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三部作ではなく最初から総集編が「一本の映画」として公開された世界線を見てみたかった/『傷物語-こよみヴァンプ-』雑感

傷物語 こよみヴァンプ 化物語 神谷浩史 坂本真綾 ポスター

『傷物語-こよみヴァンプ-』を観た。

 

傷物語〈Ⅰ鉄血篇〉

傷物語〈Ⅱ熱血篇〉

傷物語〈Ⅲ冷血篇〉

本作は西尾維新原作の『傷物語』を三部作でアニメ映画化した作品を「完全にシリアスなバンパイアストーリー」として蘇らせた総集編。新たに声を収録したシーンも多いという。そんな本作は「シリアスなシーンをメインに一本の映画としてまとまっているので、阿良々木暦の地獄の春休みを凝縮した内容を一気に体験出来て素晴らしい」みたいな感想が多くて結構評判が良い印象。中には「これを最初から公開して欲しかった…」みたいな声すらあるレベル。

 

 

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語(通常版) [Blu-ray]

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ガールズ&パンツァー 劇場版

元の三部作と今回の総集編、どちらが優れているかの評価は人それぞれだろうが、「映画興行の盛り上がり」の視点からは「こっちを公開してたら、公開当時もっと盛り上がったんじゃないかな〜」みたいなことも思わなくもない。というのも、本作の元の三部作の公開は2016〜2017年にかけて。この頃のこの手の深夜アニメの劇場版の興行収入を振り返ると、2013年公開『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』が20.8億円、2015年公開『ラブライブ!The School Idol Movie』が28.6億円、『ガールズ&パンツァー 劇場版』が25.0億円と近年のアニメ映画のヒット水準と比較すると物足りないかもしれないが、当時としては異例のヒットという扱いで、不調が続く洋画と比較することで「日本の深夜アニメが強い」みたいな風潮があった。ただこれらの作品は「内容的に物語のラストで一見さんお断り」かつ絵柄的にもライト層を引き込みにくく、「内向きな作品」、「オタク向け作品」感は強かった。

 

 

一方で『傷物語』の方はストーリー的には「エピソード0」と一見さんも入りやすい、寧ろ導入編としてピッタリの内容。絵柄的には当然敬遠する層も少なくないだろうが、前述した3作品より遥かに入りやすいことは間違いないだろうし、独特の作風からなる映像も所謂「萌えアニメ」に興味がない層、最早嫌悪感を抱いている層も惹きつけるだけの魅力があったように思う。そのため、ソフトの売上的に前述した3作品と同等もしくはそれ以上の数字を誇る本作の劇場版である『傷物語』は強固なファンとライト層も惹きつけることで興行収入20億円以上は固いと勝手に予想していた。ただ映画はまさかの三部作構成で1作目は64分と一般的に想定される映画の上映時間としてはかなり短い部類の作品。「これでは『ちょっと気になるから試しに観てみよう』的なライト層を惹きつけることは難しいだろう…」と思ったし、実際興行面では1作も一つのヒットラインである10億円は超えなかった。個人的にも「物語の途中で終わる上に、上映時間は短くて、(チケット料金は覚えてないが)別に安くもない映画って…」とかなりゲンナリした記憶がある。

 

 

そのため「今回の総集編が当時公開されて、その後に『鬼滅の刃』スタイルで劇場版でカットした原作シーンを加えた完全版をテレビアニメでやる、みたいな感じだったらな〜」みたいなことも思わなくもないし、「そしたら映画の方はもっと記憶にも記録にも残る作品になった可能性もあるのではないか」という気もしなくもないが、熱心なファンからすれば「分かってないな」という話なのかもしれない。