庵野秀明総監修・樋口真嗣監督作品『シン・ウルトラマン』に対して「アレは庵野さんの作品なのか樋口さんの作品なのか」が話題になっているらしい。個人的には「2人の作品なんじゃないの?」という無難な見解を持っているが、宣伝で前に押し出されているのは庵野さんである一方で、舞台挨拶やインタビューで積極露出をしているのは樋口さんという印象を受ける。
- 「誰の作品?」とは…
一般論として映画でもドラマでも「誰の作品?」と問われれば大抵「監督の作品」と答える。ただこれはケースバイケースで「知名度」及び「この作品に対して一番色を出している人」が強く影響しているような気もする。例えば本作同様に大ヒット公開中の『トップガン マーヴェリック』の監督はジョセフ・コシンスキーだが、主演からプロデューサー、飛行トレーニングまで考案した「トム・クルーズの作品」と認識している人が圧倒的だと思う。また「監督の樋口さんより脚本の庵野さんが注目されるのは珍しい」という声も見たが、『鎌倉殿の13人』の三谷幸喜や『コンフィデンスマンJP』の古沢良太など監督(演出家)より脚本家のが目立ち「三谷幸喜作品」「古沢良太作品」と認識されるケースは珍しくない。何よりアニメ映画『えんとつ町のプペル』に対して「西野亮廣は監督ではないから西野さんの作品ではない」と認識する人は殆どいないだろう。そのため、「誰の作品?」となれば基本的に「監督の作品」だけどケースバイケースだよね、的な感じだと思う。
- 『シン・ウルトラマン』は…
『#シン・ウルトラマン』 #樋口真嗣 監督、 #庵野秀明 の脚本と「寸分違わない」公開迎え感謝#ウルトラマン @shin_ultraman https://t.co/ww2wi3oKKw
— シネマトゥデイ (@cinematoday) 2022年5月13日
それで今回の『シン・ウルトラマン』は庵野さんと樋口さんどちらの色が強い作品となっていたのか?まず個人的な初見の印象は「『シン・ゴジラ』『シン・エヴァ』を手掛けたスタイリッシュさがウリの庵野作品にしてはユルい作品。一方で『ローレライ』『日本沈没』『進撃の巨人』を手掛けた熱さがウリの樋口作品としてはヌルい作品」と結構「中途半端」な感じはした。ただ企画・脚本・編集等を担当しているだけあって、どちらかと言えばやや庵野さん寄りな気もしたが、『デザインワークス』の手記によると樋口さんの撮影した映像は庵野さんが求めるクオリティに達しておらず、編集段階でキスシーンをカットするなど不本意な部分も多い様子。その一方で樋口さんは樋口さんで「庵野からあがってきたホンと、皆さんが観ていただいた作品と、寸分違わないものを作ったつもりでいます」と舞台挨拶で語っており、他の樋口真嗣単独監督作品と毛色が違うのは明らか。おそらく『シン・ゴジラ』及び庵野さんにそれなりに寄せた演出をしたつもりなのではないか、と推測される。
- 最後に…
とは言っても複数のインタビュー等を確認する限り樋口さんの作品への関与が強いのもまた明らかな話で、トータル冒頭に書いた通り敢えて問われたとしても「2人の作品なんじゃないの?」という感じはする。
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