フジテレビで三谷幸喜脚本ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう(略して『もしがく』)』の放送が開始された。
- 評判が散々だった初回放送
本作は1984年の渋谷を舞台に、三谷幸喜の半自伝的要素を含んだ架空の街「八分坂」で起こる青春群像劇を描いた作品。放送前から豪華キャストと当時の渋谷を再現したオープンセット、フジテレビで25年ぶりに三谷幸喜脚本の連続ドラマが放送されることから大きな注目を集めていた。しかし紹介放送後のSNSでは本作の作品タイトルや三谷幸喜の名前と共に「面白くない」「つまらない」「離脱」などの文字がサジェストされ、ネガティヴなネット記事も複数配信された。
- 2話目からの持ち直し
本作は2話目まで観ると1984年の渋谷を舞台にうだつの上がらない若者たちと風営法が改正されて時代から取り残されようとしているストリップ劇場の夫婦とストリッパーたちが、主人公の掛け声によってシェークスピアの舞台劇の上演に向けて一念発起する物語だと作品全体の方向性が示される。しかし初回に限れば作品の向かう方向が示されないまま次々と豪華キャストが現れては消えていくを繰り返すので、「これ面白いのか?」と戸惑う人が多かったのも理解出来る。実際、SNSでは「初回は登場人物紹介に終始していたけど、2話目まで観たら各キャラクターの性格も見え始めて面白かった」との声も少なくない。
- 三谷幸喜の釈明
三谷幸喜「この物語の本当の主役は『運命』だ/(初回の)全ての出来事が、久部がステージのリカに照明を当てるためにあった/こうした不思議な巡り合わせこそが、僕の描きたかったもの。それが登場人物の紹介にしか映らなかったのであれば、僕の技量のなさのせい」#もしがく https://t.co/bkidAZNFyQ
— ゴミ雑草 (@mjwr9620) 2025年10月9日
こうした批判に対して三谷幸喜は朝日新聞の連載「三谷幸喜のありふれた生活」で初回の評判が悪かったことについて「この物語の本当の主役は『運命』だ」とした上で、「(初回の)全ての出来事が、久部がステージのリカに照明を当てるためにあった」「こうした不思議な巡り合わせこそが、僕の描きたかったもの」と初回の脚本の意図を解説し、「それが登場人物の紹介にしか映らなかったのであれば、僕の技量のなさのせい」と釈明した。確かにそういう風な説明を受ければ「主人公が引いた白紙のおみくじを神社の木の枝に結んだことによって、ストリップダンサーと照明が駆け落ちの決意を固め、それで空いてしまった穴を埋めるためにリカは代打でステージに上がり、他にも色々な運命的な条件に導かれた末に主人公が彼女にスポットライトを当てるラスト」という見え方もしなくもない。ただ正直そこまで一つ一つのエピソードが有機的な繋がり方をしているように見えなかったので、あまり「運命に導かれたラスト」という感じもせず、「三谷マジック」は不発に思えた。
- 最後に…
とは言っても、初回で「?」だった人の中にも2話目からは「これから面白くなりそう」との期待のある本作。最終回を観た後に「最後まで見続けて良かった」と思える作品であることを願う。
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