和月伸宏先生の大ヒット漫画『るろうに剣心』の「北海道編」が開幕するまでとコミックスが発売されるまでの紆余曲折とは…
- 幻となっていた北海道編
『るろうに剣心』は1994年から1999年までの5年間『週刊少年ジャンプ』で連載されコミックス累計発行部数は6000万部を超え、テレビアニメ化や実写映画化などメディアミックスも大成功した大ヒット作品だ。またジャンプの歴史という目線では『ドラゴンボール』の連載が終了し『ONE PIECE』が連載開始するまでの『週刊少年マガジン』に発行部数が抜かれ暗黒期と言われていた時代に看板を背負った漫画でもある。
そんな本作には長年『北海道編』の話が存在した。これは原作者の和月伸宏先生が本作の最終章である『人誅編』の後も連載を続けるなら北海道を舞台とした物語を描こうと構想していたという話である。物語は剣心たちの仲間に宗次郎が加わり、さらに不二や安慈、永倉新八も登場する西部劇テイストの話になる予定だったという。しかし和月先生は「剣心のドラマは人誅編で既に終わっているから」と考え『北海道編』が描かれる事はなく物語は『人誅編』で幕を閉じた。またその時に担当編集と「『るろうに剣心』は二度と描かない」と約束してしまった為、『北海道編』が表舞台に出る機会は失われてしまった。
個人的には剣心のドラマとして『人誅編』で物語を完結させた選択肢は作品の質を考えれば正しい選択肢だったように思える。その反面で『京都編』のラストで宗次郎が北海道へ行くという事を暗示させるコマがある事から和月先生が『北海道編』を本気で想定していたという事も伺える為、ファン心理としては「あそこで終わって正解だったけど、読んでみたかった…」という複雑な心境の人も多かっただろう。
- 実写映画化のタイミングで復活も…
二度と『るろうに剣心』は描かないと約束した和月先生だったが、2012年に佐藤健主演の実写映画版が公開されるタイミングで、当時の担当編集から「実写映画が決まったのだから、もう一度『るろうに剣心』を描いてもいいのではないか」と提案され和月先生は再び本作を描く事を決める。ただその時の連載は『北海道編』を描くという案はあったが、「本編の後の剣心の話はこれ以上描きようがない」「続編としては有りだが、剣心の話ではない」との理由で没になり本編連載開始前に作者が想定していた「30週で連載終了した場合」のストーリーが基になったセルフリメイク版のような作品に過ぎなかった。
- 念願の『北海道編』開幕も…
しかし2016年12月号と1月号の『ジャンプSQ』に前後編で『-るろうに剣心・異聞- 明日郎 前科アリ』という『京都編』から5年後を描く読み切りが掲載される。そしてその読み切りのラストページで『るろうに剣心・異聞 改め るろうに剣心・北海道編 序幕 明日郎 前科アリ』と作品タイトルが改めて表記され、『北海道編』の序幕であることが明かされた。つまりファン待望の『北海道編』の開幕が発表された瞬間だった。
その後2016年10月号より新連載として『北海道編』は無事幕を開けたように思えた。しかしその数ヶ月後多くのファンは信じられない報道を目にする。それは「『るろ剣』作者・和月伸宏 女児動画所持で書類送検」という色々な意味でアウトな案件。更に和月先生は容疑を認めるだけではなく「小学校高学年から中学２年生くらいまでの女の子が好き」とわざわざ自身の性癖を細かく供述する真面目さを発揮。確かに和月先生は『るろ剣』のコミックスのおまけページで自身の影響の受けた作品やモチーフにした作品を事細かく紹介して関係者から苦い顔をされた逸話を持つが、この時も関係者は「そこまで詳しく供述しなくて良いよ…」と苦い顔をしていた事だろう。何はともあれこの書類送検で長年待ち焦がれた『北海道編』は休載となり、又もやファンは再開するかも不明な状況で待ち続ける日々が始まってしまったのだった… その後和月先生は児童買春・ポルノ禁止法違反の罪で略式起訴され罰金20万円の刑となった。一方で連載打ち切りは免れ、無事連載再開。コミックス発売まで漕ぎ着けた事を心から嬉しく思う。
『北海道編』の内容については後日公開予定！
