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新海誠監督最新作『天気の子』の「バニラトラック」と宮崎駿監督作品『千と千尋の神隠し』の「湯屋」

天気の子

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新海誠監督最新作『天気の子』の冒頭、雨降る新宿歌舞伎町で突然流れる『VANILLA』の求人トラックの音楽。東宝がこの夏一番のヒットを狙う超大作は後ろから読むと『ALL IN AV』で有名な「全国の風俗求人情報を紹介するサイト」の宣伝トラックから始まる。

 

この演出に対して「子供も観る映画で何故?」という疑問の声も少なくない。一方で自分は最初「今の歌舞伎町の雰囲気を出すためにも良いじゃん」くらいの感想を持っていた。ただこのシーンの後、劇中で本作のヒロインが自分の体を売ろうとするシーンが描かれる。

 

 

また新海誠監督はパンフレット内のインタビューで以下のようなことを語っている。

 

帆高も陽菜も貧しいというのは、実は『君の名は。』と大きく違う要素かもしれませんね。社会全体があの頃とは違っていて、日本は明確に貧しくなってきている。特に若い子にはお金が回らなくなっていて、それが当たり前になってきています。

 

映画で描かれる内容とインタビューの内容から冒頭でバニラトラックが登場した理由を推測すると、「今の日本は若い女の子が体を売らないと食べてくのも苦しいくらい貧しくなった」みたいなことを演出したかったのではないかと感じる。そして新海誠監督はこの状況を作ったのは監督自身を含めた大人が選択した責任だと感じてて、『天気の子』では東京の雨が降り止まない設定からも「我々大人たちの選択の責任で世界は少しずつ破滅に向かっているけど、この絶望の世界に生み落とされた若い世代はどう生きるべきか?」みたいな問いが生まれたのではないかなと勝手に思っている。勿論純粋に「東京オリンピック前の今の東京歌舞伎町のリアルを残したいという想いでバニラトラックを登場させた」だけかもしれないが…

 

 

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ちなみにこの「大人たちの責任を子供が取らされる」みたいな感じは、2001年に公開された宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』も似てたりする。だって千尋湯屋で働かされるのは彼女の両親が「引っ越しの道を事前に確認してなかったこと」や「迷い込んだ飲食店の食事を勝手に食べたこと」がキッカケだ。つまり千尋は両親の選択の責任を取らされる形で働かされる。また映画評論家の町山智浩さんによると宮崎駿監督が「大人たちが飽食でこの国をダメにしたから、風俗産業で働くしかない」と『プレミア』のインタビューで答えてたという。たしかに千尋の働いてた湯屋の従業員は女ばっかりだったし、個室のお風呂もあったし、そういうことで間違いは無いのだろう。

 

<追記>

 

<追記2>

岡田斗司夫さんは9月に「湯屋=風俗」説は「批評家などをミスリードするための設定」という解説動画を出す予定だという。

 

ただこの2作品少し違うのは『千と千尋の神隠し』は「大人は無責任だから世界は悪くなって子供が責任を取らされる」と大人をかなり突き放してる感じがしたけど、『天気の子』は「大人は無責任だ」と突き放さず大人にも少し希望を残してる感じがした。

 

 

ただ18年経っても「若い女が体を売らないと生きていけないくらいおかしくなった日本」みたいなのが舞台になるのは、何とも世知辛い。でも2作品ともラストは若者が「生きる力を取り戻す」ので自分も頑張っていきたいと思う。

 

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