「ダンケルク」公開時に来日してくれたクリストファーノーラン監督。その時日本のヒットメーカーである山崎貴監督と対談をした時「永遠の0」を観たと語っていた。ノーランは「ダンケルク」でCGを使わず本物にこだわる撮影をした。それに対して山崎貴監督はVFX出身のバリバリのCG使いだ。今回はノーランは果たして「永遠の0」をどう観たのか推測したい。
ノーランと山崎貴の共通点
本題に入る前にノーランと山崎貴の共通点を考えよう。以前、ライムスター宇多丸が、この2人の共通点として「俺の考えた〇〇」のアプローチで作品を作る監督だと発言していた。これはとても的を得ているだろう。宇多丸さんがこの発言をした時は2014年の年末でノーランは「インターステラー」を公開中で、山崎貴は「寄生獣」を公開中の時だった。さらに山崎貴は同じ年の夏に「STAND BY ME ドラえもん」を大ヒットさせた年でもあった。宇多丸さんは「寄生獣」の映画評はしなかったが、「インターステラー」評の時「俺の考えた2001年宇宙の旅」と作品を評した。また、「STAND BY ME ドラえもん」評の時は山崎貴監督のデビュー作「ジュブナイル」と踏まえた上で「俺の考えたドラえもん」と「俺の考えたSTAND BY ME 」を合体させた作品と評した。
つまり両監督とも過去の古典作品を自分流にアレンジするのが上手い監督だということだ。現に両監督とも自身が影響を受けた作品を堂々と公表している監督だということがこの共通点を裏付けている。また山崎監督は「ダンケルク」の感想で本物の戦場にタイムトラベルしたかのような体験が出来ると語った。しかし山崎貴監督も「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズで観客を昭和時代にタイムトラベルさせた監督だ。2人の映画には普段は体験できないことを体験させてくれる映画を作っている共通点もあると考えられる。
ノーランの「永遠の0」の評価は?
ノーランは「永遠の0」のことを「(予算面での)限界があるなかでものすごいものを作っていらっしゃっていて素晴らしい。」と称賛した。また、この対談後に山崎貴はTwitterで舞台裏でしっかりと映画の話もして盛り上がったと語っていた。ここから導けるのはノーランが「永遠の0」の技術の工夫を認めたのは本当だろう。対談中にノーランは「ダンケルク」では、書き割りというフェンスを人の形に切って、ペンキで塗って切った物を置いたりして撮影したと語った。これによりCGに頼らず、安く撮影できるメリットがあると山崎貴に説いていた。また、ノーランは空撮シーンで実際に戦闘機を飛ばして撮影したが、本物にこだわるあまり映画内に3機しか戦闘機を出せないデメリットが生じた。これをノーランは映画に緊迫感を持たせることで違和感がない画面を成立させている。実は「永遠の0」も同じように工夫をして空撮を実現させた映画だ。「永遠の0」では21型零戦の実機を1機しか作らず、零戦の左右で塗装を塗り分けて節約して2機の違う零戦にみえるようにして撮影したという。
ここから山崎貴監督がただCGだけに頼っている監督ではなく出来るだけ実写で撮れるところは実写で撮ろうとする熱意がノーランに伝わったのではないか?日本というハリウッドに比べて圧倒的に少ない製作費の中、創意工夫を凝らして映画を作っている監督がいることを知り嬉しかったのではないだろうか?他にも「永遠の0」では、空母「赤城」も実物の模型を作り海に浮かべたかったが、予算の関係で1番上の階だけをCGで描き途中までを実物の模型を作ったり、真珠湾に爆弾が落ちるシーンでもマイケルベイ監督の「パール・ハーバー」とは逆の真下から撮ることで新しい迫力のある映像を作ることを心掛けたという。この製作エピソードはノーランからすれば同じクリエーターとしてとても興味深く面白かったと考えられる。その点を踏まえれば「永遠の0」をお世辞だけで褒めたわけでは無いのは確実だろう。
最後に
実際ノーランが「永遠の0」を技術面(少ない予算の中での創意工夫の面)を除いてどう評価したかは正直分からない…
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