平成の国内映画興行ランキングトップ10!
第1位 千と千尋の神隠し
公開 : 2001年
興行収入 : 308.0億円(令和の再上映で316.8億円)
第1位は宮崎駿監督が個人的な友人である10歳の少女を喜ばせたいという理由で製作された『千と千尋の神隠し』で興行収入は308.0億円と国内興行収入で唯一300億円を突破しているメガヒット作品。第75回アカデミー賞ではアカデミー長編アニメ映画賞を受賞するなど海外での評価も高い。スタジオジブリ初コンビニエンスストアとタイアップした作品でもある。テレビ初放送時の視聴率は46.9%と過去にテレビ放送された劇場映画でも歴代最高視聴率を記録し、VHSとDVDの売り上げも歴代最高を記録する一方で本編映像が赤みが強い事も話題となった。
『千と千尋の神隠し』が公開された2001年の夏興行はスティーヴン・スピルバーグ監督がキューブリック監督の原案を引き継いだSF映画『A.I.』(最終興行:97.0億円)、マイケル・ベイ監督が真珠湾攻撃を描いた戦争恋愛映画『パール・ハーバー』(最終興行:69.0億円)、ティム・バートン監督が『猿の惑星』をリ・イマジネーションした『PLANET OF THE APES/猿の惑星』(最終興行:48.0億円)、大ヒットシリーズ第3弾『ジュラシック・パークIII』(最終興行:51.3億円)と100億円突破候補作品が連発する激戦区だった。一方でシネコンが本格的に流行り始めた時期とも重なりスクリーンの殆どが『千と千尋の神書く』がジャックしてしまった事で他作品の興行に悪影響が出たという話もある。
また総製作費1億3700万ドルを費やし全世界で大コケした世界初のフル3DCGSF映画『ファイナル・ファンタジー』もこの年の夏公開。
ちなみに『千と千尋の神隠し』の12週連続首位を止めたのはアンジェリーナ・ジョリー主演の『トゥームレイダー』(最終興行:27.0億円)だったが、『千と千尋の神隠し』は翌週首位に返り咲きその後4週後のフジテレビ映画『冷静と情熱のあいだ』(最終興行:27.0億円)まで首位を守り続け合計15回首位を獲得した。
第2位 タイタニック
公開 : 1997年
興行収入 : 262.0億円
第2位はジェームズ・キャメロン監督の『タイタニック』で興行収入262.0億円。主演はレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットで、当初製作費は0.8億ドルを予定されていたが最終的に2.86億ドルまで膨れ上がりキャメロン監督がノーギャラかつ『ターミネーター3』のメガホンを取る事を配給会社と約束させられたとい噂まであった作品。公開前は高騰した製作費に加えて繰り返された公開延期や上映時間が3時間を超えることから大コケ確定の烙印を押されていたが、予告編公開辺りから風向きが変わり全世界でロングランヒットとなった。2夜連続で地上波初放送された時の平均視聴率は前編が34.5%、後編が35.4%と高視聴率を記録した一方で妻夫木・竹内が担当したフジテレビオリジナル吹き替えに苦情が集まった。
ちなみに日本で『タイタニック』と同日に公開されたのがテレビ朝日が製作費20億円を注ぎ込んだ超大作『北京原人 Who are you?』だった。
また2022年にタイタニック2号を完成させ当時と同じルートを辿るという報道があったが、2010年にタイタニック沈没100年後の悲劇を描いた『タイタニック2012』という低予算映画が公開されている。
第3位 アナと雪の女王
公開 : 2014年
興行収入 : 255.0億円
第3位はディズニー製作のミュージカルアニメ『アナと雪の女王』で興行収入は255.0億円。日本語吹き替え版を松たか子が担当したエルサの『レット・イット・ゴー』が大流行した作品。本作は3月公開の春休み映画だったが、口コミでロングランヒットとなりゴールデンウィークには当初公開が予定されていなかった3D吹き替え版に加えて、観客が一緒に挿入歌を歌える限定公開イベント「“みんなで歌おう♪”歌詞付き」という特殊上映も行われた。
粘りのある興行展開を見せており、夏休み興行も突っ走る勢いがあったがディズニーは当初の予定通り7月にソフトを発売して同じくディズニー製作の『マレフィセント』と入れ替わる形でフェードアウトしていった。
週末動員ランキングでは公開6週目のタイミングで一度『名探偵コナン 異次元の狙撃手』に首位を譲るも3月公開作品にも関わらず6月末まで首位をキープして合計15回首位に輝いている。
地上波初放送時の視聴率は19.7%と高視聴率を記録したが、エンディングがフジテレビオリジナル版に差し替えられていた事に加えてエンドクレジットだけでなくオマケ映像まで小窓化され早送り放送となった事で炎上した。今年『アナと雪の女王2』が公開予定だが、オラフの吹き替えを担当したピエール瀧がコカイン仕様で逮捕された事から降板が決まっている。
