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【変化】バービーの付属品で職業の自由も家もないケン、男女平等は「バービーランド<現実社会」?映画『バービー』ネタバレ感想

ポスター/スチール写真/チラシ アクリルフォトスタンド入り パターン1 バービー 光沢プリント(写真に余白あり)

映画『バービー』を観た。

 

  • SNSでは「リトマス紙」「教養が試される」

本作は現時点で全米興行収入5億ドル、世界興行11億ドル超えの今年を代表するメガヒット映画。女性監督史上歴代最高興行という視点でも注目されている。一方で日本では週末動員ランキング初登場8位で最終興行10億円に届かない可能性が濃厚なコケ気味のスタート。敗因は「バーベンハイマー」から派生した原爆をネタにしたネットミームにアメリカの公式アカウントが好意的反応を示したことで炎上したから、というよりはおそらく日本人がそこまでバービー人形に思い入れがないからではないか、などと指摘されている。個人的にも「『トイ・ストーリー3』で出てきたな〜」くらいの認識しかない。その上本作はSNSで「この映画はリトマス紙」「観客の教養が試される」みたいな投稿もバズっており、観る前から心理的ハードルがガン上がりする。

 

 

  • 男女平等は「バービーランド<現実社会」?

そんな感想を語りにくい本作を観てきた訳だが、オープニングこそ「このノリで114分だったら相当キツイぞ…」と不安になったが、それは作り手側が観客をウンザリさせるために狙ったノリでその後はバービー人形系のネタなど「多分知ってたらもっと面白いんだろうな〜」と思いながらも基本的に楽しく観ることが出来た。また鑑賞前は「女が権力を持った楽園・バービーランドと男が権力を持ち女性が差別を受けている現実社会」を「バービーランド>現実社会」という構図で描く作品だと推測していたが、劇中では意外にも「バービーランド<現実社会」という構図で描かれる。というのも「バービーランド」は完全な「バービー(女)社会」でケン(男)は職業の選択肢もなく、「バービー&ケン」に代表されるように「バービー(女)の付属品」という扱い。要は昔の現実社会で当たり前だった「男社会」で「女は男の付属品」という価値観を反転させた社会。一方で現実社会は現代社会が舞台なので、劇中のマテル社のように女性を重んじるフリをしながら「男社会」を維持しようとする女性に対して差別的な空気は色濃く残ってる反面で「男女平等」も進んではいる。

 

 

  • 人間社会は少しずつ良くなってる?

「男女平等」に限らずこの手の差別問題は一つのターニングポイントを機に社会が劇的に変わるというよりは、少しずつ変わっていく印象がある。それは歴史科目のテスト勉強で「なんで選挙権について『25歳以上の女性』とか『鉱山労働者』とか数年ごとに刻みながら改革していくんだよ… 性別や職業で区切ってないで同じタイミングで平等に与えろよ!覚えるのが面倒なんだよ!」と赤シート片手に暗記してた日々を思い出す。ただあの頃はテストで点数を取るための丸暗記をしなければならない面倒な歴史的事実が、今思い返せばその都度戦いがあり、社会は少しずつだけど良くなってきた証なんだよな、とも思う。それは今年の「LGBT理解増進法」が可決される過程を見ていても感じた。そのためバービーランドの劇中時点での落とし所であるケン側の革命の結果「バービーのような上級職業はムリだけど、ケンにも職業の自由が与えられました」はその後に続いた「ケンもこれから力をつけてバービーランドも変化していくでしょう、人間の現実社会のように」的なナレーションにもあるように「人間の生きる現実社会はこれまで差別ばかりだったし、今も改善しなくちゃいけない差別は残ってるけど、少しずつ『変化』して良くなってる」的な希望的なメッセージなんじゃないか、と感じた。だからバービーランドのケンも現実社会の女性たちが職業の幅を広げていったように少しずつ変化していくのだろう。「劇中の結末」を説明的にボカしたのもこの手の問題に終わりはなく「変化し続ける」ことを肯定するニュアンスだと受け取った。

 

 

  • ケンが今後更なる権利を主張する可能性

最近は「行き過ぎたポリコレ」みたいな言葉をよく見かけるし、実際そういうケースもあるのだろうが、それでもバービーランドのケンのように「生まれた時からバービーの付属品で職業の自由も家もないことが決まっている」みたいな扱いを受け続けてきた人間が、ある日「社会は男が作ってる!裁判官も検事も政治家も医者も会社役員も工事現場の作業員もみんな男!お札に印刷されるような実績を残してきたのも男ばかり!」みたいな価値観に触れたら目覚めるのは当然。劇中のケンが「行き過ぎた」のは間違いないけど、それまでのバービーランドのバランスがおかしかったのも事実で「生まれた時から人生が決まってるなんておかしい!職業を自由に選びたい!」的な主張には正当性もある。そしていくら職業の自由が一部認められたとしても「上級職業はバービーのみ」というのは納得がいかないのが普通。いわゆる「ガラスの天井」だ。そのため前述した通り次の運動と改革が今後あるのだろう。それに対して「ケンが上級職業に就く権利を主張するのは行き過ぎてる」と感じる人はどれくらいいるのか。バービーランドは人間の生きる現実社会の性別を反転させている。

 

  • 最後に…

本作はバービー人形の変化の歴史を知った上で観るとメタ的な意味でもよりグッと来るのだろうが、自分がその知識を持ち合わせていなかったのが悔やまれる。最後にラストの「婦人科」は「バービーもあなたたちと同じ普通の女性になった」という演出らしい。

 

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