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【アオサギが見えた】宮﨑駿監督『君たちはどう生きるか』で眞人の母親の妹かつ新しい母親・ナツコが塔の下の世界に迷い込んだ背景

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宮﨑駿監督『君たちはどう生きるか』が大ヒット公開中だ。

 

本作は火事で亡くなった主人公・眞人の母親の代わりに彼の新しい母親となった妹のナツコが塔の下の世界に迷い込んでしまい、それを救いに行く物語。眞人に関しては「火事で亡くした母親への喪失感」や「新しい母親を受け入れ切れない」など主人公だけあって彼があの世界に迷い込んでしまう背景が描かれていたが、ナツコに関しては「そういえばナツコって結局どんなキャラだったんだろう」とややボンヤリした印象も拭えなかった。また塔の下の世界で眞人が会いに行った際に「あなたなんて大嫌い!」と感情をむき出しにするシーンでは「えっ?急に!?」と驚いた人も少なくないようだ。

 

 

ただ普通に考えればお腹に赤ちゃんがいてつわりも酷く、初出産故に不安やストレスも大きい中、自分の子供になった眞人は自分に全然懐いてくれず、「はい」「わかりました」「ごちそうさまでした」「おやすみなさい」と他人行儀の対応。それでいて頭に大怪我をして帰ってくる始末で心配が絶えない。夫もあの時代でアレが普通なのだろうが、仕事ばかりで全然構ってくれず、尚且つそもそも「姉の代わり」感もある。

 

 

更にいえば塔の下の世界で眞人は自身の母親かつナツコの姉であるヒミに「自分の母親も亡くなった」と説明されていたことから、ナツコも子供時代に母親を亡くしている。その上、ヒミは塔の下の世界に1年間迷い込んでいることから、母親の死亡時期とのタイムラグは不明だが、ナツコは幼少期に母親と姉を失くすという経験をしていることになる。また仮にヒミが塔の下に迷い込んだ理由が眞人同様に「母親を亡くした喪失感」故だとしたら、ナツコにとっては母親を亡くして直ぐに姉も行方不明になったことになり、ここで「自分にとって大事な人は居なくなってしまう」的な孤独感みたいな思考を植え付けられた可能性もあるのではないか、と感じる。そしてそれを裏付けるように彼女の姉は火事で若くして亡くなった。

 

 

こうした背景を踏まえるとナツコにとって「眞人が全然懐いてくれない」とか「(あの時代では結構普通だったらしいが)夫にとって自分は姉の代わり」みたいのはこちらが想像しているより遥かに彼女に「この世界に居たくない」と思い悩ませていたのではないか。それ故に彼女は老婆らには見えてない「アオサギ」を眞人同様に見えていたのではないか。だからこそ眞人が「ナツコ母さん」と自身の存在を母親として認めてくれたことは彼女にとって「もう一度元の世界で生きたい」と思わせる重要な出来事だったのだろう。

 

 

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