スポンサーリンク

『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』は「1人の身勝手な行動によって起きた事件なのか」、そして「×が最後に笑った理由」

映画チラシ『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』5枚セット+おまけ最新映画チラシ3枚 

ネタバレ注意

ピクサー最新作『バズ・ライトイヤー』があまりにも「虚無」だったので、興味はあるけどドラマが未見故にスルー予定だった西谷弘監督最新作『バスカヴィル家の犬』を観た。同監督作品らしく「ラム肉」や「トマトジュースのような赤い飲み物」の映像は印象的かつ「蓮壁家には消毒液がない→実は…」「キャバクラには『君のパパになってあげる』とかいう見窄らしいおじさんが来たりする→実は…」みたいな伏線を積み上げてシッカリ回収していくスタイルも楽しかった。また主演のディーン・フジオカの佇まいやアクションシーンはカッコよく、岩ちゃんとのコンビも良かった。その上『るろうに剣心』『燃えよ剣』『未来への10カウント』に出演していた村上虹郎の相変わらずの胡散臭いニヤニヤも最高で、表情の演技にゾッとさせられた新木優子に対しての好感度も爆上がりの作品だった。

 

 

  • 事件の原因は母親1人の身勝手な行動故なのか

そんなこんなで役者陣の演技が良かった本作だが、SNSでの感想を読むと「1人の身勝手な行動によって…」みたいな感想が多くてちょっと驚いた。おそらく、この「1人」とは自らのうたた寝によって赤ちゃんを亡くし、その代わりに他人の赤ちゃんを誘拐したにも関わらず、弟が生まれると全く相手にしなくなった母親のことを指しているのだろう。確かにあの母親は酷い。うたた寝は仕方ないにしても、自分の赤ちゃんが危篤状態の時も赤ちゃんの心配ではなく、自分が夫に怒られるのではないか、という心配してるのとか本当に胸糞悪い。ただ彼女1人に事件の原因を押し付けるのは可哀想だ。あの母親は描写的に相当夫に怯えていた。娘が自分の子供ではないと分かった時の夫の行動(車椅子生活にさせる)を考えると、あの夫の行動はここに至るまでも相当なものだったと推測される。人間は追い込まれている時は判断力が鈍る。勿論、それを理由に彼女の誘拐等の犯行が許される訳ではないが、彼女1人が事件の根本原因とされるのはやや可哀想だ。また彼女が椎名桔平演じる使用人が自らに手をかけることを黙って受け入れた(頷いた)のは、やはり彼女自身も心の奥底では少なからず罪の意識があったことの表れだったのではないか、などと感じた。

 

 

  • 紅が最後に笑った理由

また本作はラストの地震による全滅エンドの賛否が割れているようだが、個人的には肯定派だ。新木優子演じる紅は赤ちゃんの頃に誘拐された挙句に蓮壁家では「血が繋がっていないから」という理由で愛されてこなかった人物だ。そして紅が本当の両親の家に行き、自分の部屋を見ているシーンで紅視点と思われる画面は「子供部屋の枕が3つ並んだベッド」に向かう。このベッドは真ん中の枕のみが小さいことから、紅の本当の両親が彼女を真ん中に家族3人で仲良く寝るためのベッドだったことが分かる。おそらく紅は愛されなかったが故に蓮壁家でニセの両親と共に寝た記憶はなく、ずっと一人で寂しい夜を過ごしてきたのだろう。そのため紅は最後の瞬間だけは自分のことを心の底から愛してくれている実の両親の間で寝られたことがとても嬉しく、だからこそ彼女は最後の瞬間を笑えたのだろう。もしかしたら彼女はこうなることが薄々分かっていて、寝たふりをしていたのではないかとすら思う。一見「救い」があるようにも見えるラストでもあるが、小泉孝太郎演じる学者先生(彼の冴えない演技も良かった)が彼女を救うために屋敷に向かっていたことを考えると「紅だって本当はもっと沢山の人から愛される人生があったはずだったのに…」とやり切れない気持ちにもなる。

 

 

  • 最後に…

本作のキャッチコピーは「その謎解きを、後悔する」「全員、被害者で加害者」。別に真実を解き明かしたところで誰も得しないし、誰かが明確な被害者である訳でも加害者である訳でもないというのは正に人生そのもの。主題歌もカッコ良くて、なんかいい映画を見た気分になった。興行的に苦戦をしているみたいな話も聞くが、シリーズ化して欲しい。

 

※ドラマは未見なので「佐々木蔵之介のシーンは、多分ドラマファンにとってはグッとくるシーンなんだろうな…」とか思いながら観た

 

  • 関連記事

mjwr9620.hatenablog.jp

mjwr9620.hatenablog.jp