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「花のち晴れ」を読んで思った遅れて来た世代の物語のリアルな在り方

花のち晴れ ~花男 Next Season~ 1 (ジャンプコミックス)

[注意]「花のち晴れ」の軽いネタバレあり

「ジャンプ+」で連載中の「花のち晴れ」が遂に「花より男子」の呪縛から逃れようとしている…

 

「花のち晴れ」とは!?

花より男子(だんご) (1) (マーガレットコミックス (2028))

神尾葉子の代表作花より男子の続編。

本作の主人公・神楽木晴は「花男」の主人公・道明寺司に憧れる男子高校生。

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<出典:「花より男子」「花のち晴れ」/神尾葉子/集英社>

道明寺への憧れの証として、「F4」をリスペクトした「コレクト5」を結成して学園の品位を守ろうとしていた。その後色々あって道明寺と同じくその学園の中ではワーストレベルの貧乏人に恋をするんだけど…

  

 

道明寺司の殻を打ち破る神楽木晴!

人生に悩みがある時、人は憧れの人や尊敬する人ならどうするのかを考えて出来るだけトレースしようとする事がある。神楽木晴もその悩める子羊達の1人だ。しかし彼は気付く。「道明寺司だったらどうする?」ではなく、「神楽木晴だったら?」と自分に問わなくては意味がないとう事に…

正直最近の漫画や映画の人気シリーズの続編みたいのって過去の栄光に浸っている感もあって色々思うところがあった。けど、絶対的な存在であり勝つ事が不可能に思える程社会的評価を得た前作の続編に敢えてトライする事は続編の主人公の立ち位置と類似する。

多くの人は「花のち晴れ」に「花男」の似たようなテイストのモノを求める。そして「花晴れ」の主人公・神楽木晴は道明寺司には敵わない。ただ主人公が道明寺司(過去の存在)をマネるだけではいけないと気付く主人公の姿からは何故か勇気を貰える

今までも憧れのスターに成りたくても成れなかった主人公は多く描かれてきた。ただその主人公はその物語の中では絶対的な主人公であり、そのあこがれのスターはその物語の中だけにその主人公の成長を描くために存在するキャラクターのため、読者は主人公に感情移入して彼だけの個性や魅力をしっかりと捉えてくれる。ただ「花男」の道明寺は長い年月多くの読者に愛されたキャラクターであり、その後登場した神楽木晴は初登場時から二番煎じ感に溢れている。そして前作の絶対的な魅力を持った主人公に憧れを抱いている。つまり彼は主人公でありながら真の意味では初めから主人公になり得ないキャラクターなのだ。そしてそれは漫画に憧れ漫画の主人公達を憧れてマネる読者のポジションに一番近い存在でもある。ただいつの時代の若者もその時は何者でもない遅れて来た世代であり、何かの憧れを追う事しか始めは出来ない。

思えば「スター・ウォーズ」の新シリーズの敵キャラであるカイロ・レンもダースベイダーに憧れ、その影を追う存在だった。しかし「最後のジェダイ」ではその仮面を自ら割りダースベイダーの真似事で終わらない自分の存在を確立する姿が描かれた。この前作と続編の現実での最初から期待されない立ち位置が物語内のメタ的なテーマになっているのは改めて面白く感じる。

   

 

二世はつらいよ

BORUTO―ボルト― 1 ―NARUTO NEXT GENERATIONS― (ジャンプコミックス)

MAJOR 2nd(メジャーセカンド) 1 (1) (少年サンデーコミックス)

世代という括りでも遅れて来た自覚は辛いのに、二世となるとそのコンプレックスは計り知れないだろう。また憧れや尊敬の対象がリアルに血が繋がった親になるのも辛い。最近キムタクと工藤静香の娘がモデルデビューしたが、二世というだけでバッシングされるケースも少なくない。二世主人公である「BORUTO」や「MAJOR 2nd」にはその辺りの描写に期待。

しかし漫画でも現実でも二世が主人公になると、それだけでネガティブなイメージを持たれるから困ったモノだ。気持ちは分かるけど…

   

 

最後に…

安易な続編と思われた作品も、もしかしたら遅れて来た世代のコンプレックスをリアルに描き出す意味では優れているのかもしれない。