第4位 君の名は。
公開 : 2016年
興行収入 : 250.3億円
第4位は新海誠監督の『君の名は。』で興行収入は250.3億円。プロデューサーの公開前の目標興行は15億円だったが、RADWIMPSの楽曲に加えて圧倒的な映像美がSNSを通して口コミで話題を呼びロングランヒットとなった。一方で違法ダウンロードで視聴出来る事がSNSで広まるなどSNSの負の側面も見せた。興行収入が100億円を超えた日本のアニメ映画はスタジオジブリを除けば本作のみと「どの作品でも興行収入100億円を突破する可能性は秘めている」事を提示した意味でも本作の価値は大きい。地上波初放送時の視聴率は17.4%。
実はこの年の東宝は本作より『ルドルフとイッパイアッテナ』の方に力を入れていた。
週末動員ランキングは原作者が「デスノートの存在する世界では「君の名は?」と聞かれても極力本名は言わない方がいい」とパンフレットでネタにした『デスノート Light up the NEW world』に首位を奪われるまで12回連続首位を獲得。その翌週『デスノート』から首位を奪い返して3回連続首位を獲得して、その後翌年1月再び首位に返り咲く粘り強さを見せて合計16回首位を獲得した。『アナと雪の女王』のディズニーと違って東宝はソフトの販売を送らせて8月末公開の映画をお正月を越して春休みまでロングランさせ記録を伸ばす事を優先した。
第5位 ハリー・ポッターと賢者の石
公開 : 2001年
興行収入 : 203.0億円
第5位は『ハリー・ポッターと賢者の石』で興行収入は203.0億円。J・K・ローリングの大ヒットファンタジー小説を実写映画化した作品。
日本では2001年12月1日映画の日に公開されて『オーシャンズ11』に敗れるまで9週連続週末動員ランキング首位を獲得した。地上波初放送時の視聴率は30.8%と2000年代以降の『金曜ロードshow!』を支える定番作となった。
本作はその後10年間で8作品制作されるメガヒットコンテンツとなり、日本では8作品中4作品が興行収入100億円突破を達成しており現在もスピンオフ作品『ファンタスティック・ビースト』シリーズが展開されている。
2000年以降VFXに進歩により本シリーズと『ロード・オブ・ザ・リング』3部作を筆頭にファンタジー映画が次々と製作されるようになった。
第6位 ハウルの動く城
公開 : 2004年
興行収入 : 196.0億円
第6位は宮崎駿監督の『ハウルの動く城』で興行収入は196.0億円。当初細田守監督作品の予定だったが、宮崎駿監督作品に変更になり宮崎駿監督としては初の公開延期となった作品。前作『千と千尋の神隠し』のメガヒットは大量宣伝のおかげではないかと不安になった宮崎駿監督を安心させる為に極力情報を出さない「宣伝しない宣伝」を展開して世間の興味を引いた。その手法は「ただただ宮崎駿監督作品として城が動く映像だけを公開する」「ハウル役のキムタクの声を予告編で一切公開しない」というモノだった。本作は公開延期の影響で夏公開から11月公開に変更となっているが、プロデューサーの鈴木敏夫によると「11月は有料試写会で、映画を観た人の口コミで年末年始から伸びる」という狙いがあったと語っている。オープニング興行は14億8384万3060円と当時の歴代1位で、地上波初放送時の視聴率は32.9%だった。
ちなみにこの年の東宝は『ハウルの動く城』だけでなく、製作費20億円を注ぎ込んだシリーズ50周年にして最終作『ゴジラ FINAL WARS』も公開したが興行収入12.6億円と大惨敗に終わった。
『ハウルの動く城』は9週連続首位を獲得したが、10週目は『オーシャンズ12』に首位を譲った。
第7位 もののけ姫
公開 : 1997年
興行収入 : 193.0億円(令和の再上映で201.8億円)
第7位は宮崎駿監督の『もののけ姫』で興行収入193.0億円。宮崎駿監督が構想16年・制作3年・製作費25億円をかけた超大作映画。当初製作委員会は時代劇である事やグロシーンが多い事に難色を示したが、鈴木敏夫の手腕によって製作が決まった。地上波初放送時の視聴率は35.1%で、本作からディズニーと提携してアメリカでの公開も決まった。
同年に庵野秀明監督作品『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』が公開されており、キャッチコピーは『もののけ姫』の「生きろ。」とは真逆の「だからみんな、死んでしまえばいいのに…」だった。
第8位 踊る大捜査線 THE MOVIE 2
レインボーブリッジを封鎖せよ!
