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ドラマ『TRICK(トリック)』で仲間由紀恵演じる山田奈緒子が上田教授と共にインチキ霊能力者の超常現象をマジックで暴く理由

トリック新作スペシャル3

テレビドラマ『トリック』の再放送に便乗して、山田と上田の関係性についての雑感。

 

  • 山田奈緒子は「矛盾した存在」

『トリック』シリーズは仲間由紀恵演じる自称”超売れっ子(巨乳の)美人マジシャン“の山田奈緒子が物理学者の上田次郎と共に「お前のやったことは全てお見通しだ!」とインチキ霊能力者のトリックをマジックの原理を使って暴いていくミステリードラマ。何故奈緒子がマジックでインチキ霊能力者のトリックを暴いていくかというと、彼女の亡き父親は著名な天才マジシャンで霊能力を否定していたからだ。ただ奈緒子は霊能力者の血を持つ母親から強いシャーマンの力を受け継いでいるともされ、劇中では彼女が「本物の霊能力者」であることが匂わされるシーンが複数存在する。そのため奈緒子は霊能力者の存在を否定する一方で、霊能力者の血が流れている「矛盾した存在」ということになる。

 

 

  • 霊能力者の血を否定するための手品

この点について脚本&プロデューサーの蒔田光治氏は『トリック劇場版 ラストステージ』のパンフレットで以下のように語っている。

奈緒子は、自分の中に霊能力者の血が流れていてそれがいつか恐ろしいことを引き起こすんじゃないかという怯えを、無意識のうちに常に抱いています/彼女が手品をやっているのは、ある意味自分に流れている霊能力者の血を否定したいから/上田は臆病で、プライドだけが高いダメな男だけれども、「この世に超能力などというものは存在しない」ということを常に言ってくれる相手なんです。奈緒子にとっては、上田はどんなにヘマしようが絶対に正しくなければならない

【出典:『トリック劇場版 ラストステージ』パンフレット】

つまり山田が手品をやっている理由は「自分に流れている霊能力者の血を否定したいから」という心境がある。ここからは山田がインチキ霊能力者に対してマジックの原理を使ってトリックを暴いていくのも「霊能力の存在を認めたら、自分の中に流れている霊能力者の血も認めざるを得なくなるから、何としても否定しなくてはならない」みたいな側面も見えてくる。

 

 

  • 山田と上田の関係

また山田にとって上田は「この世に超能力などというものは存在しない」と常に言ってくれる、つまりは自分の中に流れる霊能力者の血を常に否定してくれる精神安定剤みたいな存在。山田が毎回上田からの霊能力絡みの話に巻き込まれに行くのも、霊能力を否定する上田が自称霊能力者に負けて霊能力を認めてしまったら困るので、上田が正しいことを証明するために自称霊能力者による超常現象は手品で「トリックだ」と結論付けないと自身を保てない、みたいな面もあるのかもしれない。まー、多少自分の拡大解釈の部分もあるのだろうが、蒔田氏の発言を読めば山田が上田に依存していることは間違いなく、上田も山田を頼っていることから共依存っぽくもあり、両者の関係からは歪みすら感じる。おそらくこの歪みが作品の根底にある暗さに繋がっており、ある種の層にとっての魅力となっているのだろう。こうなるとインチキ霊能力者に騙されてしまう人々同様に山田も「何を信じたいかの違いはあれど…」みたいな気持ちにさせられる。

 

 

  • 最後に…

シリーズ完結編『トリック劇場版 ラストステージ』のラストでは、これまで霊能力者の存在を否定してきた上田が山田とのある約束のために本物の超能力者の存在を求めてしまう。その逆転は切なくも、観客をも共犯関係にさせる見事なラストだった。

 

 

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