クリストファー・ノーラン監督が「原爆の父」を描いた伝記映画『オッペンハイマー』が日本でも公開されてオープニング3日間で3.79億円(先行上映含めると3.81億円)を記録して最終興行15億円以上も見込めるヒットスタート(25億円を見込めるとの話もあるが、そこまで伸びるかは正直微妙)を切ったという。
- ノーラン監督の過去作と同水準の見込み
『ダークナイト』 OP2日間3.31億円 最終16.0億円
『インセプション』 OP6日間7.8億円 最終35.0億円
『ダークナイト ライジング』 OP3日間4.55億円 最終19.7億円
『インターステラー』OP3日間2.79億円 最終12.5億円
『ダンケルク』 OP2日間3.23億円 最終16.4億円
『TENET テネット』 OP5日間7.5億円 最終27.3億円
※数字の引用サイトは後述
ノーラン監督の過去作品の日本でのオープニング興行は公開曜日や祝日の関係で集計日数にバラツキがあるケースが多いため単純比較しにくいが、『ダークナイト』以降は基本的に最終15億円程度が一つのラインになっているので、『オッペンハイマー』も過去作品に見劣りのしないスタートを切ったと言える。
- 東宝東和は上映見送りか
「アメリカで配給を担当するユニバーサル・ピクチャーズから、いまだに宣伝素材すら届いていません。おそらく日本で公開するかどうかも未定だと考えられます」(ユニバーサル作品の国内配給を行う東宝東和の広報)
「日本では批判が殺到してしまう」...クリストファー・ノーラン超大作映画『オッペンハイマー』が「日本で上映できない」と噂される理由(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社
本作を配給する米ユニバーサル・ピクチャーズの作品を日本で多く手掛ける「東宝東和」は「今のところ米国の会社側から何も指示を受けていないので、公開するかどうか分からない」と歯切れが悪い
本作は昨年夏にアメリカ他全世界で公開された作品だが、日本での公開は未定だった。この理由についてユニバーサル作品の日本配給を多く手がける東宝東和は『週刊現代』の取材に「アメリカで配給を担当するユニバーサル・ピクチャーズから、いまだに宣伝素材すら届いていません」、『東京新聞』の取材に「今のところ米国の会社側から何も指示を受けていないので、公開するかどうか分からない」などと回答しており、「公開が遅れているのは弊社ではなくアメリカサイドの判断」だと匂わせていた。しかし日本の配給を務めることになったのは東宝東和ではなくビターズ・エンドに決定。ここからは東宝東和が最終的に本作の配給を断念したことが伺える。
弊社ビターズ・エンドは、クリストファー・ノーラン監督作『オッペンハイマー』を2024年、日本公開いたします。本作が扱う題材が、私たち日本人にとって非常に重要かつ特別な意味を持つものであるため、さまざまな議論と検討の末、日本公開を決定いたしました。
クリストファー・ノーラン監督作「オッペンハイマー」24年に日本公開決定 配給はビターズ・エンド : 映画ニュース - 映画.com
また一部では「原爆の父の伝記映画であることと公開が遅れたことに因果関係はなく、純粋にヒットが見込めないなどのビジネス的な理由だったのでは」との指摘もあるが、公開が決まった際のビターズ・エンドによる「本作が扱う題材が、私たち日本人にとって非常に重要かつ特別な意味を持つものであるため、さまざまな議論と検討の末、日本公開を決定いたしました」などのコメントを踏まえると、「原爆の父の伝記映画」であることが「公開を遅らせてしまった」と見るのが妥当だろう。
- 買い付け価格は莫大?
映画評論家の松崎健夫氏は東宝東和や東和ピクチャーズが「やらない」とアナウンスした時点で莫大な買い付け価格などの視点から「日本でもう『オッペンハイマー』は見れないだろう」と考えていたという。実際、どこの配給会社も手を挙げずに最終的にサブスクで独占配信などの可能性もあったのではないかと思う。そのため、今回『オッペンハイマー』の配給を決断してくれたビターズ・エンドには心の底から感謝の気持ちがあるし、上映開始と同時に流れた「ビターズ・エンド」のロゴに対しても込み上げる気持ちがあった。また『オッペンハイマー』の日本での興行収入がどのような結果であれ「上映しない方が良かった」という結論はあり得ないと思うが、数字的にビターズ・エンドにとって「損をした」という結果になったら「嫌だな」と思っていたので、今回どの程度の数字で回収が見込めるのか不明だが、取り敢えず過去の日本のノーラン監督作品の最終興行と同水準の数字が見込めそうなのは部外者ながらホッと一安心だ。
- 最後に…
最後に東宝東和が本作の本編内容を確認した上で上映を見送ったのだとしたら本当に残念。勿論、テーマ的にどうしても他の作品より物議を醸すのは目に見えていたし、「バーベンハイマー騒動」など予想外の角度からの炎上もあり、ビビってしまった気持ちも分からなくもない。ただそうした批判は基本的に作品及びアメリカに向かっており、「配給する日本の会社」に「こんな映画を公開するなんて不謹慎だ!」などという指摘はほんのごく一部で、本作やこの問題に興味がある人にとっては「とにかく公開して欲しい」という声の方が多数派だったのではないかと思う。少なくとも『トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇』の出版に対する抗議のようなレベルで「公開するべきではない」という反発のムーブメントは起きてなかったように感じているし、実際に起きていないだろう。そのため繰り返しになるが東宝東和が上映を見送ったのは本当に残念だし、おそらく少なくない金額で配給権を購入して公開に漕ぎ着けてくれたビターズ・エンドには心の底から感謝だ。最後に「世界で唯一の被爆国である日本で公開しないのはあり得ない」みたいのとは別に、ハリウッドの大作映画が「公開されない」みたいのは今後も避けて欲しいと感じた。
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