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ラナ・ウォシャウスキー監督の「愚痴」を延々と聞かされた気分になる『マトリックス レザレクションズ』ネタバレ感想

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ネタバレ注意

ラナ・ウォシャウスキー監督最新作『マトリックス レザレクションズ』がついに公開された。今回の記事はネタバレ全開かつ本作が好きなことを前提に若干ネガティヴ寄りなので、それが嫌な人は自衛してね。

 

  • 監督は『マトリックス』以降「ヒットなし」

マトリックス(吹替版)

1999年に公開されたウォシャウスキー兄弟(当時)の『マトリックス』は「バレットタイム」など斬新な映像表現が高い評価を得て、2003年公開の『リローデッド』『レボリューションズ』含めて映像業界のみならず多くの人に多大な影響を与えた作品となった。

スピードレーサー (字幕版)

クラウド アトラス (字幕版)

一方で『マトリックス』完結の5年後の2008年に公開された日本のテレビアニメ『マッハGoGoGo』をCGを駆使して実写映画化した『スピード・レーサー』は一部の物好きには「ドラッグ映像」として高い評価を得るも一般的には酷評で興行的に大コケ。その4年後の2012年に公開したトム・ティクヴァと共同監督でデイヴィッド・ミッチェルの小説を実写映画化した『クラウドアトラス』は一定の評価を得るも、興行的には失敗。

ジュピター(字幕版)

Sense8

2作連続興行不振の末に監督史上初の3Dで『マトリックス』以来のオリジナルSF映画『ジュピター』を莫大なの予算をかけて製作と勝負に出るも、熱心なファンからも「愛すべき駄作」扱いの酷評で興行的にも大惨敗。3作連続大コケでキャリア的にかなり厳しくなった段階でNetflixでオリジナルドラマ『センス8』を配信。こちらはそこそこ評判も良くて配信当時は『ハウス・オブ・カード』と並ぶNetflixの看板作品感すら漂わせるも、再生数によってシーズン2で打ち切りが決定。

アニメの実写はダメ、小説の実写もダメ、オリジナルSFもダメ、Netflixもダメ、『マトリックス』以降は全部ダメ。挙げ句の果てに「若い頃は社会への抑圧をフィクションにぶつけることで傑作を生み出してたけど、『マトリックス』がヒットしてお金が入って、有名になって、性転換もして、結果的に社会の抑圧から解放されて映画もつまらなくなったんじゃないの」と批評家から自分のような素人までに好き勝手言われてしまう始末。そんな流れで発表された一度完結したはずの『マトリックス』シリーズの最新作。何故か監督は姉のラナのみで妹はいないが、映像革命を起こすもその後鳴かず飛ばずの監督が起死回生をかけた原点回帰。地雷感が漂う一方で、このクリエーターとしての残酷な現状をフィクションにぶつけることで再び傑作が生まれるのか、期待と不安を胸に公開初日に劇場に向かった。

 

 

  • 前半は愚痴を延々と聞かされてるような気分

youtu.be

開幕早々ワーナー・ブラザースの普通のロゴから始まりゲンナリするも、直ぐに緑の画面に切り替わって一安心。その後は1作目と同じ画、しかしループを匂わせながらも何か違うということが示される。「ふむふむ」と観ていると場面は変わり、『レボリューションズ』で死んだと思われていた主人公のネオは再び「マトリックス」の世界に取り込まれていて、1999年発売の伝説のゲーム『マトリックス』トリロジーを作った人ということになっている。「!?」と思って観続けると、そこからは「あのトリロジーは凄かった」「多くの人に影響を与えた」「このセリフは気に入っている」「バレットタイム!バレットタイム!」「親会社のワーナー・ブラザースは続編を望んでいる」「同じ話を繰り返せばいい」「マーケティング的にも求められている」「『マトリックス4』は凄いことになる」「リメイクでもリブートでもいい」「『マトリックス』のキーワードは独創と革命(うろ覚え)」「『マトリックス5』も作るかも」とメタ的発言が「ランニングマシンで走ってるネオ」や「VRで遊ぶネオ」、「お風呂に入ってるネオ」など彼のルーティン映像を背景に延々と続く。また今回のネオは青いメガネをかけたカウンセラーから「青いピル」を処方されながらカウンセリングを受けているが、そこではカウンセラー(今回の敵)によって「トリニティは近所の人妻の反映、クリエーターにはよくあること」と敢えて冷めたメタ発言が繰り出される。とにかくメタ発言が続くのでラナ・ウォシャウスキー監督の「愚痴」を延々と聞かされているような気持ちになる。

 

 

  • アクションは予告編にあるものだけで…

youtu.be

ただ『マトリックス』シリーズの最新作、この手のメタ的構造は寧ろ「求めていたもの」であって、「そう来たか」と興味深く鑑賞。ただネオが「マトリックス」を思い出して以降は特別斬新な展開もなく「まー、こんなものか」的な展開が続く。前半で散々指摘された「映像表現」に関しても、予告編で公開されているモノ以上はなく悪くはないが割と平凡。唯一「マトリックス」に支配されてる人間がビルから飛び出すシーンは松井優征先生の『魔人探偵脳噛ネウロ』の「電人HAL編」を連想させる狂気に満ちたシーンに感じたが、それも自分の趣味の範囲で一般的には「まー、期待はしたなかったけどやっぱりか」という感じなのだろう。意地悪な書き方をすれば「セルフカウンセリングした上で、結局飛べなかったな…」と思えるクオリティ。個人的には東京の新幹線の中でリンゴ飴を突き刺してくる高校生とのバトルをもっと丁寧に描いて欲しかった。

 

 

  • 最後に…

そんなこんなで「前半で散々愚痴を聞かされた挙句、後半のアクションはこのレベルか… なんか物語とシンクロして、「マトリックス」の支配から再び解放されて自由になった後半は新たな映像描写を見せて欲しかったけど、これが限界というのは悪い意味で『現実』っぽい」と思えてしまう作品。ラストのネオとトリニティの空中飛行エンドも『ジュピター』のラストっぽいし、エンディング後のオマケ映像は「言いたいことは分かるけど、最後の最後につけられると監督自身が4作目の夢物語みたいな展開を信じきれてないんじゃないの…」と思えてしまった。

 

【追記】

それともあの派手さがないアクションはインフレしまくった『リローデッド』『レボリューションズ』の後の4作目として敢えてだったのだろうか…

 

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