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「完璧」ではなく「不完全な寄せ集め」、ジェームズ・ガン監督・MCU『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』ネタバレ感想

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ジェームズ・ガン監督のMCU最新作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』を観た。

 

  • 興行不振とスキャンダルのMCU

アントマン&ワスプ:クアントマニア (字幕/吹替)

本編の感想の前に近頃のMCUの動向への所感。前作『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の時も書いたが、フェーズ3完結以降のMCUはサノスという巨大な敵を失ったことで明確な目的がなくなり、尚且つフェーズ4から映画だけでなくドラマも並行して展開することになったことで、ライト層からは「MCU疲れ」という言葉が現れる程度には視聴モチベーションを維持するのが大変になっていた。一方でフェーズ5の幕開けとなる『アントマン&ワスプ:クアントマニア』ではユニバース共通の新たなる敵となるカーンが本格的に登場するということで期待感もあった。しかし「なんか思ったより弱いな…」ということで作品の評判はボチボチ。興行面でも製作費2億ドル近くに対して、全米2.12億ドル、全世界興行4.74億ドルとイマイチ。日本での興行収入至っては公開38日間で9.75億円と10億円に届くかどうか微妙な推移。ぶっちゃけ期待外れな作品となった。

更にサノスに次ぐMCU最強の敵みたいに登場したカーン役のジョナサン・メジャースが公開1ヶ月半後に暴行容疑で逮捕。本人は容疑を否認し、弁護士は「完全な無実」として、地方検事に無実の証拠として事件が発生した車の映像、運転手や目撃者からの証言、女性がこの申し立てを撤回する2つの書面を提出した、などとしていたが、当局は被害女性のテキストメッセージを認証をしていないと報じられている。更に他にも複数の女性がジョナサン・メジャースから危害を加えられたと名乗り出て地方検察庁に協力的との報道もあり雲行きはかなり怪しい。現段階では検察の判断、起訴された場合は裁判の行方を待つしかないが、MCUにとっては勝負作品が世評も興行もイマイチで悪役も逮捕となれば踏んだり蹴ったりで負のスパイラルに投入してしまった感もある。

eiga.com

またよくよく思い返してみれば、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズもジェームズ・ガン監督の過去のSNSの発言を理由にした降板からの撤回トラブルもあり、当時はディズニーのグズグズな対応が問題視されていた。こうなると観る前からややゲンナリという感じにもなってきたが、そうは言ってもMCU最新作とあって公開初日に鑑賞してきた。

 

 

  • 画面がリッチ、ギャグとキメのメリハリも良し

前作『アントマン&ワスプ:クアントマニア』はマクロの世界があまりにも「CGで作った世界」という感じでビジュアル面の評判が悪かったが、本作はロケットが作られた惑星のデザインから宇宙服のカラフルさ、惑星内のシステム機器のセットなどデザインが凝っていて画面の豊かさをスクリーン全体から感じられるリッチな画作りになっていた。また「通信機器を巡るボタンの色の振り分け」などのギャグパートはシッカリ笑える一方で、クライマックスのチームが子供たちを助けに行くという一つの目標に向かって動き出すシーンのキメ画はシッカリと決めてくるメリハリもアングラ系エンタメ映画の王道という感じで楽しかった。ガモーラが一番後ろから付いてくるという前とは違うけど、同じ目的のために同じ方に動くというバランス感も良かった。

 

※『アントマン3』は『映画ドラえもん』と言われてたけど、今回のカウンター・アースのアニマルたちもそれを連想させた

 

 

  • 「ありのままの不完全な寄せ集め」こそ…

youtu.be

本作は「ピーターと過去から来たガモーラの関係性」と「瀕死状態に陥ったロケットの過去」が軸に物語が進む。ロケットはハイ・エボリューショナリーに改造されたアライグマで、「閃き」が優れていることから、その脳みそだけを取り出されて殺処分されそうになった過去を持つ。ハイ・エボリューショナリーは「完璧な世界」を求めるヴィランで、「完璧な世界」を作る過程で生まれた不完全な生き物たちを簡単に処分する。世の中や他人に「完璧」を求めるのは不可能だし間違っている。しかし人間は時に世の中や他人に「完璧」とまではいかなくともある種の「理想」を求めるし、それに達しないと簡単に捨てようとする。例えば今回ドラックスは序盤は「足りない子」のギャグ枠に使われ、終盤ではネビュラから「バカは足を引っ張るだけで迷惑」的なことまで言われる。でもドラックスがあの星の言語を理解して子供たちとコミュニケーションをとる姿を見て考えを改める。「完璧」という名の「理想」という意味ではピーターも自分と出会う前の過去から来たガモーラと前と同じ関係に戻ろうと試みようとする。でもそれは別の彼女を自分の理想に当てはめようとしているだけだと気づき、別々の道を歩むことを決める。本作のメッセージは「完璧」を求めるのではなく良いところも悪いところも含めて「不完全でもありのままで生きる」ことだった。そしてラストでは1作目の冒頭でピーターが1人ウォークマンで聴いていた音楽がロケットの手によって流れてチームに共有される。「不完全」なモノたちの寄せ集めが一つになるからこそ強いのだ。

 

※SNSでロケットがハイ・エボリューショナリーを殺さなかった理由を監督自身のキャンセルカルチャーと重ね合わせた「誰にでもやり直しのチャンスを」だけでなく過去に復讐に取り憑かれた結果、仲間を救えなかったから今回はやめた、みたいな解釈をみて「なるほどな」と思った

 

 

  • 最後に…

ところで本作、公開前は「ジェームズ・ガン監督はロケットの物語は自分自身の物語的なことを言ってたので、今回監督がMCUを離れるということはロケットが死ぬのではないのか」的な予想を見かけた。劇中でロケットは死ぬことはなかったけど、そういうメタ視点で見るなら「次はDCのリーダーを受け継ぐぜ!」的な感じなのか…

 

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