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『ルパン三世 ワルサーP38』、「エレンと引き金を引く意味」と「バッドエンド」なのか問題

ルパン三世 TV SPECIAL ワルサーP38

金曜ロードショー公式サイトでルパン三世アニメ化50周年を記念して実施したファン投票企画『みんなが選んだルパン三世』のTVスペシャル部門で第1位に選ばれた『ルパン三世 ワルサーP38』が2021年10月22日に同枠で地上波放送された。

 

  • ハードボイルドな『ルパン三世』

日本で一番正しい情報から間違った情報までまとめられているWikipediaによると、本作は「ルパン三世生誕30周年記念作品」であり、当時のシリーズ最高額の予算をかけて作られた作品だそうだ。プロデューサーによると『ルパン三世』の魅力は色々なクリエーターによって自分のルパンを表現できるところであり、本作ではルパンの愛用する「ワルサーP38」を使った作品にしようといった経緯があったという。『ルパン三世』といえば最早コミカルな作風の方が一般的な気もするが、本作はオープニングから流血シーンの連続で全編に渡ってルパンは常にシリアスモードのハードボイルドな作品に仕上がっている。一方でルパン以外のキャラクターは冒頭でシリアストーンで撃たれる銭形が絶命からルパンの名を聞いて蘇生したり、階段から部下と一緒に落ちた結果骨折していなかった方の足を部下に全体重で乗られて骨折してしまったり、五右衛門の爆弾の解除方法の根拠が梅干しの色だったり、不二子がコントロールパネルでドヤ顔で盛大にミスったりと割とコメディ色の強いことをやってたりする。これを作品全体のトーンと合っていない不要なギャグと取るか、「それがいい」と取るかは人それぞれなのだと思う。

 

 

  • 「自由なき命」より「死」を選ぶエレン

前置きが長くなったが本作はヒロイン含めてゲストキャラクターがほぼ全滅することから「バッドエンド」と認識する人も少なくないようだ。確かに本作は決して「ハッピーエンド」ではない。しかし個人的には「バッドエンド」に括られるのは少し違和感がある。

本作のヒロイン・エレンは幼い頃に父親の酒代欲しさに弟と共に売られたという設定を持つ。物語内では暗殺組織「タランチュラ」の幹部クラスではあるが、この組織のメンバーは体に毒を打ち込まれており、本拠地のある島から噴出しているガスを吸い続けないと数時間以内に死んでしまうという設定になっている。そのためエレンは解毒剤を作り、「自由」を求めて外の世界に脱出しようと試みる。それを協力するのがルパン一味だ。ただ本作のラストでエレンを含め自由を得ようと行動した穏健派と呼ばれる人たちは、志半ばで死を迎える。そのため本作を「バッドエンド」と捉える人は一定数いる。

ただエレンは最後ルパンと共に弟と仲間の仇であるドクターの頭を「ワルサーP38」で撃ち抜く。そしてエレンは息を引き取る前に実際は解毒薬は効いていなかったとしても、気持ちの上で初めて毒から解放されたガスマスクなしで吸った空気と共に見た景色を持って、「あの時、ちょっとの間だったけど…自由になれた気がした…」と発する。エレンは中盤で敵に追い詰められた時に自らの首に銃を突きつけて「命があれば満足だろうと言うのか?奪うのは自由だけだと言いたいのか?」「お前たちの好きにはさせない、もう二度と…」と叫んだ。つまりエレンのこれまでの人生は生きているけど、「自由」がないから死ぬより辛い状況だった。そんな彼女が一時でも「自由」を感じ、尚且つその「自由」を奪っていた相手を自らの手でケリをつけ、ルパンに感謝を示したという事実があるのなら、安易に「バッドエンド」という言葉で括りたくないという気持ちがある。

 

 

  • 2人で引き金を引く意味

またドクターはエレンだけでなくルパンにとっても最初の相棒でありながら、裏切りに遭い自身のシルバーメタリックの「ワルサーP38」を盗まれた挙句に自身の名前を語り悪に利用された許し難い相手だ。そのため2人が手を重ねて引き金を引く意味は重い訳だが、ラストでルパンは海にシルバーメタリックの「ワルサーP38」を放り捨てる。これはルパンもまた過去にケリをつけたことを意味する。そのため個人的には本作は「バッドエンド」というより「ビターエンド」の方が近い気がする。ここら辺はもう気持ちの問題なので、これ以上どうという話ではないが、個人的にはそう思った。

 

 

  • 最後に…

最後に「毒の問題が未解決でモヤモヤする」という意見もあるようだが、それは不二子が飛行船いっぱいにガスを詰め込んだみたいなセリフから、それが尽きる前に「解毒薬なんてチョロいチョロい」と言ってたルパンがなんとかしたのだと思う。逆に解毒薬を完成させて打って一件落着というシーンがあった方が興醒めな気がする。

 

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