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【キャラ弁/放任主義/お姉ちゃんのお金】新海誠監督最新作『すずめの戸締まり』の環さんが鈴芽に対して放った本音と愛が重い理由

映画チラシ『すずめの戸締まり』別バージョン+おまけ最新映画チラシ1枚

ネタバレ注意

新海誠監督最新作『すずめの戸締まり』の鈴芽と環さんの話。

 

  • 鈴芽と環さんのキャラ弁

本作の主人公・鈴芽は12年前の東日本大震災で母親を亡くしたことで、叔母である環さんに育てられている女子高生。そんな鈴芽は環さんに対して「環さんは自分のせいで彼氏とか作れなかったんじゃないか、もしかしたら自分が環さんの大事な時間を奪っちゃったんじゃないか」と薄っすらと罪悪感を覚えている。一方で環さんが作る学校のお弁当は毎日「キャラ弁」と「愛」を重く感じてる。実際、高校生にもなって「キャラ弁」は結構恥ずかしい。また「環さんの大事な時間を〜」というセリフからは「自分のためにあまり時間を割いて欲しくない」みたいな気持ちもあったのかもしれない。だから映画冒頭の環さんの「今日はお弁当忘れんでね」というセリフと友人からの「キャラ弁」イジリへの鈴芽の微妙な反応からは、鈴芽がワザと環さんのお弁当を忘れたのではないか、とすら思えた。

 

※小説版を確認すると「わざとじゃないけれど、お弁当持たない日はほんの少しだけ解放感がある」との鈴芽の心情説明がある

 

※妄想だけど、環さんは「震災で母親を亡くして心を閉ざしてしまった鈴芽が自分の作ったキャラ弁で久々に笑ってくれたから」くらいのエピソードは持ってそう

 

 

  • 「重い」一方で「放任主義」

鈴芽は環さんの「愛」を「重い」と表現する一方で「放任主義」という表現も使う。一見正反対の認識な上に、後者はその場凌ぎの誤魔化しとも捉えられる使い方だったので、スルーしてもいいのだが、個人的には「放任主義」という認識もまた「重い」と同様に本当だったんじゃないか、と感じる。多分環さんは震災の後、鈴芽のことを精一杯育てた。それは「キャラ弁」だけでなく朝食のメニューや地震が起きた後に直ぐに家に帰ってきた様子、LINEの長文や既読のスピードなどから確認できる。しかし両者の関係は「親子」ではなく「叔母さん」と「姪っ子」の関係に留まっていた。しかも鈴芽は母親を亡くしていたことから、環さんは「どうしても気を使うよ」とも発言していた。だから環さんは鈴芽の行動に必要以上に干渉しない一方で「姪っ子」に対する「お客さま対応」を続けていたことが、鈴芽にとっては「重い」のに「放任主義」という認識になったのではないか、と感じた。

 

 

  • 環さんの本音と鈴芽への愛が重い理由

本作で個人的に一番印象深かったのが駐車場での鈴芽への環さんの本音。12年前、つまり28歳の時に東日本大震災で姉を亡くしてから、姉の子供を引き取り育ってていた環さんは鈴芽に「あんたが来てから忙しくなって、余裕がなくなった」「こぶ付きじゃ婚活も上手くいかない」「私の人生返して!」と叫ぶ。その際の「お姉ちゃんのお金があったって全然割に合わない」というセリフからは精神的に辛くなった時に「お姉ちゃんのお金もあるから…」と気持ちにバランスを取った日もあったのではないか、という生々しさを感じさせる。きっとこの12年間、「お姉ちゃんが生きていてくれたら…」と同時に「いけない」と分かりつつも「鈴芽も一緒に…」くらいのことを思ったこともあったはずだ。だからあの一連のセリフはサダイジンとか関係なく、全部本音(「うちの子になりんさい」を「覚えてない」は勢いで言っただけで本当は覚えていたと思うけど…)だったんだと感じる。でもその後に自転車で二人乗りしている時の鈴芽への「それだけじゃないよ」もまた本音なんだとも思う。そうじゃなきゃ、態々宮崎から東京まで追いかけて、宮城までついていかない。そして環さんが必要以上に鈴芽に重かったのは、鈴芽が被災して母親を亡くして「生きるか死ぬかは運次第、死ぬのは怖くない」という価値観になったのとは逆で、震災で姉を失って「もう誰も失いたくない」という気持ちが強くなったから、なのだとも思った。

 

※「うちの子になりんさい」を環さんに「覚えてない」と言われてショックを受ける鈴芽からは、その言葉にこの12年間強く支えられていたことを感じさせる

 

※小説版では鈴芽が環さんの誕生会でハッピーバースデーを歌うと毎年必ず泣く、みたいなエピソードも紹介されている

 

※本編観た後に冒頭12分の映像を見返すと、環さんの「鈴芽、今夜遅なるわ」に対する鈴芽の「えっ!?環さんデート!?いいよ、いいよ、ごゆっくり」の緊張感が凄い 

 

 

  • 最後に…

youtu.be

鈴芽の子守りパートで「環さんも私の子育て大変だったのかな…」みたいのがあっても良かったのかな、とは感じた。最後に深津絵里が新海誠監督に初めて会った時に特別に聴かせて貰ったというRADWIMPSの環さんのインスパイアソング、冒頭から泣ける。

 

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