公開 : 2003年
興行収入 : 173.5億円
第8位はフジテレビ製作の『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』で興行収入は173.5億円。実写邦画歴代1位の興行収入を誇る事から日本映画に活気を取り戻したと評価される一方で、『踊る』の劇場版が日本映画をダメにしたという意見もある賛否両論な作品。プロデューサーの亀山千広は『踊る』シリーズを筆頭に『HERO』『西遊記』『容疑者Xの献身』『のだめカンタービレ』といった月9の映画化を始め、『ローレライ』で特撮監督だった樋口真嗣監督を監督に引き上げたり、『THE 有頂天ホテル』などの三谷幸喜作品や『万引き家族』の是枝裕和監督作品など数々のヒット作やブランド監督を生み出してきており、昨年記録的な大ヒットとなった『劇場版コード・ブルー』もこの人の作り上げてきたフジテレビの映画製作スタイルが大きく貢献していた事は言うまでもない。
本作の週末動員ランキングは公開3週目で『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊』に首位を一度譲るもその後『トゥームレイダー2』まで6週連続首位を守り合計8回首位を獲得した。地上波初放送時の視聴率は18.8%と思いの外伸び悩んだが、初放送の半年後に完全版を放送した時は26.7%の高視聴率を獲得した。
余談だが本シリーズはネットによって口コミで評価を伸ばした作品だが、本作と同年に公開された『マトリックス リローデッド』でも匿名掲示板2ちゃんねるによってマトリックスオフ会を開催して注目を集めた。またこの現象は本シリーズと比較対象として挙げられる『ケイゾク』にも同じ事が言えるだろう。
『踊る』シリーズは2作目で実写邦画の新記録を更新するも、7年ぶりに復活した3作目では興行収入73.1億円と興行を100億円以上落とした。その後完結編として公開された4作目は興行収入59.7億円とシリーズ最低興行で幕を閉じた。
第9位 ハリー・ポッターと秘密の部屋
公開 : 2002年
興行収入 : 173.0億円
第9位は『ハリー・ポッターと秘密の部屋』で興行収入は173.0億円。『賢者の石』の翌年に公開された続編で、週末動員ランキングでは9週連続首位を獲得。地上波初放送時の視聴率は21.7%と高視聴率だったが、当時の水準からいえばイマイチという雰囲気もあった。
本シリーズは前述した通り2001年公開の『賢者の石』から2011年公開の『死の秘宝 PART2』まで10年に渡りハリーの冒険を描いたファンタジー作品。日本での8作品累計興行収入は960.3億円を記録しており、地上波でも繰り返し放送され高視聴率を記録するなど多くの人に愛されているシリーズとなっている。
第10位 『アバター』
公開 : 2009年
興行収入 : 156.0億円
第10位はジェーム・キャメロン監督の『アバター』で興行収入は156.0億円。今までの飛び出す3D演出ではなく、映像に奥行きを与える事で観客を世界観に没入させる3D演出を目指した作品。本作公開によって3D公開作品が一般的になったと言っても過言ではない。
『タイタニック』が持っていた全世界の興行収入を塗り替える記録的なヒットとなったが、日本では『タイタニック』に100億円以上及ばず翌年4月公開の『アリス・イン・ワンダーランド』に3Dスクリーンを明け渡す形で上映終了となってしまった。地上波初放送時の視聴率は15.1%と当時の水準から考えれば微妙な数字に終わった。全5部作を予定しており、2020年に『アバター2』が公開予定。
最後に…
宮崎駿監督作品が3本ランクインしてるのも凄いけど、ハリポタとキャメロン監督作品が2本ランクインしてるのも流石。洋画と邦画の対比も実写とアニメの対比も5:5と丁度いい。令和ではどんな映画がどんなヒットを見せてくれるのか楽しみだ。