春休み映画興行の振り返り。
- 『映画ドラえもん』、前作を大きく上回る
春休み恒例の国民的テレビアニメの劇場版シリーズ最新作『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』が昨年公開『のび太の宇宙小戦争2021』の26.9億円を大きく上回る大ヒットを記録。最終興行は40億円を超える見込みで、コロナ禍以降のドラえもん映画では最大のヒット。脚本は『リーガルハイ』『コンフィデンスマンJP』の古沢良太さんが執筆し、ゲスト声優としてKing & Princeの永瀬廉がパーフェクトロボットのソーニャ役を務めた。「個性」をテーマにした本作は他の作品とは少し毛色は違うが、評価は上々。また前作はロシアのウクライナ侵攻、本作はカルト宗教によるマインドコントロール、と脚本執筆時期を踏まえればおそらく偶然でしかないが、2年連続世相を反映したようなテーマの作品となった。来年はコロナ禍前の50億円突破ラインに戻したい。
- 『シン・仮面ライダー』の微妙な結果
庵野秀明監督の『シン・仮面ライダー』が最終興行25億円程度と『仮面ライダー』シリーズとしては『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』の19億円を超えて歴代最高のヒットも『シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース』としてはシリーズワーストの微妙な結果。試写会段階から公開後に未公開キャストの発表は予定されていたが、「庵野秀明セレクション傑作選」の放送を中止して本編冒頭の「クモオーグ戦」を丸々放送する番組に差し替える、Twitterの公式アカウントが著名人に留まらず一般アカウントの好意的な感想を無作為にリツイートし出すなど「公式側も思ったより入ってなくて焦っているのでは？」と思わせるような動きも多い。またNHKでドキュメンタリー番組が放送された際には近年のコンプラ意識の向上と昨年の映画業界の諸々の問題もあってか「庵野さんのやり方は今の時代パワハラ扱いでは？」との指摘も浮上。アクション監督だけでなく末端のスタッフへのしわ寄せなども話題となった。そうした経緯もあって本作で一番評価が上がったのが、作品に関与してない樋口真嗣監督という奇妙な現象も起きた。
- 『わたしの幸せな結婚』、大ヒット
『シン・仮面ライダー』と同日公開で週末動員数を上回ったことが一部で話題となった『わたしの幸せな結婚』が最終興行30億円超えも狙える大ヒット。原作は顎木あくみによるなろう小説。主演は昨年『silent』で高い評価を得たSnowManの目黒蓮、ヒロインはジャニーズファンから共演者として評判の高いという噂の今田美桜。監督は『アンナチュラル』『MIU404』『最愛』などの塚原あゆ子さんと本人もインタビューで述べているように、この手の作品としては意外な人選。日本に限らず映画業界は男社会と指摘されがちだが、女性監督による若い女性向けのファンタジー映画が大ヒットしたのは何よりという感じ。男性客からも結構好意的な評価多め。
- 『エブエブ』、アカデミー効果は…
本年度のアカデミー賞を無双した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は最終興行は10億円に届くかどうかの見通し。昨年の最優秀作品賞だった『Coda コーダ あいのうた』が6.9億円、一昨年の『ノマドランド』が4.3億円だったことを踏まえると「まー、こんなもんかな」という感じ。アメリカでは公開当初は知名度低めで「なんか凄い映画があるぞ！」と口コミが広かる形でヒットしたそうだが、日本では最初から「凄い映画」として情報が入ってきて、尚且つ公開前には「アカデミー賞大本命」と権威ある賞からも認められる物凄いハードルの上がり方をしていたため、逆にちょっと損する形に… 『映画クレヨンしんちゃん』や『ボボボーボ・ボーボボ』を連想する人が多かったのは日本ならではか。日本独自の略称『エブエブ』は謎に評判悪かったが、何だかんだで使われていた様子。
- 最後に…
スピルバーグ監督の自伝的映画『フェイブルマンズ』、大泉洋が吹替を務めたことも話題となったミュージカル映画『シング・フォー・ミー、ライフ』、DC映画最新作『シャザム！神々の怒り』は不発、広瀬すず・櫻井翔共演『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』は最終興行10億円に届かない見通しでイマイチという結果。興行とは別に『Winny』『ロストケア』『長ぐつをはいたネコと9つの命』『ダンジョンズ＆ドラゴンズ アウトローたちの誇り』辺りは高評価の印象。
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