『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観た。
- 前評判に対して温度の低い賛否の割れ方
本作は「確定申告しに行った主婦がマルチバーチの自分をインストロールしてカンフーアクション!」という近年の流行にカンフーを足した如何にもなB級アクション映画という感じの内容だが、上映時間は139分と長めで、本年度アカデミー賞の大本命という扱いを受けている。ただ「それならとんでもなく面白い映画なのか!?」と思ってワクワクして観に行くと、自分含めて「あっ、こんな感じか、いや、面白かったんだけど、まー、ねっ」くらいのテンションの人が多い様子。実際『Yahoo!映画』のレビュー点数も5.0満点で平均3.0点と微妙な数値。「賛否が割れている」とも言えるが、それも何処か温度が低い感じはする。あまり熱心な絶賛も酷評も目にしない、面白かった側も「2回目は良いかな」「思ってたほどではなかったけど」みたいな余計な一言が態々ついている投稿が多い印象だ。
以下ネタバレ
- おバカな行動でマルチバースへ、しんちゃん映画?
そんな本作、本編は他の人も指摘しているように『映画クレヨンしんちゃん』という感じの内容。マルチバースへの接続方法は「おバカなことをやる」で、主人公は「自分が選択しなかった方、つまりは今の夫との駆け落ちを選ばなかった方の世界の輝かしい自分」を観て、今の自分の選択に後悔し、別の世界の自分に憧れる。そんな人生に絶望した彼女を救うのは、全ユニバースで彼女に対して優しさを見せる夫。彼女はこれまでの敵に「優しさ」を示し、父と娘と和解し、最後は家族と共に確定申告をする。こう振り返るとマルチバースへの接続方法は勿論、敵の倒し方やストーリー全体も、やはり『映画クレヨンしんちゃん』っぽい。みさえが家事に疲れているときに、おバカパワーで自分の選択しなかった方の可能性を見て、取り込まれそうになるも、野原一家のパワーで最終的に一致団結して敵を「優しさ」で倒すギャグ的展開、そして最後の家族で当たり前の日常に戻る感じ含めて、本当に『映画クレヨンしんちゃん』にありそう。というか似たような味わいの話はあった。
- 面白くはあるけれど…
そんなこんなで結構面白い映画ではあったのだが、何と言えない微妙感があったのも事実。おバカな行動でマルチバースへ移動もペーパーカットの件は緊張感とのギャップがあったし、敵が自分のケツ穴にブツを挿入しようとしてそれを主人公が必死に止めようとする描写は面白かったのだが、他は思いの外ハッチャケないし、ワザと滑って微妙な空気を狙っているのだとしたら、それはそれでイマイチ。マルチバースの世界もスクリーンサイズが変わったりするのは面白いが、それも全部四角形だし、上下左右は固定。時折石の世界や人形の世界など変わったユニバースも見せるが、何処か想像の範囲内。ソーセージバースもやたらと押していたが「そこまでか?」感は否めない。『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の移動パートを超えるインパクトのある映像もなかった印象を受ける。上映時間も139分と長めで、後半はカンフーアクションも少ないから、結構かったるい。「なんか、もう良いかな」と後半は「早く終わらないかな〜」くらいの気分になってた。最後の方は「なんか凄いことやってます、面白いでしょ?」的な映像をボッーと真顔で眺めてるだけになっている自分がいた。
- 最後に…
「本年度アカデミー賞大本命」みたいなコピーも無駄にハードル上げてるな、とも思った。多分、一部では評判の悪い『エブエブ』くらいの略称のノリが丁度いい作品。
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