1・2月の映画興行収入に対する雑感
- 『鬼滅の刃』、テレビアニメそのままでも大ヒット
1・2月公開作品で最大のヒットとなったのが『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』。『鬼滅の刃』といえば2020年に『無限列車編』が「物語の途中から始まって物語の途中で終わる映画」にも関わらず興行収入400億円を超えて国内歴代興行収入の記録を塗り替えたことが大きな話題となったが、本作は最早「新作映画」でもなければ「総集編」ですらない「放送済みのテレビアニメ2話」と「今年4月放送予定の新シリーズの第1話の先行上映」をセットにした作品。つまりテレビアニメそのままという訳だが、オープニング3日間での興行収入は11億円を超えて、公開24日目の段階で31億円を突破。このペースを維持できれば40億円超えも期待できる大ヒットとなっている。本来この手のテレビアニメの先行上映は熱心なファン向けにイベント的に小規模で公開するのがセオリーだが、本作は全国規模。熱心なファンの母数がデカいのか、それともライト層も巻き込んだヒットなのかは定かではないが、『鬼滅の刃』のコンテンツの強さを改めて見せつけられた形だ。
- 『タイタニック3Dリマスター』再上映で10億円
1・2月、映画ファンの中で最も注目を集めたと書いても過言ではないのがバレンタインシーズンに合わせて2週間限定で再上映された『タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』。公式アカウントによると劇場公開当時に鑑賞したリアルタイム世代ではなく、公開当時を知らない20代女性を中心に満席が続出し、公開14日間で興行収入10億円を突破。2週目末が初週末より動員・興行共に倍以上の数字を記録し、公開最終日の木曜祝日は非公式ではあるが信頼度の高い某サイトの集計でデイリー1日を獲得。このまま上映を続ければ更なるヒットも見込めただろうが、当初の予定通り上映は終了。数字だけで説明できない大人の事情があるのだろう。もしあのまま上映を続けていれば、日本では世界対比でイマイチだった『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』超えを期待してしまうような勢いがあった。
ちなみに本作と同日公開だったデイミアン・チャゼル監督最新作『バビロン』は本国と同様に不発。
『タイタニック』最終週怒涛の動員、14日間10億円 - 文化通信.com
- 『レジェンド&バタフライ』の微妙な成績
1・2月公開作品でイマイチな成績に終わりそうなのが木村拓哉主演、古沢良太脚本、大友啓史監督の東映70周年記念映画『レジェンド&バタフライ』。本作は総製作費20億円で織田信長の生涯を描く時代劇映画で、東映曰く最終興行収入50億円超えを目標していた超大作映画だったが、最終見込みは25億円+α程度と30億円にも届かない見通し。映画の興行収入の約半分は劇場側の取り分になるので、総製作費20億円となると40億円、ソフトの売上等などを加味しても最低30億円は欲しい、と指摘されていた。そのため舞台挨拶等では「大ヒット」扱いも、ネットニュースでは本作を「赤字」とする見出しの記事が複数配信される事態となった。しかも中には「キムタク信長映画が40億円止まりの可能性」という何と言えない複雑な気持ちにさせられるタイトルの記事もあった。興行収入だけが全てではないとはいえ、このレベルの時代劇映画の興行収入がイマイチだと「もう時代劇での大ヒットは無理なのかな…」というムードになりかねないので、何としてでもヒットして欲しかった作品。個人的には中々見応えのある怪作だと思っていただけに、もう少しヒットして欲しかったな、とやや残念に思う。
どうするキムタク?「THE LEGEND & BUTTERFLY」興収40億円止まりの可能性 採算ラインは50億円|日刊ゲンダイDIGITAL
- 最後に…
続映作品は終映宣言をした『ONE PIECE FILM RED』が最終興行収入197億円、ベルリン国際映画祭でも上映された新海誠監督『すずめの戸締まり』が動員1000万人突破、最終興行140億円超え見込みと前作『天気の子』超え確実視、韓国でも大ヒット中の『THE FIRST SLAM DUNK』が110億円を超えてまだまだ好調、「作品は良いのにヒットしない」との風潮があった原恵一監督『かがみの孤城』が最終10億円を突破。アニメ映画は特典商法も上手い印象を受けた。最後にMCU最新作『アントマン&ワスプ:クアントマニア』は相変わらず初週こそ好調も2週目大幅ダウンで最終興行10億円前半見込み。アメリカ本国でも過去最高のドロップ率を記録するなど、まだまだ人気とはいえ今後の先行きを不安視させる情報が多くなってきた印象。果たして我々はマルチバース・サーガのラストを見届けることができるのか…
- 関連記事