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【ネタバレ感想】スタジオジブリ・宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』公開、吉野源三郎の原作小説及び漫画版のメッセージは…

漫画 君たちはどう生きるか

宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』が公開される。

 

高橋 現在、制作を進められている映画について少しお伺いしたいのですが、宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』は、吉野源三郎の原作とは違うそうですね。

鈴木 『君たちはどう生きるか』は1937年に出された本です。今回の映画は、主人公が亡くなったお母さんの本を整理していて、この本の表紙をめくったときにお母さんからの手紙を見つけ、そこから物語が始まります。

ジブリ鈴木敏夫さんが見据える、メディアの本質と未来像 | marie claire [マリ・クレール] - Page 2

少年の時の大事な本が何かって言われると、「君たちはどう生きるか」というのは、ぴかっと光っているんですよ。何か本というのは宿命的な出会いがあって、それはずーっと後まで輝いているものがありますよね。「君たちは~」を読んで、こんな風にとても生きられないと思ったけれど、感動したことも間違いないです。

宮崎駿さん「いまわの際に」見る景色 独占インタビュー:朝日新聞デジタル

本作のタイトルは吉野源三郎が1937年に出版した同名児童小説から取った映画で、原作の直接的な映像化ではない(物語そのものは冒険活劇ファンタジー)一方で同小説が主人公にとって大きな意味で関わってくるという。また同小説は宮崎駿監督にとって「少年時代の大事な本」だとインタビューで述べている。

 

 

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

そんな宮崎駿監督最新作の元ネタとなっている原作だが、2017年には羽賀翔一により漫画化されて累計発行部数208万部を超えるヒットを記録して、2018年の年間ベストセラー総合第1位を獲得した。今回自分は「小説読むのはかったるいな〜」ということで、漫画版を読んでみた。するとビックリ、本漫画は「主人公・コペル君の日常を描く漫画パート」と「彼の話を聞いたおじさんがコペル君に書いたノートという体裁の活字パート」が交互の構成になっておりメチャクチャ文字を読まされる。コペル君がノートを持っているところだけ文字がないのがメタ的に面白い。

 

本作は友達を裏切ったことで「僕なんて死んだ方がマシなんだ…」と熱が出るほど悩み学校を休む中学生の主人公・コペル君が隣に住んでるおじさんにその悩みを打ち明け、次の日おじさんから一冊のノートを貰うところから物語が始まる。そこから時は遡り、おじさんが隣に引っ越してきた日から冒頭の自己嫌悪シーンまでにどのような出来事があったかが描かれて、おじさんからの「変えられないことを考えるのをやめれば 余計な感情に足をとられない… いま自分がしなければならないことにまっすぐむかっていける 同じ間違いを二度繰り返しちゃいけないよ」と助言を貰い裏切った友人に謝罪の手紙を送付。しかし返信がないことから学校に行くことに抵抗を感じ続けるが、母による「思ったことを行動に移せなかった情けない過去の後悔」と「その経験があるからこそ『今度こそそれを生かさなきゃ』と背中を押してくれる」という生き方の話を聞き、更におじさんからの「いま君が大きな苦しみを感じてるのは『君が正しい道に向かおうとしているからなんだ』」という趣旨のことが書かれたノートを読み、登校を決意。裏切った友人に謝罪をして仲直りすることに成功する。

 

最後は「宇宙は地球を中心に回っていないように世の中は自分中心に回ってないし、誰か一人の人間を中心に回ってる訳でもない、世の中は誰かのためにっていう小さな意志がひとつひとつ繋がって、僕たちの生きる世界は動いている」との境地に達して、自分も世界に飛び込んでいける予感を抱く。そして作者からの「コペル君はこういう考えで生きていくようになりました、最後にみなさんにおたずねしたい、君たちはどう生きるか。」という読者へのありがたい問いかけで幕を閉じる。

 

 

雑にまとめると「人間誰しも自分を情けなく思うような出来事はあるけど、それに自己嫌悪を感じて深く後悔してるなら、それは自分が正しい道に行こうとしてるから、二度と同じ失敗はしないように糧にして生きろ、人間は自分で自分を決定する力をもっているからこそ誤ちを犯すが、そこから立ち直ることもできる」的な感じ。とてもありがたいメッセージだ。これが戦前に書かれていたことを踏まえると「大日本帝国さんはこの本を読んでなかったんだろうね… 日本さんは読んでるかな…」みたいなことをマイナンバーカード等の報道に触れながら思ったり思わなかったりする。とは言っても人間誰しも自分の失敗というものには向き合いたくないのも事実であり、後悔するだけマトモな人間に一歩近づいていると言えなくもない。自己嫌悪を陥っている時こそ、こうした失敗の普遍化と前向きなモノの捉え方は救いになるのだろう。一方で後悔だけして終わって反省を生かさないとダメ、みたいのは80年以上前の作品とはいえ現代にも十分多用するメッセージ。人間いつの時代も本質的な部分は変わらないということなのだろうか。

 

 

それはともかくとして、かつての宮崎駿少年はこの本を読んで「こんな風にはとても生きられない」と思ったそうだが、そんな少年が80歳を超えてから世に出す映画『君たちはどう生きるか』はどのような作品に仕上がっているのか。楽しみだ。

 

 

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