クリストファー・ノーラン監督の原爆の父を描く伝記映画『オッペンハイマー』はついに日本公開が未定のまま本国・アメリカでのソフトリリースが決まった。
- 未だに日本公開の有無すら未定
筆者も関係先に探りを入れているものの、いまだに不明。いろいろ聞くと、日本の配給会社の意向というより、(世界配給を手がける)ユニバーサル本社の判断にかかっているようだ。
結局『オッペンハイマー』は日本公開されるのか? 現在も未定。34年前、同じ題材の映画もやはり…(斉藤博昭) - エキスパート - Yahoo!ニュース
本作はアメリカでは今年の7月公開、この手のハリウッドのブロックバスター超大作なら多少の調整はあってもアメリカ公開からそう期間を開かずに公開するのがセオリーだ。少なくともこのレベルの作品ならアメリカで公開されたタイミングで日本公開日が未定、ましてや日本向けの公式予告編が公開されないケースなど滅多にない。しかし本作はアメリカでの公開が始まり、尚且つソフトリリース日が発表される段階になっても日本公開の有無すらハッキリしてない。一体どういうことなのか。映画ジャーナリストの斉藤博昭氏の取材によると本作の公開日はおろか公開の有無すら不明の理由は日本の配給会社の意向ではなくユニバーサル本社の判断の側面が強いのだという。
- 公開未定はユニバーサル側の判断か
「アメリカで配給を担当するユニバーサル・ピクチャーズから、いまだに宣伝素材すら届いていません。おそらく日本で公開するかどうかも未定だと考えられます」(ユニバーサル作品の国内配給を行う東宝東和の広報)
「日本では批判が殺到してしまう」...クリストファー・ノーラン超大作映画『オッペンハイマー』が「日本で上映できない」と噂される理由(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社
本作を配給する米ユニバーサル・ピクチャーズの作品を日本で多く手掛ける「東宝東和」は「今のところ米国の会社側から何も指示を受けていないので、公開するかどうか分からない」と歯切れが悪い
実際、ユニバーサル作品の日本配給を多く手がける東宝東和は今年8月の『週刊現代』の取材に「アメリカで配給を担当するユニバーサル・ピクチャーズから、いまだに宣伝素材すら届いていません」、今年9月の『東京新聞』の取材に「今のところ米国の会社側から何も指示を受けていないので、公開するかどうか分からない」と穿った見方をすれば「『オッペンハイマー』の公開が決まらないのは我々ではなくアメリカ側の判断」ということを強調するような返答をしている。そのため『オッペンハイマー』の公開が決まらないのはアメリカ側の判断の可能性が濃厚だろう。アメリカ公開直前のSNSでは「宣伝リスクも踏まえて日本の配給会社が本編の内容を確認できるまで公開の有無の決定を控えているのでは」みたいな予想もあったが、まさかアメリカ公開後の今年8月段階で日本の配給会社には本編はおろか宣伝素材すら届いていなかったというのは少し驚きだ。
- 日本公開スルーの不安
こうなると「日本はアメリカから腫れ物扱いされているのでは?」という気もしてきてしまう。仮にアメリカが日本のことを「腫れ物扱い」しているのなら、今年の夏に『バービー』公開タイミングで起きた「バーベンハイマー」騒動はユニバーサル側からすれば「出来る限り刺激しないように細心の注意を払って触れないようにしていたにも関わらず、想定外の角度から最悪の形で刺激を与えて暴発を招いてしまった」みたいな感じ。最悪日本公開スルーの判断がされてしまっていないか不安になる。本作は既に世界中でメガヒットして十分な利益を上げていることや日本での過去のクリストファー・ノーラン監督作品の興行収入がそこまで大きなモノでもないことがこの不安をより大きくさせる。
- 最後に…
映画「オッペンハイマー」広島の被害描かない疑問| 東洋経済
— ゴミ雑草 (@mjwr9620) 2023年8月8日
→ イタリア記者「彼は興行成績を気にして(中略)自己検閲を選んだ」
→ノーラン「残酷さを抑えるためではない」
→(作品は作り手の芸術的選択、)たとえ「A」を取ったとしても、全員を満足させることはできないhttps://t.co/1EL3TSGVqF
SNSで「賞レースにケチをつけられたくないのでは」みたいな投稿も見たが、本作を既に観た日本人のレビューを読むと「広島・長崎の被害について描かれていない」という批判をよく目にする。確かに賞レース前に日本公開してその点について大きな抗議が起き、それがアメリカでニュースとして取り上げられた結果、賞レースにネガティヴな影響を与える、みたいな展開もない訳ではない。既にユニバーサルは『バービー』を配給したワーナー・ブラザースと共に核兵器廃絶に取り組む「核政策を知りたい広島若者有権者の会(カクワカ広島)」のメンバーらによる「バーベンハイマー」騒動の再発防止の徹底などを求めるネットでの署名活動の対象にされていた。あくまでも推測の域は出ないが、こうしたことも日本公開に慎重になっている背景の一つにあるのかもしれない。
バービーと原爆の画像合成で騒動に…核兵器への日米の温度差を「バーベンハイマー」の流行から考える:東京新聞 TOKYO Web
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