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【仲間とは?】尾田栄一郎先生と相性最悪なメッセージを放つ細田守監督トラウマ映画『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』

ワンピース THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島

ネタバレ注意

『ONE PIECE FILM RED』公開と『竜とそばかすの姫』のアマプラでの配信と地上波初放送で再注目されている細田守監督長編デビュー作品『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』を観た。

 

  • 麦わらの一味が仲間割れ、ルフィが新しい仲間と…

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近年細田守監督に対するネット上での風当たりは強い。その中でも本作は国民的漫画原作のアニメの劇場版にも関わらず、原作者・尾田栄一郎先生の思想と大きくズレを感じさせる細田守監督独自のメッセージが強く込めれていることなどから色々な意味で注目度が高い作品だ。本作のストーリーは「オマツリ男爵の島で彼の出す『地獄の試練』に麦わらの一味が挑む」みたいな内容。オマツリ男爵の出す「地獄の試練」は仲間割れを誘発するモノで物語中盤で元々仲の悪いゾロとサンジはチームプレイでお互いの足を引っ張り合い、敵の罠に引っかかって戦線離脱をするも最後の最後にチームのピンチを救ったウソップに対してその状況を見ていたはずのナミが「よくもさっきは裏切ってくれたわね!」とブチ切れてビンタをかまし、ウソップも売り言葉に買い言葉で「それはおめーの十八番だろ」と言い放つと再びナミが目の色を変えてビンタをするという険悪なムードが描かれる。

更にその後もサンジはゾロにだけご飯を食べさせなかったり、ウソップのことを露骨に無視するナミなど関係悪化のシーンがネチネチと描かれ、ついにはみんながバラバラに行動し始める始末。そして驚くことに本作ではその後紆余曲折あってバラバラになった麦わらの一味が再び集結して敵を倒すという物語ではなく、仲間を失ったルフィが映画オリジナルの海賊たちと手を組んで敵を倒すという物語が展開される。勿論、劇中ではルフィの仲間は敵に捉えられて身動きが取れない状況で「ルフィ、ルフィ」と助けを求めており、それにルフィが応えるという形にはなっているが、ルフィに殴られたオマツリ男爵が意識が朦朧とする中でかつて失った仲間たちからの「嵐の夜にアッサリ死んじまったオラたちのことは忘れて良かったんだ。新しい仲間を求めても良かったんだ。ホラ、アイツら(ルフィと映画オリジナルの海賊キャラたち)のように…」というセリフを聞いているため、映画のメッセージ的には「今の仲間に拘る必要はない、ダメなら新たな仲間を見つけよう!」という『ONE PIECE』の映画とは思えないモノになっている。

 

 

  • 細田守監督のルフィ解釈と『ハウルの動く城』

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細田守監督は本作のメッセージ性について以下のように語っている。

小黒 いつまでも昔の仲間にこだわるのもよくない、という事を言ってる映画でもあるわけじゃない。
細田 うん。だってさ、ルフィの目的は、ひとつなぎの財宝を見つけて海賊王になる事であって、今の仲間と冒険する事ではないんだもの。逆に言えば、ひとつなぎの財宝を見つけるために、仲間が必要だと言ってるわけで。そういう人物なんだよね。

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本作の公開時期と照らし合わせればフェアではないことを前提に『ホールケーキアイランド編』で麦わらの一味から抜けようとしたサンジに対してルフィが「お前がいねェと…!! おれは海賊王になれねェ!!!!」と宣言していたことを踏まえると「細田さん、ルフィはそういう人物ではなかったんだよ…」と思わざるを得ない。恐らく公開当時の原作及びアニメの進展まででも「これはワンピ映画でやることではない」と感じた人が少なくなかったのではないかと思う。一方で細田守監督は本作に込めたメッセージの背景について以下のように語っている。

細田 仲間は必要ですよ、もちろん。……(中略)僕がああいったかたちで映画をまとめたのは、単純に観客にとって面白いものにするためだけではなくて、僕自身の直面する問題があったからだと思う。要するに『ハウル』の問題があるんですよ。

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これは有名な話だが、細田守監督は過去にスタジオジブリで『ハウルの動く城』の監督をしていたが、様々な事情により降板して、仲間からの信用を失ったという苦い経験がある。細田守監督はその経験から本作を作った、ということなので本人にとっては傷ついた心のリハビリにもなり、色々な意味で細田守監督作品としては欠かせない一作になっていることも事実なのであろう。ただそれをよりによってそのメッセージ性との相性が最悪な他人の作品、それも日本で一番売れている国民的長寿漫画のアニメ映画でやってしまったことが、監督本人のアニメ監督としての出世も合わせて本作に長年変な注目が集まり続ける要因になっているような気がする。

 

 

  • 本作翌年、原作者は「ようやく、春が…」

ワンピース THE MOVIE カラクリ城のメカ巨兵

更に本作と翌年公開の作品の脚本を担当した伊藤正宏さんがブログで以下のような文章を投稿していたことも話題の一つとなっている。

原作者(尾田栄一郎さん!)からは、逆に握手を求められて驚いた。「伊藤さん、ようやく、春が来ましたね!今度の作品なら甥っ子さんや姪っ子さんたちにも安心して見せられますね?」と、彼が言う。

二年ぶりの約束: sometimes i speak!〜放送作家伊藤正宏のノート〜

これは本作の翌年公開の映画の完成パーティーでの原作者・尾田栄一郎先生とのやり取りだというが、そこに「ようやく、春が来ましたね!」と発言が確認できる。当時のワンピ映画は例年3月公開だったことを踏まえると、この尾田先生の発言は中々。「今度の作品なら甥っ子さんや姪っ子さんたちにも安心して見せられますよね?」という発言からも「では前年公開の作品は?」とつい意地悪なことを考えてしまう。また同記事内では本来「大人から子供まで楽しめる大娯楽作品」がコンセプトだったにも関わらず、細田守監督が独断で脚本を暗いモノに変えたことや、かつて監督が同人誌のインタビューで脚本家についてメチャクチャ失礼な発言をしていたことが発覚するなど映画本編の内容に負けないくらい映画周辺の話がゴシップ的に面白いため、より本作のネタとして強度が増しているようにも感じた。一方で伊藤正宏さんが翌年脚本に再チャレンジした『カラクリ城のメカ巨兵』より本作の方が現在においてはワンピ映画としても注目度が高いのは皮肉である。

 

 

  • 最後に…

『カラクリ城のメカ巨兵』後、ワンピ映画は総集編2作品を挟んだ後に原作者・尾田栄一郎先生が製作総指揮をした『FILM STRONG WORLD』が大ヒットする。ネット上では尾田先生が映画製作に深く関与するようになった要因の一つに本作があったのではないか、という憶測が常に持ち上がっている。ただ本作にはワンピ映画として「ルフィは今の仲間を失っても海賊王を目指し続けるのか?」という問いが投げられているという意味で一定の評価をしている人も存在する。最後に『オマツリ男爵』のゾロは細田守監督の『時をかける少女』の功介とキャラ的に被っててアレ。

 

 

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