。
- 低評価レビュー影響か
初登場1位獲得も「三谷幸喜5年ぶりの新作」寄せられる低評価…怪作「ギャラクシー街道」を思い出す声もhttps://t.co/tcyLkkvHpY#デイリー新潮
— デイリー新潮 (@dailyshincho) 2024年9月23日
本作の伸び悩みの要因としてはシンプルに「低評価の口コミ」が指摘されている。実際、Yahoo!映画、映画.com共にレビューの平均点は記事執筆段階で2.8点とかなり厳し目。主観になるが、SNSでタイトルを検索した際に表示される感想もネガティヴな内容が多い印象を受ける。更にこうした低評価をネタにしたネットニュースが配信されたこともあり、「三谷幸喜監督の最新作が公開されているみたいだけど、どうしようかな〜」くらいの客層を足踏みさせてしまった面はあるのかもしれない。ただ一応擁護しておくと、Yahoo!映画では星5に17%、星4に18%、星3に19%と平均点が3点を下回っている反面、星3以上の評価を下しているレビューは全体の54%と半分を超えている。更にFilmarksでの平均点は3.4点とそこまで悪くない。そのため三谷幸喜監督作品に元々好意的な人なら、それなりに楽しめる可能性も高いのかな、とは思う。ちなみに自分は三谷ワールドが好きなので結構楽しめたけど、「舞台的な映画」の是非は個人の好き嫌いの問題にしても、脚本的に「想像の上を全然行ってくれなくて期待外れ」と思う人の気持ちも分からないでもない、みたいな感じだった。
- 最後に…
三谷幸喜監督、一昨年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は大絶賛で今年は『古畑任三郎』放送30周年の再放送もあり、「やっぱり三谷幸喜は面白い!」みたいな再評価ムードもあったが、今回はちょっと滑ってしまった感もあった。昔から多くの人が指摘していることだけど、やはり自由度の高い映画よりも舞台やテレビドラマのように制限が多い作品の方が輝くタイプなのだろうか… とは言っても、劇場は声を出して笑っているグループ客もいたし、個人的にも普通に面白く観たので、『ギャラクシー街道』レベルの酷さとかでは全然ないとは思う。
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