『カイジ24億脱出編』の第6巻を読んだ。
実家に保険証を取りに帰ったカイジは母親にこれまでのことを報告。ただし、「エスポワールに乗って…」とか「鉄骨渡りで…」とか「Eカードで耳と指を…」とか「地下労働施設で…」とか「パチンコ沼で…」とか、そういう話をするわけにはいかない。だからオブラートに包んで、これまでのことを報告。「地下労働施設」のことは「ブラック企業」と称して、酷い目にあってきたなどと説明。カイジの母親が天然なこともあり、その会話パート自体は面白い。面白いのだが…
「一体『カイジ』はどこへ向かっているのだろう?」と感じずにはいられない。そもそも『24億脱出編』自体、どうしてカイジが逃げるのかも、どうして帝愛がカイジを追ってるのかもイマイチピンとこない。そのモヤモヤを呑み込んだとしても、最初に自分が『カイジ』という作品に感じた魅力は既に今の『カイジ』にはない。
どこへ行ってしまったのだろうか?あの初期のピリピリとした空気は?「勝たなきゃゴミだ」「悔しい、悔しい、だがこれでいい」「負けた時こそ前を見ろ」、数々の台詞が胸に突き刺さった、あの頃の『カイジ』はもうない。あるのはスピンオフ漫画『トネガワ』や『ハンチョウ』のようなコメディ展開のみ。
別につまらなくはない。というより、普通に面白い。ただ「あの頃の魅力はなくなってしまった…」。ただそれだけの話だ。それとも『24億脱出編』が終わった後は、あの頃のヒリヒリとした緊張感溢れる作品に戻るのだろうか?今はただ信じて待つしかない。