ネタバレ注意
イルミネーションスタジオによる『スーパーマリオ』の3DCGアニメ映画が公開されるタイミングで、1993年公開の実写映画版『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』を観た。Wikipediaによると本作は製作費4800万ドルに対して興行収入は2091万ドル、日本でも配給収入3億円と日米共に大コケし、主演俳優が「僕の生涯で一番最悪な作品だった」「金のために出たのだが、それでもギャラを投げ返したいぐらい」と批判を展開しているなど、前情報だけでヤバそうな作品。しかもビジュアルを見ると更にその懸念は高まる。一体本作はどのような作品なのか…
- ルイージはマリオと血の繋がった兄弟ではなく養子
まず本作はゲームの世界観を再現しているイルミネーションアニメ版とは異なりリアル路線の演出で、舞台はニューヨークのブルックリン。そこに住む2人の配管工・マリオとルイージが本作の主人公だ。ただ2人は兄弟にしては見た目の年齢は大きく離れており、親子でもおかしくない歳の差を感じさせる。実際、設定上もマリオとルイージは血の繋がった兄弟ではなく、ルイージはマリオの養子で、ルイージはマリオのことを「兄さん」としながら「母親代わり」と恋の相手・デイジーには説明している。
- 6500万年前の巨大隕石落下で地下に恐竜の世界
『スーパーマリオ』といえばピーチ姫がクッパに攫われてマリオとルイージがお助けに行く、というのが基本ストーリーだが、本作ではマリオとピーチ姫の物語ではなく、ルイージとデイジーの物語。そのためデイジーがクッパの囚われの身になるのだが、本作は6500万年前の巨大隕石落下で地球は地上世界と地下世界に分かれて、地下では独自進化を遂げた恐竜たちが独自の世界を作っており、その世界のトップがティラノサウルスから進化した独裁者・クッパということになっている。
- 「マリオ様にかかれば女はイチコロ」、ダンスへ
クッパが支配する地下世界はレトロフューチャー的ディストピアでマリオとルイージはいきなり青い服を着た優しそうなおばさんに襲われて宝石を奪われ、そのおばさんもまた別の赤い服を着たふくよかなおばさんに宝石を奪われ、そのおばさんは空飛ぶガジェットを脚に装着し、ジェット噴射で建物から建物に飛び移り逃走する、というシュールなアクションシーンが描かれる。ゲームのマリオとルイージなら自らもジャンプして追いかけそうなものだが、そこはリアル路線。ただ指を咥えて逃亡を許すしかない。ちなみにこの赤い服を着たふくよかなおばさんから宝石を取り戻すパートも存在するのだが、そこではマリオが「マリオ様にかかれば女はイチコロだ」とルイージに高らかに宣言して、ダンスパーティで踊りに誘うというまさかの作戦。その癖彼女をダンスに誘う第一声は「ヘイ、オレはマリオだ、あんたイカすぜ、オレと一緒にダイエットしようぜ!」。当然、一発顔面を殴られるのだが、それもマリオの作戦のうち。「もう一発頼む」とダンスに持ち込み、宝石を奪還するための一連のシーンはベタだが、素直に笑える良い意味でのバカバカしさ。それでいて、最後はちょっとジーンとさせられたりするので、あまりバカにできない。
- ヨッシーのビジュアルなど「!?」の連続
本作は『スーパーマリオ』のゲームのニワカ知識を持ち合わせている自分にとっては「!?」な部分ばかりだ。それは前述したマリオとルイージの関係性だけでなく、クリボーことグンパは人間の脳みそを機械によって小さく退化させる「逆進化」を行い、強靭な体格に対して顔が小さいクリーチャーに改造された者たちという非人道的な設定。デイジーは恐竜の子孫故に教会に捨てられた卵から生まれ、ヨッシーは『ジュラシック・パーク』に登場していても違和感のないリアルな恐竜のビジュアル。その割に舌をペロンと伸ばして人間の足を掴み、自らの口元まで引っ張ってくるというゲームの設定を残っており、最早怖いレベル。アイテムのキノコはそこら辺に生えている普通のキノコという感じのビジュアルで、「重要アイテム」と劇中で強調されるも、最終的には食べてパワーアップではなく巨大化してバリアとして使うツボの外しよう。ボム兵に至っては『映画ドラえもん』の入場特典かと思うようなサイズ感のゼンマイ式のオモチャという感じで、カタカタと動いている姿はやたらと可愛い。そんなこんなで「!?」の連続ではあるが、そういうものだと思って観ればこれはこれで面白い。正直、マリオのゲームを全く知らない人が楽しめるかは分からないが、マリオのニワカ知識さえあれば、午後ロー感覚で楽しめるレベルの作品にはなっていると思う。何というか作品全体としてユルくはあるが、コメディ系のアドベンチャー作品として真面目に作られているので、事前の評判に対してクソ映画という感じではなかった。
- 最後に…
ゲーム内では殆ど喋らないマリオから「このオレがアイツを懲らしめてやる!骨を一本一本バラバラにして手と足を固結びにしてな!もう勘弁ならない!」などの暴言が飛び出すのも本作の魅力の一つか…
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