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『君たちはどう生きるか/マイゴジ/鬼太郎/トットちゃん/あの花』、各映画に込められた「反戦」「厭戦」メッセージ

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ネタバレ注意

2022年末の『徹子の部屋』でゲストのタモリが「(来年は)新しい戦前になるんじゃないでしょうか」と発言した2023年末、映画館は夏からロングラン公開の宮﨑駿監督『君たちはどう生きるか』、山崎貴監督『ゴジラ−1.0』、水木しげる生誕100周年記念『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』、黒柳徹子の自伝的小説のアニメ映画化『窓ぎわのトットちゃん』、女子高生が戦時中にタイムスリップして特攻隊員に恋をする『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』と「戦中・戦前映画」が集中した。

山崎貴監督「世の中がまた戦争に向かっているようなにおいに対して、作り手が敏感に反応しているのか。/自浄作用というか、戦争に向かいそうになっている日本を引き戻す力がエンタメに働いているんじゃないかと思う。世の中の動きに対して反戦、厭戦(えんせん)、戦争はいやだという気持ちで、作り手がブレーキを踏ませようとしていると感じます。」

「ゴジラ-1.0」がヒット 山崎貴監督「戦争なくならない限りゴジラは死なない」<会いたい 聞きたい>:北海道新聞デジタル

これらの作品はそれぞれ興行的成功を収めており、日本アカデミー賞でも各部門にノミネートされている。『ゴジラ−1.0』の山崎貴監督は「戦中・戦後映画」が集中したことに対して「日本が再び戦争に向かいそうな匂いに対して作り手たちが敏感に反応して、反戦、厭戦、戦争は嫌だという気持ちでブレーキを踏ませようとしているのではないか」という趣旨の指摘をしている。

 

  • 破裂を招く「モノ溢れる世界」での膨張

東宝 【映画パンフレット】 君たちはどう生きるか KIMITACHI HA DOU IKIRUKA

それでは各作品に込められた作り手の「反戦」「厭戦」視点でのメッセージは何か。まず宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』は自身の疎開経験や戦闘機の部品作りをしていた父親と結核で甘えきれなかった母親との複雑な関係を詰め込んだ自伝的ファンタジー映画だ。ここに登場する大叔父が作り出した「塔の下の世界」は西洋風のファンタジー空間だが、そこでは大衆の戯画として描かれるインコマンたちとそれを率いるインコ大王の膨張によって世界の均衡は保てなくなり、崩壊する様子が描かれる。これは宮﨑駿監督がインタビューや『風立ちぬ』で描いた欧米列強に対抗しようと近代化を進め、大陸に進出し、戦闘機などを大量生産することで国民と軍部が膨張していき、敗戦を持って破裂した当時の日本と重なる。そして敗戦後は経済大国を目指すがバブルは崩壊し、原発も弾けた戦後日本の姿も重なってくる。ここからは宮﨑駿監督の思考には「モノに溢れる社会で人々の心は荒み、膨張し、最終的に破裂する」という考えが見て取れる。

 

※1 「ふくれあがり、均衡と制御を失った現実世界の似姿として描かれた世界へ、眞人はサギ男とともに、深く、深く分け入っていきます」/出典:『君たちはどう生きるか』パンフレット

 

 

  • 戦争を生き残ったモノたちのトラウマ

【映画パンフレット】 ゴジラ-1.0 GODZILLA -1.0 監督:山崎貴 出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介 マイナス ONE

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』オリジナル・サウンドトラック

山崎貴監督の『ゴジラ−1.0』は旧日本軍の「人命軽視」の無謀な作戦により多くの日本兵が犠牲を強いられ、戦争を生き残ったモノたちも「トラウマ」を抱え苦しみに悩まされている姿を映し出した。そこでは戦争を生き残ったことで「死に損ねた」とトラウマを抱えているモノたちが、日本を襲うゴジラを討伐する過程で「死ぬことではなく生きることに誇り」にしていき、最後は自分たちの手によって焼かれたゴジラを追悼することで自分たちの戦争にケリをつける男たちのロマンが描かれる。一方で現実の終戦後の日本は敗戦の憂さ晴らしをするかのように「経済大国」を目指し、生き残った元日本兵たちは企業戦士として再び搾取されていく。戦後が戦中の延長戦でしかないことを批判的に描いたのが『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』だった。ここでは戦争のトラウマから「弱いモノはいつも食い物にされるんだ」と戦中と同じ轍は踏みたくないと野心を燃やす元兵士・水木の姿が描きながら、忘却されがちな強者たちの身勝手な欲望に踏みつけられてきた弱者たちにスポットを当てる。

 

※2 「人命を軽視した戦中日本のアンチテーゼとして"生"に執着する物語にしよう、ということは強く意識していました」/出典:『ゴジラ−1.0』パンフレット

 

※3 「戦後の混乱期から立ち上がっていく中で、弱いものはどんどん削ぎ落とされていくっていう、ある種の恐ろしかった時代の雰囲気を反映」/出典:『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』大ヒット記念!古賀豪監督単独インタビュー!「鬼太郎_目玉おやじアイマスク」を抽選でプレゼント!

 

 

  • 罪なき子供と現代の女子高生視点

【映画パンフレット】映画 窓ぎわのトットちゃん 監督 八鍬新之介 出演 声の出演:大野りりあな、小栗旬

【チラシ付き、映画パンフレット】あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。監督 成田洋一 キャスト 福原遥 水上恒司 伊藤健太郎

『窓ぎわのトットちゃん』では戦争への直接的な責任がない子供たちの視点で、社会が徐々に戦争に向かっていく全体主義へと染まっていき、気付いたら自らもその空気に取り込まれて逃れられない怖さを「日の丸」の白と赤のデザインを巧みに使うことで表現されている。『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』では「好きな人と一緒にいたいという当たり前の願いが叶わない悲しみ」と「今ある平和な日常のありがたみ」を戦争末期にタイムスリップした女子高生の視点で訴えかける。戦争経験者が減り続け、戦争の記憶が受け継がれないことが問題視される中で、この記憶をこれから先の未来へと繋いでいかなければならないという想いが込められている。

 

※4 「シリアの内戦で僕がいちばん心を痛めていたのは、戦争行為に対して何の罪も責任もない子供たちが多く犠牲になっていたことなんです」/出典:自分と違う存在に対する思いやりと寛容さ 監督が映画『窓ぎわのトットちゃん』に込めた思い① | Febri

 

※5 「この映画が、見てくださった方にとって、愛する人を大事にしよう、今ある日常を大事にしようと思うきっかけになれていたら、原作者冥利に尽きます/戦争について、見る前とは違う角度で、違う深度で、考えるきっかけになれていたらと願います」/出典:映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』感想&考察|汐見夏衛

 

 

  • 最後に…

そんなこんなでまとめると「モノに溢れる社会で思考停止で膨張するな、自分たちの命は大切に、自分より弱いモノを己の欲望のために踏みつけるな、戦争は罪のない子供たちも巻き込まれる、今ある日本の平和を胸に戦争の記憶を繋いでいかなければ」になる。この中だと『ゴジラ−1.0』が一番「この映画は反戦なのか?」と疑問に持たれやすい作品だと思うが、「戦争すると命が無駄になるし、トラウマも抱えて苦しいから嫌だよね、それなら戦争なんてしない方がいいよね」という意味で「反戦」「厭戦」ではある。

 

 

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