パラレルワールドの東京オリンピック開幕前が楽しめる『劇場版名探偵コナン　緋色の弾丸』

2021年4月16日 (金)に公開された『名探偵コナン　緋色の弾丸』はある種の人にとっては理想とも言えるパラレルワールドの東京オリンピック開幕前が楽しめる作品だ。

「WGS」と「超真空伝導リニア」という軸

本作は青山剛昌の人気コミックをアニメ化した大ヒットシリーズの劇場版24作目。4年に1度開かれる世界最大のスポーツの祭典「WSG -ワールド・スポーツ・ゲームス-」の東京開催と、世界初の「真空超伝導リニア」の開発という2つのキーワードを軸に、前代未聞の事件に挑む江戸川コナンの活躍を描いた作品。そのキーワードの一つとなる「WSG -ワールド・スポーツ・ゲームス-」の東京開催は2020年に開催予定だった「東京オリンピック」をモデルにしていることは言うまでもないが、劇中では当然新型コロナウイルスによるパンデミックは起きていない。そして、もう一つのキーワードとなっている東京から名古屋間を走る「真空超伝達リニア」は東京オリンピック開催前の開業前倒しを求める声が上がるも物理的に困難という認識が示された東京から大阪を走る「中央リニア新幹線」を連想させる。この経緯を踏まえると日本は本当に1964年の東京オリンピック開催と新幹線の開通を再現したかったのだな、とやや呆れさせる。

競技場のデザインと主題歌は…

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また劇中に登場する競技場は森元会長に「生牡蠣がドロッと垂れたみたい」と酷評され、後に安倍前総理により建設費の高さを理由に白紙撤回を発表された「ザハ・ハディド案」を連想させるデザインとなっている。更に主題歌『永遠の不在証明』は当初東京オリンピック・パラリンピック開閉会式の演出チームのメンバーだった椎名林檎を中心とするロックバンド『東京事変』が担当。そのため本作は製作陣の意図と新型コロナによるパンデミックの偶然が合わさった結果、ある種の人にとっては「理想」を詰め込んだとも言えるパラレルワールドの東京オリンピック開幕前のワクワク感を楽しめる作品となっている。