宮﨑駿監督『君たちはどう生きるか』が公開中だ。
- 大叔父は高畑勲、インコ大王は宮﨑駿
『SWITCH VOL.41 NO.9 ジブリをめぐる冒険』で鈴木敏夫プロデューサーは「高畑勲さんがこの大叔父のモデル」「あの塔はたぶんジブリ」「宮さんは『インコ大王は自分だ』」などと述べている。公開当初からSNSなどでは「あの塔はスタジオジブリがモデルなのではないか」と考察されていたが、鈴木敏夫プロデューサーも同様の見解を持っているようだ。一方でSNSでは「大叔父のモデルは宮﨑駿監督自身」との見解が圧倒的(中には高畑勲監督予想をしていた人もいたが…)であり、尚且つインコ大王のモデルの考察などは全くと言っていい程目にしなかった。そのため「宮﨑駿監督がインコ大王を自分だと言っている」ことは割と驚きを持って受け止められている印象を受ける。個人的にも「あの塔のモデルがジブリだとしたら、あの世界を維持するために慌てふためきながら積み木を積み上げたインコ大王のモデルは誰なのか…」などとモデルの正体を考えたりもしたものだが、宮﨑駿監督自身という考えには至っていなかった。
- 宮﨑駿「かぐやの分も『風立ちぬ』で稼いだかな」
ただ「大叔父は高畑勲でインコ大王は宮﨑駿」と知った時に思い出したエピソードがあった。もう10年近く前になるが、『爆笑問題の日曜サンデー』で鈴木敏夫プロデューサーが宮﨑駿監督の引退記者会見の直前に監督から「鈴木さん、これでかぐやの分も『風立ちぬ』で稼いだかな」と問われたという。ただその段階では『かぐや姫の物語』の分はおろか『風立ちぬ』の分すら回収できていなかったため「(『風立ちぬ』も)ペイライン達してないですよ」と伝えたところ、宮﨑駿監督は「えっ?えっ〜!?」と驚き、その後青ざめてかなり動揺していたという。そして宮﨑駿監督がプロデューサーも自分でやろうとする性格故にお金のことを汲み取ってくれることに対して高畑勲監督は「宮さんはね、損な性格だ、あんなこと考えなきゃいいのに」と述べていたことも語っていた。現に宮﨑駿監督は『君たちはどう生きるか』の「宣伝しない宣伝」についても鈴木敏夫プロデューサーの前では「鈴木さんの賭けに乗った!」と強気な姿勢を見せる一方で、裏では「本当に宣伝していないみたいなんだよ…」とかなり心配していたという。
- 高畑勲の赤字をカバーしてジブリを維持した宮﨑駿
宮﨑駿監督の代表作『天空の城ラピュタ』は高畑勲監督の『柳川堀割物語』のお金が足りなくなったことから、鈴木敏夫プロデューサーの提案で制作した経緯がある。また宮﨑駿監督の最大のヒット作『千と千尋の神隠し』は『ホーホケキョ となりの山田くん』の赤字を回収したとも言われている。そうした経緯もあってかネットでは「スタジオジブリは高畑勲が赤字を作って、それを回収するために宮﨑駿監督が映画を作って、その儲けで高畑勲監督がまた赤字を作って、それを再び回収するために宮﨑駿監督が…、を繰り返して会社を維持してる」なんて言説も半分ネタ的に指摘されていた。実際『紅の豚』製作時には「パクさんが『おもひでぽろぽろ』でガタガタにしたスタッフを立て直すために、俺がどれだけ苦労しているか」とキレたこともあったという。こうしたエピソードを踏まえると『君たちはどう生きるか』のラストで塔の下の世界が崩壊寸前にも関わらず悠々と眞人の宣言を聞いている大叔父の姿と崩壊を食い止めるために慌てて積み木を積み上げてオロオロしているインコ大王の姿の対比は両者の関係性と重なるようにも見える。
- 最後に…
とは言っても自分が知ってる宮﨑駿監督と高畑勲監督は基本メディアと鈴木敏夫プロデューサーを通してのモノなので、実際は違うのかもしれないが…
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